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その鎖、まぼろしです。  作者: クロネコ
19/31

18



「まさかこんなことになるとはねぇ。」

「…………………。」


王城に出向いてからしばらくが経ち、

シェリルは友人であるジネットの屋敷にお邪魔していた。


ジネッとの視線はテーブルの上のタブロイド紙にそそがれ、

シェリルは両手で顔を覆っている。


「婚約なんてしてないのに………!!」

「でもそう書かれてるわよ?

 "リアム殿下がご婚約!!

  お相手はファルツォーネ家のご令嬢"って。」

「誰がこんなデマを……!!」

「でも本当にデマなら、

 王室だって黙ってないでしょう?

 新聞社だって王室相手に喧嘩なんか売らないわよ。」

「あぁぁぁ、なんでえぇぇ。」


どこから情報が漏れたのか、

王室からシェリルに婚約の打診があったこと、

しかもそれを正式に受けたことになっており、

あのプレイボーイがついに婚約!!などと

ありもしない嘘っぱちの記事が出回ってしまったのだ。


「………ねぇジネット。

 実はわたし、国外に逃亡しようと思って。」

「は?」

「このままこの国にいたら、

 本当にリアム殿下と婚約しなきゃいけなくなるし、

 そうしたら結婚までトントン拍子に話が進んで、

 ファルツォーネの家から出なきゃいけなくなって、

 それで、それで………。」

「落ち着いて、シェリル。

 これだけ国中で騒がれてて

 婚約相手がアンタってバレてるこの状況で、

 国外に出られるわけないでしょう?

「大丈夫、隠れて出国するから。」

「無理に決まってるでしょ?

 アンタはもう、立派な王室の一員になったんだから。」

「そんなわけないでしょ?!

 だって書面にサインとかしてないし!」

「そのために、そのうち王室から迎えがくるわよ。」


それから数日後の暖かな日。

ジネットの予想が的中したことを、

シェリルは王城の一室で身を持って実感していた。


「さ、シェリル。サインして?」

「……………………。」


内容がよくわからない書類に、

簡単にサインしてはいけないと両親に教えられていたが、

これもその部類に入るのではないかとシェリルは思う。


「こ、これって………。」

「大丈夫だよ、正式なものじゃないから。」

「………ほ、ほんとに?」


ニッコリ笑って肯定の意を示すリアムに

なんとも胡散臭さを感じながらシェリルはペンをとる。

………でも確かにこの書類、どこにも王家の印がない。

正式な書類ならば、どこかに押印がされているはずなのだが、

それらしきものはどこにも見当たらない。

ならば本当に、これは正式なものではないのだろう。


「…………信じますからね?」


そう言ってシェリルは、自分の名前を署名する。

リアムの名前はすでに書かれており、

二人の名前が並んだ書類が完成した。


「………シェリル、ちょっとごめんね。」

「え?」


ペンを置いたシェリルの手を、リアムがそっと握る。

突然のことにされるがままになっていると、


「っ?!」


チクリと人差し指の先に痛みがはしり、

じんわりと血が滲み出る。


「な、なにす………っ。」


小さな血溜まりが出来始めた指先を、

シェリルの手を握ったままのリアムがそのまま、

書類に押し付けたのは一瞬の出来事だった。


「?!」


押し付けた指先の血が書面に滲み、

立派な血判が出来上がる。

それと同時に掴まれていた手が解放され、

シェリルはゆっくりと自身の手のひらを見つめる。

隣ではリアムが自分の指先に細い針のようなものを刺しているところだった。


「………ま、待って!!」


嫌な予感がしてシェリルは、

先ほど自分がされたのと同じように

書類に指先を押し付けようとしているリアムに声をかけるが

その声よりも先に、もうひとつ血判が出来上がったのだった。





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