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その鎖、まぼろしです。  作者: クロネコ
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さぁ、頑張って!

シェリルはフィオナに向かって心の中でエールを送る。

普段ならシェリルを鬼の形相で睨んでくるフィオナの顔も、

想いを寄せるリアムの前ではただの恋する乙女の顔だ。

………少し気味が悪い感じがするけど

恋は盲目って言うし、フィオナ様も例外じゃないのね。

頬を赤くし、うっとりした目でリアムを見つめるフィオナを

恋って偉大だな……そんなふうに思いながら見つめる。


「リアム殿下、お久しぶりですわ!」

「………あぁ、ワイマー家の。」


恥ずかしそうに声をかけたフィオナに、

リアムが薄っぺらい笑顔を浮かべて答える。

この二人どうやら顔見知りではあるようで

フィオナがワイマー公爵家の人間だと

リアムも知っているらしい。

………きっと事あるごとに、

リアムが出席するパーティーに参加していたんだろう、

公爵家と父親の力を使って。

その間にリアムとも、顔見知りなったのかもしれない。


「シェリルとも知り合いだったんですね。」

「えっ?……え、えぇ!

 同じ公爵家の者として何度かパーティーで……。」

「ワイマー家のご令嬢とは

 何度かパーティーで話をさせてもらったことがあるけど、

 ………シェリルは見かけたことないんだよね。」


そう言ってリアムがこちらを見る。

………そりゃそうでしょ。

わたしはアナタの熱烈な信者じゃないですから。

あなたがいるパーティーに出席しても、

近くに行って話しかけようなんて

これっぽっちも考えなかったですから。


「仕方ありませんわ、リアム殿下。

 シェリル様は社交の場があまりお好きではなくて、

 出席されても隅の方で小さくなってますもの。」


口元に手をあてて、フィオナがクスクス笑う。

………べつに小さくなっていたワケではない。

何かと言いがかりをつけてくるフィオナや、

下心丸見えで近づいてくる男たちの相手をすることに

ウンザリしていただけだ。


「ですから私、驚きましたのよ?

 リアム殿下とまったく接点のないシェリル様が、

 どうして婚約者になれたのかしらって。」

「…………………。」

「ファルツォーネの力を使って

 その立場を手に入れたんでしょう?シェリル様。

 リアム殿下のお気持ちも考えず…………

 おとなしい方だと思っていたのに、違ったのね?」


おとなしい?あなたの相手は疲れるから黙るだけです。

そう言いたかったが、シェリルはグッと我慢する。

ここで自分が口を開けば、計画が水の泡だ。

フィオナにはペラペラと

自分の"不甲斐なさ"を語ってもらわねば。


「社交の場でうまく立ち回れない、

 公爵家の力を使わないと婚約者になれないような方が

 リアム様の婚約者に相応しいとは思いませんわ。」


………言った、よく言った!フィオナ様!

いつの間にかリアムに繋がれていた手に自然と力が入る。

そんなシェリルの様子を、隣に立つリアムがチラリと見た。


「………リアム様。

 わたしもフィオナ様のおっしゃるとおりだと思います。

 リアム様の婚約者になるだなんて、

 わたしには不相応なお話だったんです。

 ………アナタの隣には、

 フィオナ様のような方がお似合いですわ。」


シェリルがそう言った瞬間、

繋がれた手にギリっと力が込められる。

その強さと痛みに驚き、シェリルは顔を歪ませる。


「っ………リアム様?」

「誰が言ったの?不相応だって。」

「!」

「俺にお似合いなのは、こちらのご令嬢だって?」


シェリルを見下ろしながら、リアムが冷たく言う。

彼が不機嫌になったのはすぐにわかったが、

ここで止めるわけにはいかないのだと

シェリルは気持ちを奮い立たせる。


「………えぇ、そうですわリアム様。

 あなたの隣に立つのは、

 こちらにいらっしゃるフィオナ様の方が相応しいのです。

 先ほどわたしもフィオナ様にそう言われて

 改めて実感しました。

 ……あなたの隣にいてはいけないのだと。」

「……………………。」

「ここにいらっしゃる皆様も

 聞いていらっしゃいましたよね?

 そして誰一人、否定なさいませんでした。

 わたしがあなたの婚約者に相応しくないということを。」

「!!!!」


周りにいた客人たちが驚き、

ジワジワと顔を青ざめさせていく。

………あなた達にも証人になってもらうから。

フィオナが自分の方がリアムにふさわしいと言った証人に。

誰も言わなかったよね?"そんなことはない"と。

シェリルがリアムに相応しい婚約者だと、

誰一人言わなかったのだから。


「皆様もわたしと同じ考えなのです。

 あなたの婚約者に相応しいのは

 そちらにいらっしゃるフィオナ様のような方だと。

 公爵家の娘として生まれたことしか利点のないわたしが、

 聡明で美しく、

 何よりあなたを心の底から慕うフィオナ様より

 優れている点など何一つないのですから。」


悲しみに満ちた表情で目を伏せたシェリルは、

心の中でほくそ笑む。………うまくいった、と。




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