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会場に戻った二人に最初に声をかけてきたのは
「お前たち!どこに行ってたんだ?!」
王太子であり、この国の次期国王となるバルドだった。
「すみません、兄さん。
シェリルがあの女のせいで錯乱状態になって
会場から逃げ出しちゃったものだから。」
「なっ?!」
「それはそうですよね。
あんなことを言われれば誰だって錯乱状態に………。」
「アイリーン様までなんで?!」
バルドの婚約者であり、次期王妃であるアイリーンが
憐れみの目でジッと見つめてくる。
………確かにフィオナには散々なことを言われたが、
錯乱したわけではなく自分の意思で出て行ったのだ。
でもそれも、言い出しにくい………
だってフィオナ様をけしかけたのは自分だし。
気まずさから視線を斜め上にずらしたシェリルに、
バルドが心配そうに声をかける。
「嫌な思いをしただろう?
しかもこんなパーティーが開かれている場所で。」
「い、いえ………大丈夫です。」
「先ほどワイマー家から
ファルツォーネに謝罪したいと申し入れがあった。
そなたの父上には伝えておいたが………。」
「あ、そういえば………。」
すっかり忘れていたが、
父もここにいるのだとシェリルは思い出す。
きっとこの騒ぎを聞いて心配………ではなく、
ため息をついて呆れているのではないだろうか。
「そういえば一つお聞きしたいのだけど………
同じ公爵家とはいえ、
ファルツォーネの方が格上ではないの?」
「え?
………さぁ、どうなんでしょうか。」
「確かそうなはずだ。
ファルツォーネは昔から王室と近い関係にあるからな。」
「だから、レンも俺のところにいるんだよ?」
「………そうなんですか。」
「だから不思議なんですの。
なぜ自分の家より格式の高い家の令嬢に、
あんなふうに言いがかりをつけられるのかしらって。」
「まぁ、あの方は昔から………。」
「それは姉さんのせいでもあるんですけどね。」
そう言って四人の会話に入ってきたのは、
少し疲れた顔をしたレンだった。
「な、なんでわたしのせいなワケ?」
「姉さんが知らないうちに、
あの人の恋心をズタズタにしてきたからだよ。」
「こっ、恋心?」
「今回だってそうじゃないか。
リアム殿下を慕っているあの人から、
サッサと殿下を攫ってしかも婚約者の座に収まった。」
「はぁ?」
「小さい頃からそうだったってことだよ。
あの人が好きになる人はみんな、姉さんを好きになる。」
「…………………。」
「だから姉さんの悪口や
有る事無い事まわりに触れ回って、
評判を落とそうと躍起になってたんだろ?」
「………‥知らなかった。」
「だろうね?姉さん、鈍感だから。
しかも相手がどんなに姉さんにアピールしても
まったく興味なくて無視するから、
余計にあの人の恨みを買ったんじゃない?」
「………それって、ただの八つ当たりじゃない?」
シェリルはハァとため息をつく。
今までフィオナが事あるごとにつっかかってきたのは
恋心をこじらせた八つ当たりだった、というわけだ。
「まぁ家同士も仲良くないんだけどね。
ワイマー家はなにかとうちに対抗してこようとするし。
リアム殿下の婚約者に姉さんが決まった時も、
あーでもないこーでもないって言ってたらしいから。」
「そうだったの?!」
「でも母さんが黙らせた。」
「…………あぁ、そう。」
母様にも怒られるだろうな、今回のことで。
そのことを考えると憂鬱だが、
婚約破棄は無かったことになったのだから許してほしい。
………今日の作戦、成功したのか失敗したのか。
シェリルは割と本気で、そのことを考えたのだった。




