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「な、なにをおっしゃってるのか………。」
わかりませんが、と言おうとしたシェリルの目に、
リアムが人差し指をクルクルと回す光景が映る。
………あの時もそうだった。
リアムがあぁやって指をクルクルさせて、
自分の方に来いと言わんばかりに指をクイっと曲げると、
なぜかシェリルはリアムの元に引き寄せられてしまう。
もし今この場で、あの時と同じようになったら、
王太子と父はシェリルが自分から
リアムに抱きついたと勘違いするはずだ。
「で、殿下!それは………!」
「………あぁ、やっぱり恥ずかしい?
そうだよね、二人の前であんな………。」
「誤解を招くような発言はしないでください!」
「シェリル?一体どういう………。」
「なんでもありません!何もありません!」
アワアワと慌てる娘を見て、父は首を傾げる。
今ここでリアムに抱きつくわけにはいかない。
そんなことをすれば不敬罪として処されるか、
自分も彼に気があると勘違いされる可能性がある。
「………まぁたしかに、
二人が知り合って間もないのは違いない。
だが兄である自分としては
なかなか婚約者を決めずにいたリアムが
やっと婚約者候補として自らが選んだ
シェリル嬢を手放すのも惜しい。」
「お、王太子殿下っ?」
「二人にはお互いを知る時間が必要なのではないか?
しばらく婚約の話は保留にして、
まずは互いのことを知るのがいいと思うが。」
あぁ、王太子もそっち派か………
シェリルはガックリとうなだれる。
この人の婚約者になりたいご令嬢なんて
この国にいくらでもいるはずなのに………!!
「では兄上、
さっそくシェリルと"二人"で話してきます。」
「はっ?!」
「………まぁそれもいいだろう。
くれぐれも問題は起こすなよ、リアム。」
不吉な言葉とともに弟を見送ろうとする王太子を、
シェリルは気づかれない程度に睨みつける。
隣にいる父はやはりアテにならず、
リアム殿下にご迷惑をおかけしないように。
………なんて囁いてくる。
「それじゃあ行こうか、シェリル。」
いつのまにか隣に立っていたリアムに手を差し出され、
シェリルはその手を叩きたい衝動にかられる。
だかそんなことをすれば
本当に自分の首が飛ぶかもしれない。
「………シェリル"ちゃん"?」
「!!」
顔を覗き込まれ、
わざと"ちゃん付け"で名前を呼ばれたシェリルは、
半ばヤケクソになりながらその手を取った。




