↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その鎖、まぼろしです。  作者: クロネコ
14/158

13



王家からの書状が届いて数日後、

シェリルは父とともに王城内の一室にいた。


先ほどメイドが淹れてくれた紅茶がテーブルの上にあるが、

とてもじゃないが口をつける気になれない。

これから話し合われる内容が頭の中をグルグルとまわり、

シェリルの気持ちをどん底に突き落としていた。


「………シェリル、大丈夫かい?」

「…………大丈夫そうに見えます?」


隣に座る父が心配して声をかけてくれるが、

むしろ何も言わずほっておいてほしい。

そして今すぐにでもこの場から逃げ出したい。

いっそ本当に逃げ出してやろうかな………

そんなことを考え始めていたシェリルの耳に、

部屋の扉を開ける音が聞こえてきた。

隣にいる父もその音に気づいたようで、

立ち上がるようそっと促してくる。


「待たせてすまなかったな、ファルツォーネ殿。」


二人にそう声をかけてきたのは、王太子だ。

明るい茶色の髪と、"あの"王子と同じ漆黒の瞳。

さすがは兄弟というべきか、

こちらもまた、ご令嬢たちに人気のイケメンだ。

だがすでに王太子には婚約者がいるらしく、

ならば狙うは弟だ!と息巻いているご令嬢もいるのだとか。


「………そなたがシェリルだな?」

「!」


思いがけず声をかけられ、

シェリルは驚きながらも挨拶をする。

………もうこの人しか、自分を助けてくれる人はいない。

あの第二王子よりも身分が高く、

婚約の話を無かったことにできるのはこの人しか!!


「すぐにリアムもこちらに来るはずだ。

 話は全員そろってから………。」

「王太子殿下。」

「!」


勇気を振り絞ってシェリルは王太子に声をかける。

あの王子がいない今がチャンスなのだ。


「王太子殿下、

 大変申し訳ございませんが………

 この婚約の申し入れ、お受けすることはできません。」

「!!

 シェ、シェリル?お前いきなり何を………!」


隣にいる父が驚き、焦るのを尻目に、

シェリルは言葉を続ける。


「リアム殿下はこの先、

 王太子殿下と共にこの国を背負っていかれるお方です。

 そのような高貴な方の隣に立ち、

 支えていく力など私にはありません。」

「…………………。」

「わたしのような者を婚約者にしてしまったら、

 リアム殿下に恥をかかせることになってしまいます!

 ですからお願いです、このお話は………!」


"無かったことにしてください!"

そう言葉を続けようとしたシェリルは、

あの時と同じ胸騒ぎを不意に感じ、言葉を止める。


………この感じ。


突然の胸騒ぎはあの日の事を思い出させ、

シェリルの心にはじわじわと恐怖心が広がり始める。


「………シェリル嬢?」


顔を下に向け、

突然黙ってしまったシェリルを不思議に思い

王太子が声をかけようとしたその時、

ガチャリと音がして部屋の扉が開く。


「遅くなりました。」


その声を聞いたシェリルは、小さく肩を揺らす。

部屋に入ってきたその人がこちらに向かってくるのも、

自分の横に立ち、その足を止めたことがわかっても、

シェリルは顔をあげることができなかった。


「…………シェリルちゃん?」

「!」


クスクスと笑いながら、自分のすぐそばに立つその人に

甘ったるい声で自分の名前を呼ばれ、

シェリルは思わず顔を上げてしまう。


「………リ、リアム殿下。」


目に映ったその顔は、愉しそうに微笑んでいた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。