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迎えの者に案内され二階へと続く階段を上がり、
大きな扉が見えた瞬間、シェリルはため息をついた。
自分が考えた隣国への脱出計画の為には、
今日のパーティーでなんとしても繋がりを作らなければ。
そのためには作り笑いをし、相手を褒め、
その懐に飛び込まなければならない。
そう考えるだけで疲れてしまい、足取りが重くなる。
あの扉の先に、パーティーが行われる広場がある。
………今さら逃げ出すわけにもいかない。
自分の計画の為にも、このチャンスを活かさねば。
そう決意して、シェリルは扉の前へと近づく。
「お待たせしました。」
すでにその場にいたリアムに声をかけ、隣に立つ。
いつもよりヒールの高い靴を履いていても、
隣にいるリアムの背には届かない。
「よく似合ってるよ、そのドレス。」
「ありがとうございます。
リアム様も素敵ですよ、きっとご令嬢たちが喜びます。」
隣に立つリアムは、
黒を基調とした細身のスーツにベストを合わせ、
胸元には装飾が施されたタイやブローチをつけている。
どちらかと言えばミステリアスな雰囲気を感じるその正装に
今日もご令嬢たちがうっとりした笑みを浮かべるのだろうと
シェリルは想像し、苦笑いを浮かべる。
いつの間にか王太子とアイリーンもこの場に到着し、
あとは扉を開けて会場入りするだけとなった。
いつもなら見る側の立場だった自分が、
今日は見られる側の立場にいる。
そのことに少し緊張して、手を握りしめる。
「………シェリル。」
「!」
「手、つないでいく?」
「………大丈夫です。平気ですから。」
仲良しアピールはしない。
自分は"お飾り"の婚約者として、ここにいるのだから。
自分とリアムの前に立つ王太子とアイリーンが
見つめあって微笑み合う光景が目に映る。
本当に婚約したい人と、この人たちは婚約したのだ。
王太子の肘に自分の腕を組んでいるアイリーンは、
本当に幸せそうに見える。
………いいな、こんなふうに笑いあえて。
そんなことを思っていると、扉が少しずつ開き始める。
シェリルは握りしめた手に力を入れ直すと、
前にいる幸せそうな二人に続き、歩き始めたのだった。




