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自分のいないところで
自分が褒め称えられているとも知らず、
シェリルは早足で廊下を歩いていた。
とにかくこのドレスをなんとかしなくては。
ヒールも高くて歩きにくいし、
本当はこの廊下もすごい速さで走り抜けたいのに!!
フィオナと話していた時のご令嬢の仮面を剥がし、
シェリルは全力で走りたい衝動に駆られる。
元々ジッとしているような性格ではない、
だからこそ、リアムの鎖に繋がれるワケにはいかないのだ。
「!」
目的の場所が視界にうつり、シェリルは安堵に包まれる。
あの角を曲がればすぐ階段があって、
それを降りれば着替え室はすぐのはず………!
早足を駆け足にかえ、角を曲がったシェリルは
「きゃっ?!」
「わっ?!」
反対側から歩いてきた何者かに勢いよくぶつかり、
そのまま相手の胸元に飛び込んでしまう。
勢いがあったせいか二人は、廊下に倒れ込んでしまった。
「ごっ、ごめんなさい!!急いでてっ。」
相手にのしかかるような格好になり、
シェリルは慌てて謝る。
まさか向こう側から人が歩いてきているとは
まったく予想していなかった。
「………………っ。」
「!!
大丈夫?!どこかケガとか………!」
片手を床につけ、
尻もちをついたままの男性の上に、
シェリルは乗っかっているような状態だ。
もしかしたらどこかケガでもしたのだろうかと、
シェリルは男性に問いかける。
「ごめんなさい!前をよく見てなくて………
どこか痛む?ケガとかしたりは………!」
「ん?あ、大丈夫………ただ。」
「ただ?!」
「………メガネが飛んでっちゃって、
あなたの顔もよく見えないんだけど………。」
グイッと顔を近づけられ、至近距離で目が合う。
ここまで近づかないと見えないなんて、
この人よっぽど視力が悪いんだな………
そんなことを考えていたシェリルだったが、
ふとその近さに気づき、思わず顔を逸らした。
「メ、メガネ?
………ぶつかった時に飛んでっちゃったのかな。」
辺りをキョロキョロと見回してみると、
少し離れた場所にメガネがあることに気づく。
「あ!きっとアレです!
拾ってきますから待っ………。」
待ってて、と
立ちあがろうとしたシェリルだったが、
「ぉわっ?!」
立ちあがろうとした足でスカートの裾を踏んでしまい、
目の前にいる男性に自ら飛び込んでしまう。
自分に抱きついてきたシェリルに驚きはしつつも、
男性は再び、しっかりと抱きとめてくれた。
「キミこそ大丈夫?」
「は、ははは………なんだかすみません。」
やっぱりドレスなんて着るもんじゃないと、
恥ずかしさを隠すようにして男性に謝る。
とにかくちゃんと立ち上がって、
この人にメガネを渡して、
ケガがないか確認して、
ここから早く立ち去らねばと
やるべきことを瞬時に頭で整理していたシェリルの背中に
「!!!」
ゾクゾクっと、嫌な感じがして
シェリルは思わず後ろを振り返る。
………この感覚。…………逃げなきゃ。
「………あの、どうかしたの?」
男性の問いかけには答えず、シェリルは急いで立ち上がる。
ただでさえ"彼"は今、不機嫌度が最高潮のはず。
そんな中で捕まってしまったら、
何をされるかわかったものではない。
それにそろそろ、あの力を使われてもおかしくないのだ。
「ほ、ほんとうにごめんなさい!!
わたしあの、ちょっと急いでて………
あ、でもメガネだけは拾ってくるから!」
今度は転ばないように、
急ぎつつ気をつけながらメガネを拾いに行く。
その間に男性も立ち上がり
シェリルが拾ってきたメガネを受け取る。
「メガネ、ありがとう。」
「いえいえ。
こっちこそ本当にごめんなさい!………それじゃあ。」
ぶつかってしまった男性から離れ
歩き出そうとしたシェリルは、
「なっ?!」
腕を後ろに引っ張られる感覚とともに、
今度は後ろにひっくり返りそうになったのだった。




