26
「では、そちらがリアム殿下の?」
「………シェリル・ファルツォーネと申します。」
「よかったですなぁ、殿下!
このような可愛らしいご令嬢を婚約者に迎えられて。」
「ありがとうございます。
今後はシェリル共々よろしくお願いします。」
ニッコリと笑ってそう答えるリアムの横で、
シェリルも控えめな笑みを客人に向けた。
………これで何人目?挨拶をするのは。
パーティーが開始されてからというもの、
シェリルはリアムの横に立ち、ずっと挨拶をし続けている。
さすがは国の王子なだけあって、
挨拶しなければならない人数もハンパなく多い。
「今ので大方、主要な人間への挨拶は終わりだよ。」
「………それはよかったです。」
ようやくリアムからそう告げられ、
特に問題なく挨拶が終わったことに
シェリルはふぅ、と安堵の息を漏らす。
こんなに自分の名前を言い続けることなんて
この先一生無いとおもう。いや、あっても困る。
「向こうで少し休む?」
「そうしたいところですけど、
父にまだ会えていないので…………。」
そう言ってあたりをキョロキョロと見回していると、
隣に立っていたリアムが声をかけられる。
どうやら隣国の客人のようで、
外交間のことでリアムに確認したいことがあるらしい。
………今がチャンス!!とシェリルは思い、
「父は一人で探せますから、
リアム様はどうぞそちらの方のお相手を。」
そうリアムに声をかけ、
シェリルは一人、会場の人混みに紛れることにした。
もちろん父を探しているのも本当のことだが、
それよりもシェリルには、人混みの中に入る必要があった。
…………ある目的のために。
「それでは…………。」
「………シェリル。」
人混みに向かって一歩踏み出そうとした時、
リアムに手首を掴まれ、そばに引き寄せられる。
「な、なにか………。」
「わかってるよね?………悪さしちゃダメだよ?」
「!!」
耳元でそう囁かれ、シェリルは体を強張らせる。
リアムに話しかけた客人も、
少し気まずそうな表情でこちらを見つめている。
「だ、大丈夫です………そんなことしませんから。」
掴まれていた手首が離され、
シェリルは足早にその場を去る。
………早く、どちらか一つでも実行に移さないと。
早る気持ちを胸に、シェリルは人混みの中へと進んだ。




