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その言い伝えは、ずっと昔からある古い話。
とある高貴な男に、
どうしてもそばにおいて、愛でたい女がいた。
可愛がり、甘やかし、誰にも触れさせず、
自分だけが女のそばにいられるようにしたい。
日に日にその想いは強くなり、
とうとう男は、その愛しい女を攫ってきてしまう。
だがその愛しい女は、
男と同じ気持ちを持ってはいなかった。
愛などいらない。元の場所に帰してくれと、
そう言って女はただ泣き続けた。
それでも男は女を離さなかった。
あろうことか鎖で繋ぎ、自由さえも奪った。
ずっと一緒だよ。
僕には君しかいないんだ。
生まれ変わってもまた、鎖で繋いであげる。
その言葉どおり、
男は生まれ変わってもまた、愛しい女を探す。
流れる月日の中でいつしか、鎖はアザに変わり、
男が探し求める女の腕に浮かび上がるようになった。
………それが、愛しい女の証だとでもいうように。
決して消えることのないその歪んだ愛は、
今もこの地のどこかで
愛しい女の腕に浮かび上がっていることだろう。




