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パーティーもお開きとなり、
招待された客人が出口へと去っていく中、
シェリルはリアムと共に、その見送りをしていた。
本来ならば王室の者がそこまでする必要はないのだが、
なにせ大変な騒ぎと迷惑をかけてしまったこともあり、
シェリルは見送りがてら、謝罪することにしたのだ。
そんな中、あの隣国の客人たちを見つける。
「皆さん!」
「!」
「………あ、あの、ごめんなさい。
あなた達まで騒ぎに巻き込むことになってしまって。」
あの後、
"隣国の客人の大逆転"をリアムから聞いたシェリルは、
どうしてもあの客人達に謝りたかった。
この国に来て、楽しんで帰るはずだったパーティーの席で
とんでもない騒ぎに巻き込んでしまったのだから。
「そんなこと、気になさらなくて大丈夫です。」
「僕たちがもっと早く発言していたら、
きっとあんなふうに
あなたが言われることはなかったのですから。」
「それにとっても楽しかったですわ!
シェリル様といろんなお話ができて。」
「こちらにも遊びに来てくださいね!
その時は一緒に"ポヨタン"を食べましょう?」
「!
………えぇ、ぜひ!必ず遊びに行きますね!」
"ポヨタン"
それはフィオナが答えることができなかった、
ポヨっとしたお腹のタヌキがモチーフの
隣国で人気の甘いチョコレート菓子の名前だ。
シェリルも隣国から取り寄せた新聞で知ったのだが、
まさかこんな形で役に立つとは思わなかった。
隣国の客人たちに別れを告げ、
その後も見送りを続ける中で父の姿も見つけたのだが、
『……母さんに小言を言われるのは覚悟しておきなさい。』
それだけ言うと、父は疲れきった顔で去って行った。
きっと娘が起こした騒ぎの収拾と、
ワイマー家からの謝罪についての話し合いで、
父もいらぬ力を使ったのだろう。
屋敷に帰ったら改めて謝ろう、シェリルはそう思った。
「………もういいんじゃないかな。」
ある程度の客人を見送ると、リアムがそうつぶやく。
隣国の要人たちはすでに会場を後にしているようで、
残っているのは自国の者がほとんどだ。
「じゃあ、わたしもここで失礼しますね。
王太子様とアイリーン様には
また改めて謝罪に伺いますから。」
「………ねぇ、どこに行く気?」
「え?」
「今日は泊まって行くんだよね?」
「え?泊まる?」
「………聞いてないの?」
「………………なにも。」
王城に泊まる予定だなんて、そんなことは聞いていない。
てっきり屋敷に帰るものだと思っていたシェリルは
辺りを見回し、レンの姿を探す。
「………レンも帰ったと思うよ?」
「え?!そうなんですか?!」
「だってシェリルはここに泊まっていく予定だし、
公爵と一緒に帰ったんじゃないかなぁ。」
「……………………。」
………それならしょうがない。
シェリルは疲れと眠気に襲われ始めた体を早く休めたくて、
王城に泊まることを早々に決める。
自分一人ぐらい突然泊まることになっても、
ここなら困らないほど部屋もあるはずだ。
「………じゃあ、お言葉に甘えて。」
そう言ってリアムを見ると、
なぜか彼は目を細め、口元に怪しげな笑みを浮かべていた。




