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その鎖、まぼろしです。  作者: クロネコ
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「リ、リアム様?

 どうしたんですか?疲れたんですか?

 お休みになりたいのでしたら、

 こちらでお休みになられたらどうですか?

 あ、ご心配なく。

 わたしは今すぐここから出て………!!」

「この状況で何言ってるの?シェリル。」


リアムに担がれ、連れて来られた彼の寝室のベッドの上に

ポーンと投げ出されたシェリルは今、

覆い被さるように自分の上にいるリアムに

手首を掴まれて拘束されているところだった。


「リ、リアム様こそ………

 こんなところで遊んでいないで、

 フィオナ様のところに戻った方がいいのでは?」

「大丈夫。

 ちょっとシェリルで"遊んだら"戻るよ。」

「い、いやです。遊ばないです。

 わたしはもうリアム様の婚約者じゃ………!」

「婚約者だよ、まだ。

 あのあと隣国の客人が大逆転を決めてくれて、

 無事にシェリルが婚約者のままだよ?」

「な、なんですか?大逆転って。」

「それは後でわかるよ。

 ………それよりシェリル。

 どうして婚約破棄なんてしようとするの?」

「!」

「逃げても無駄だって、どうしたらわかる?

 ………やっぱり本当に繋いでおかないと、

 シェリルも言い伝えの女みたいにわからないのかなぁ。」

「?!」


そう言ってリアムは

シェリルがしていた手袋をスルスルと外す。


「このアザの上から、本当の鎖で繋いじゃおっか?

 手だけじゃなくて、首にも足にもつける?

 そうしたらシェリル、絶対逃げられないよね。」

「ひっ、や、やだ………!!」

「だってシェリル、すぐ逃げようとするから。

 俺がこんなに愛してあげるって言ってるのに、

 どうして素直に受けとらないの?」

「だ、だって………

 リアム様だって、本当は違うでしょ?

 わたしのことなんか好きじゃないし、

 あ、愛してもいないでしょっ?

 ただあなたの中の、その、変な血のせいで、

 そう思い込んでるだけなんです!」


しどろもどろになりながら、

シェリルは必死にリアムを説得する。

あなたは受け継いだその血のせいで、

わたしをそばに"置いておかないといけない"と

そう思い込んでいるだけなのだと。


「だ、だから!

 本当に好きで、愛する人が現れたら、

 きっとわたしのことなんか気にならなくなります!

 言い伝えのように縛りつけなくても、

 あなたのそばにいてくれる人がきっと………!」

「それがキミだって言ってるんだけど。」

「!!」

「愛してるから離したくないんだよ?

 そばにいて欲しいから縛りつけるんだよ?

 ………言い伝えの血を受け継いでるからって、

 この感情まで血のせいにしてほしくないかなぁ。」


悲しそうな目をしてそう言ったリアムを、

シェリルはまだ信じられずにいた。

ならば自分の中にふと湧き上がるあの恐怖心も、

言い伝えの女のものではなく、自分の感情なのだろうか?

この人に愛されて、自分もこの人を愛したら、

あの恐怖心は消え去ってくれるのだろうか。


「でもこの感情を、

 血のせいなんかじゃないって言っても

 シェリルは信じてくれないんだよね?

 俺がどんなに愛してるって言っても、

 シェリルは信じてくれないんだよね?」

「…………っ。」

「………それなら、仕方ないか。」


そう言ってリアムは、

掴んでいたシェリルの手首を離し、体を起こした。


「…………リアム、さま?」

「いいよ、自由にしてあげる。

 婚約も破棄するし、キミにはもう近づかない。

 この力も、使ったりしないよ。」

「…………………。」


ギシッと音を立て、リアムがベッドから立ち上がる。


………これで、自由になれる。

婚約者という立場からただの公爵令嬢に戻って、

鎖につながれる心配も、

監禁されるかもしれない恐怖も、感じなくてすむ。

………………なのにどうして。


「…………っ、ぃ、やだ!!」


 

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