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「………ってなにそれ。ただのホラーですよね。」
「………まぁそうね?
………‥すごい執着心よね。」
腕に鎖のようなアザを見つけた数時間後。
ファルツォーネ公爵家の令嬢であるシェリルは、
突如自分の腕に浮かび上がったアザのことを、
幼い頃からの友人であるジネットに相談していた。
「そんな言い伝えがあるのも知らなかったんだけど。」
「恋愛小説にはよく使われてるわよ?
執着心の強い男性が、
なんとしてでも好きな女性を手に入れるって話。」
「で、でも!ただの言い伝えだよね?
小説だって作り話なんだし、
このアザだってただの………突然変異?」
「なにがどうなった結果の突然変異なのよ?
………でもまぁ言い伝えが本当なら、
今ごろアンタを血眼で探して
鎖に繋ごうと画策してる男がいるってことよね。」
「だぁぁぁぁ!!
そういう怖いこと言わないでよ!!」
ただの平凡な公爵令嬢として、
ごくごく普通の人生を送ってきたシェリルは今年17歳。
ミルクティー色の髪に翡翠色の瞳を持ち、
どちらかと言えば童顔の彼女は、
恋愛話に話を咲かせたり
婚約者との仲睦まじい話をする友人達と違い、
なぜかその手の類と縁がない。
そんな恋愛経験ゼロと言っても過言ではないシェリルに、
友人が教えてくれた言い伝えは
ただただホラーにしか聞こえなかった。
「でもそれ一度、医者に診てもらったらどう?
本当に病気かもしれないし……
ちゃんと家族にも相談するのよ?」
「………うん。」
短い返事をして、再びシェリルは腕を見る。
手首から肘にかけて鎖のようなアザが浮かび上がり、
自分の腕なのになぜか気持ち悪さを感じてしまう。
とにかく両親にも相談してみよう。
シェリルはそう思いながら、
その後は別の話でジネットと盛り上がったのだった。




