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その鎖、まぼろしです。  作者: クロネコ
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21



「無事に署名は終わったみたいだな?」


部屋に入ってきた弟を見ながらそう問いかけたのは、

この国の王太子であるバルドだ。


ニッコリと微笑むリアムを見て

よかったと安堵の表情を浮かべたバルドだったが、

なぜか弟の婚約者となったシェリルの顔は

疲れきっているように見えた。


………それもそのはず。

騙されるカタチで婚約の書類に署名と血判を押し、

捕まるわけにはいかないと、四つん這いにもなった。

挙げ句の果てには噛みつくようなキスをされ、

息も絶え絶えにリアムの腕から逃げ出したばかりなのだ。


「二人だけで署名式をしたいと言われた時は驚いたが、

 うまく話がまとまって良かった。」

「!………そういえば、

 どうしてリアム様と二人だけだったんですか?

 あぁいう大事なことって、

 他の方も立ち会ってするものじゃないんですか?」

「本来ならばそうなんだが………

 なぜかリアムが二人っきりがいいと言って。」

「なっ?!どういうことですか?!それっ。」


隣にいるリアムをキッと睨みつけると、

どうしてだろうねー?と、とぼけた返事がかえってきた。

そもそも今日は正式な書類を作りにきたわけではない。

とりあえずお試し期間として

仮の婚約者になるのはどうだろうかとリアムに打診され、

それに関しての同意書にサインをする為だったのに。


「最初っから騙すつもりだったんですね………!」

「人聞きの悪いこと言うんだねぇ、シェリルちゃん?

 ちゃんと確認せずに署名したキミも悪いんだよ?」

「ぐっ………!!」


痛いところを突かれ悔しがるシェリルと、

ニタリと笑って"してやったり"の顔をするリアムを見て、

驚いたような声をあげて言葉を発する者がいた。


「………リアム様と話をするのに、

 顔を赤くしないご令嬢なんて初めて見ましたわ!」

「え?」


そう言って声をあげたのは、

青みがかかった黒髪を耳の横でゆるく結び、

茶色の瞳をした可愛らしい女性だった。


「………あ、あの。」

「そういえば二人は顔を合わせるのは初めてだったな?

 こちらの者はアイリーン、私の婚約者だ。」

「初めまして!シェリル様。」


ニコリと笑って挨拶をするアイリーンに、

シェリルは慌てて頭を下げる。

王太子の婚約者ということは、次期王妃になられる方だ。


「そんなに畏まらなくて大丈夫ですわ!

 同じ王室の者として仲良くしましょうね!」

「えっ?あ、はい!」


キャッキャッと嬉しそうに言うアイリーンの勢いに負け、

シェリルは思わず返事をしてしまう。

………すみません、アイリーン様。

わたし王室の一員になったつもりはないんです。

隣にいるこの人に騙されてこの立場になっただけで、

実は今もまだ婚約破棄できないか試行錯誤してるんです。


「アイリーンはシェリルと歳も近いし、

 これから何かと会う機会も増えるだろうしな。」

「………そういえば、リアム様は何歳なんですか?」

「えっ?」「えっ?」「えっ?」


バルドとアイリーン、そしてシェリルの三人の声が重なる。

それぞれがなぜ?と言う顔をしているが、

シェリルはリアムの年齢を知らない。

自分より年上だろうとは思うが、

正確な年齢を聞いたことはなかった。


「21だよ、シェリル。

 ちなみに兄さんは25で、アイリーン様は19ね。」

「まさか年齢も知らずに婚約したのか………。」

「本当に知り合って間もなかったんですのね。」


少し呆れたような顔をするバルドと、

そんなこともあるんですのね、と驚くアイリーンに

シェリルはなぜか申し訳ない気持ちになる。

年齢ぐらい、レンに聞いておくべきだったかもしれない。


「ま、まぁ、これからいろいろと知っていけばいいさ。」


そう言ってバルドは、

リアムのことを何も知らずに婚約者になったシェリルを、

哀れんだような目で見つめたのだった。




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