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その鎖、まぼろしです。  作者: クロネコ
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「…………リアム様。

 どうして、血判なんて…………。」


まだ少し痛む指先を見つめながら、

シェリルは隣に立っているリアムに問いかける。

その声に反応したリアムは目を細めながら笑い、

シェリルの問いに答えた。


「そうしないと、効力を発揮しないからだよ。」


そうリアムが言い終わるのと同時に、

目の前に置かれた書類に薄らと文字が浮かび始める。

まるで手品のようなそれにシェリルは驚き、

いったいどうなっているのかと目を見張る。


「この紙、

 作る時に特殊な薬品を混ぜて作るらしいんだけど、

 署名と血判が揃って初めて、

 書かれてる文字が浮かび上がる仕組みなんだよ。」

「で、でもっ

 正式な書類じゃないって言いましたよね?!

 血判まで押す必要はなかったんじゃ………!?」

「ごめんね、騙しちゃった。」

「…………は?」

「だってそうでも言わないとシェリル、

 俺と婚約してくれないでしょ?

 シェリルを手放すつもりはないし、

 他の女と婚約するつもりなんてサラサラないし。」


悪びれる様子もなく話すリアムに、

シェリルは今まで感じたことのないほどの怒りを覚え、

正式な書類として完成したそれをひっ掴んだ。

ならばこの書類をビリビリに破いて無効にすればいい。

そう思ったシェリルだったが、

その目論見はリアムの言葉によって打ち砕かれる。


「それ、絶対に破れないし燃えないよ?

 血判を押した人間が死ねば、話は別だけど。」

「なっ………?!」

「だからこういう重要なことに使われるんだよ?

 ………一度結ばれた契約を、破棄できないようにね。」


ジリっとこちらに近づいてくるリアムに危険を感じ、

シェリルは無意識に後ずさる。


「あぁ、それとも……

 鎖でつないで監禁した方がいい?」

「!!」

「そうすればこんなもの無くても、

 ずっと俺のそばにいてくれるもんね?

 シェリルの世話は俺がちゃんとするし、

 もしかしたら痛いこともするかもしれないけど、

 俺がいないと死んじゃうぐらいに愛してあげる。」

「ひっ………。」


"逃げて"


自分の心の声なのか、それとも別の誰かの声なのか、

どちらにしろ危険を知らせる声が聞こえる。

………わかってる、わかってるんだけど!

恐怖で震えてしまい、うまく足が動かせない。

もつれて転びそうになるのを必死にこらえ、

シェリルはリアムから距離をとろうとする。


そんなシェリルを、リアムは光悦な表情で見つめる。

必死で自分から逃げようとするその姿に、

リアムは自身の加虐心を刺激されたような感覚に陥る。

逃げようとされればされるほど、

こちらは欲しくてたまらなくなるのに。


「………シェリル。」

「!」


甘ったるい声で名前を呼ばれ、

シェリルの体はビクっと揺れ、動きを止めてしまう。

逃げなくてはいけないとわかっているのに、

頭と心は逃げろと指示を出しているのに、

なぜか体がいうことを聞いてくれないのだ。


「………おいで?」

「…………………。」


そんな優しい声で呼ばれても、

それが罠だってことぐらいわかってる。

大丈夫、行かなければいいだけ。近づかなければいい。

あの優しい声に騙されちゃいけない。


じっとその場から動こうとしないシェリルに、

リアムはわざとらしく困ったような表情を浮かべる。


「しかたないなぁ………。」


そうつぶやいて、リアムは人差し指を立てる。

こちらに来ないなら、来るようにすればいいだけだ。


「………や、やだ。」

「おいでって言ってるのに

 言うことを聞かないシェリルが悪い。

 ………それとも今からちゃんと聞く?」

「っ………それは…………。」

「じゃあしかたないね。」


リアムが指を動かす。

だがその動きとほぼ同時にシェリルは

咄嗟に膝を曲げ、ぺたんと床に手をついた。

せめてもの抵抗だと、立っていることをやめたのだ。

立ってさえいなければ歩くことはできない、

たとえリアムが指を動かしたとしても、

いつものように引っ張られることはないはずだ。


「………シェリル?」

「嫌です!!動きません!!」


手と膝を床につけ、

四つん這いになったシェリルが間違いに気づくのは、

このすぐ後だった。






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