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自分のとった行動に驚きつつもシェリルは、
しがみついたリアムの背中から離れられずにいた。
どうして引き留めたのか、自分でもよくわからない。
でもこの人が言った言葉が、
愛しているというその感情は、血のせいじゃないと
ハッキリそう言った声が耳から離れないのだ。
………もし、もし本当に、
純粋に自分のことを愛してくれるのならば、
わたしが逃げずに、
この人の気持ちを受けとめることができるのなら。
「………シェリル?」
「っ………や、やだ。
このままリアム様と離れるのはいやです!」
ぎゅうっとリアムの背中にしがみつき、
顔をうずめたままシェリルは小さな声でつぶやく。
「………ほんとうに、
………血のせいなんかじゃない?」
「…………………。」
「わ、わたしが、
リアム様がわたしを想ってくれるように、
同じようにあなたを想えるようになったら………
言い伝えのように、鎖で繋いだりしない?」
「…………………。」
何も答えないリアムに、シェリルは不安になる。
…………それもそうかもしれない。
だってわたしは、この人の気持ちを信じなかったのだから。
ただその血に惑わされているだけで、
自分のことなど本当は愛していないのだろうと、
疑いの言葉をかけてしまったのだから。
なのに離れたくないなんて、都合がよすぎる。
いざ離れることになったら、自分の方が縋りつくなんて。
少しでもこの人の気持ちを信じて、逃げないでいれば。
リアムの背中に回した腕をそっと離し、
シェリルもベッドから立ち上がる。
「リアム様!
今の言葉は忘れてくださって結構です。
それより、早く会場に戻りましょう?
あんな騒ぎを起こしちゃった後だし、
きっとフィオナ様が大暴れして…………。」
「…………いよ。」
「え?」
フィオナが大暴れしているかも、
そう言いながら扉に向かって歩き出したシェリルに、
リアムの小さな声が聞こえた。
「………繋いだりしないよ?
シェリルが俺を、俺だけを愛してくれるなら。」
「!」
「ずっと俺だけを見て、俺だけを愛してくれるなら、
本物の鎖で繋いだりなんかしない。
………でも、ちゃんと言って?
言葉にして、俺のこと愛してるって伝えて?」
「っ、あ、あの………。」
「シェリルがまだそこまでじゃないことも、
俺の方が気持ちが重すぎることも、
ちゃんとわかってるよ?
………だから待ってあげる。
シェリルが俺を、愛してるって言ってくれるまで。」
「…………!」
こちらを見てへにゃりと笑うリアムに、
なぜかシェリルはドキリとしてしまう。
………いつになるかなんてわからない。
わたしの気持ちがこの人の気持ちに追いつくまで、
どれぐらいの時間がかかるかわからないのに。
でも、追いつけなくても、
きっと自分の気持ちを伝えられる日がくると、
なぜかシェリルは予感していた。
「………おいで、シェリル。」
いつもなら逃げ出すその言葉も、
これからは違って聞こえるかもしれない。
自分だけに、自分だけのために、
この人はわたしに手を差し伸べてくれるのだから。
急にいろいろな感情が変化して、
なぜかシェリルは顔を赤くしてしまう。
………でも今は、
「………………っ。」
とにかくリアムの腕の中に、飛び込むことにした。




