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「ではリアム様のところへ………。」
そう言って歩き出そうとしたシェリルの首元を、
フィオナがじっと見つめ、問いかけてくる。
「ねぇ、そのネックレス。」
「!」
「もしかして、リアム殿下からの贈り物なの?」
「………そうですが?」
「ならばそれも外しなさい?
あなたはリアム殿下の婚約者ではなくなるのだから。」
「…………………。」
ネックレスに食いついてきたフィオナに、
あいかわらず目敏い、シェリルはそう思った。
リアムがプレゼントを贈ると言ってくれた時、
きっと彼のことだから身につける物を贈ってくれるだろうと
シェリルは予想していた。
そしてそれをつけて出席すれば、
フィオナが目敏く見つけてくれることも。
「………ではこちらは、
リアム様にお返しすることに………。」
「今すぐ外して。」
「!」
「そして私に渡しなさい?
本当なら私が貰うはずだったものよ。」
この思い込みのすごさ、
さすがはワガママに育てられたお嬢様だと
シェリルは感心してしまう。
可愛いぬいぐるみも、きれいなドレスも、
すべて自分の為にあるとでも言わんばかりに
彼女は昔からなんでも自分の物になると勘違いしていた。
親に甘やかされ、取り巻きにチヤホヤされ、
公爵家の令嬢という立場を利用して、
彼女は何でも自分の思い通りになると信じているのだ。
きっと物ではなく人であるリアムすらもその対象だ。
シェリルは小さなため息をついて、
自分の首元にあるネックレスを外そうと手を伸ばす。
………ごめんなさい、リアム様。
きっとこのネックレス、高かったですよね。
無駄なお金を使わせてしまってすみません。
心の中でリアムに謝罪しながら
ネックレスを外そうとしたシェリルの手を、
何者かが止めた。
「!」
「………なんで外そうとしてるの?シェリル。」
後ろから聞こえてきたその声は、
シェリルを怯えさせ、フィオナを喜ばせた。
「リアム殿下!!」
嬉しそうに声をあげたフィオナを
リアムは一瞥するだけで気にとめる様子はない。
それよりもネックレスを外そうとしたシェリルに
どうして?と目で訴えてくる。
「これ、気に入らなかった?
ほかに何か欲しいものがあったの?」
「ち、違います………
気に入らないなんてことは………。」
「ならどうして?
シェリルに似合うと思って贈ったのに。」
「…………それは。」
目の前にいるご令嬢に聞いてもらえますか?と、
シェリルは視線をフィオナに向ける。
だが目線の先にいる彼女は薄らと頬を赤く染め、
リアムを見つめたまま黙っている。
「………リアム様。
やっぱりわたしはあなたに相応しくないようです。」
結局自分が切り出すのか………そう思いながら、
シェリルはリアムに向かって告げた。
さぁフィオナ様!出番ですよ!と彼女を見れば、
どうやらやっと現実世界に戻ってきたようで
「リ、リアム殿下?」
柄にもなく恥ずかしそうな顔をしながら、
フィオナはリアムに話しかけた。




