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「………シェリル?」
頭上で自分の名前を呼ぶリアムの声がしても、
シェリルは顔を上げることをしなかった。
………いや、出来なかった。
確かにこのポーズなら、
リアムが使う不思議な力に引き寄せられることはない。
だが、その場から動くこともできないのだ。
………それはつまり、
「なに?迎えに来てほしかったの?」
………逆にリアムを、"引き寄せる"ことになるのだ。
「…………………。」
黙ったまま床に視線を落とすシェリルに
再びリアムが自分を呼ぶ声が聞こえる。
犯した間違いと、自分が今とっている格好の恥ずかしさから
なかなか顔を上げられずにいたが、
さすがに観念しておそるおそる顔を上に向ける。
「リ、リアム様…………。」
「!」
恥ずかしさから目にうっすらと涙を浮かべ
顔を赤くしてリアムの名前を呼ぶと、
てっきりいじわるく笑っていると思っていた彼は
いつもより目を見開いてじっと自分を見つめている。
「……あ、あの?」
笑われるのも気に食わないが、
じっとこちらを見つめたまま黙っていられるのも困る。
気まずさに耐えかねて立ちあがろうとすると、
それよりも先にリアムがしゃがみこんだ。
「ひゃ?!」
突然目の前に現れたリアムに驚き、小さく悲鳴をあげる。
ゆるめのツイストパーマがかかったような髪と
少し垂れ目の漆黒の瞳。
その端正な顔立ちが、目の前にあった。
「………その顔、外でしないで。」
「え?」
「その顔でほかの男に媚びたら殺すから。」
「こ、ころ………!?」
「………シェリル。」
「?!」
グッと顎を掴まれ、ぼう然とするシェリルの瞳に、
リアムの妖艶な笑みが映る。
なんとかこの状況から逃げられないかと
目を泳がせオロオロするシェリルをリアムは見つめ、
クスクス笑うと
「………逃げられないよ?シェリル。」
そのまま噛み付くように、シェリルの唇を塞いだ。




