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その鎖、まぼろしです。  作者: クロネコ
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あっという間に時間は流れ、パーティー当日。


「普段からこれぐらい、

 見た目に気を遣ってくださればいいのに。」

「………勘弁して。」


王城内に用意された着替え室でシェリルは、

屋敷から連れてきたメイドに化粧を施されていた。

普通の招待客であれば自分の屋敷から着替えて来るのだが、

シェリルは普通の招待客ではない、第二王子の婚約者だ。

そのため王城内で着替え、身支度をし、

リアムと共に会場入りすることが義務付けられている。


「それにしてもこのドレス、生地が少なくない?」

「そんなことありません!

 色だって、もっと派手な色でも良かったと思いますよ。」

「…………勘弁して。」


シェリルが身に纏っているのは、

深みのあるネイビーのホルターネックドレスだ。

ウエストから足元にかけて

ふんわりと広がるチュールスカートで

たしかにデザインは可愛いのだが、

シェリルとしては肩から手首まで

すっぽりと覆われたドレスの方がよかったのに、と思う。


「普段の靴と違って今日はハイヒールですし、

 くれぐれも走ったりなさらないように!」


シェリルにそう注意しながら、

こちらもお付けになってくださいとメイドは手袋を手渡す。

指先から肘下ぐらいまであるそのロンググローブは、

シェリルの腕に浮かび上がったアザを隠すための物だ。


「それと、

 こちらはリアム殿下からのプレゼントです。」

「!」


そう言ってメイドがシェリルの首元にかけたのは、

希少なモーヴピンクの真珠のネックレスだった。


「………お、お高いんじゃないかなぁ?コレ。」

「そうでしょうね。

 天然のモーヴピンクの真珠でしょうし。」

「………ち、ちぎれたりしないよね?」

「お嬢様がおとなしくされていれば大丈夫です。」


首元に爆弾をつけられたような気持ちになるシェリルに、

迎えの者が来たことを知らせるノックの音が聞こえた。


「さ、お嬢様!

 堂々と胸を張っていってらっしゃいませ!」

「…………ハァ。」


ため息をついてシェリルは立ち上がると、

カツカツと音を立てながら扉に向かったのだった。




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