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その鎖、まぼろしです。  作者: クロネコ
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「い、いいかげんに離してもらえます?!」


会議室の前でヴィンセントとジュードと別れたあと。

リアムは黙ってシェリルの手を掴むと、

ズルズルと引きずるように彼女を自室に連れ込んだ。


「………………………。」

「………リアム様?聞いてます?」


部屋に連れ込まれてからずっと、

リアムはシェリルを自分の腕の中に閉じ込めたまま

ソファーに座り、何も言わずジッと黙っている。

時折顔をシェリルの首元に埋めグリグリする以外、

彼は言葉を発しようとはしない。


「どうしたんですか?会議が大変だったんですか?」

「………………………。」

「でも終わったんですよね?何か問題が…………。」

「………………かった。」

「へっ?」

「………………足りなかった、シェリルが。」

「!」

「ずっとずっと会いたくて。

 でも会いに行ったらシェリルは怒るだろうし、

 二度と口きかないとか言ってたし…………。」

「…………………………。」

「だから我慢して我慢して我慢して

 約束どーり真面目に公務もやってたし。」


それは我慢してやる事ではなく、当たり前では?と、

喉まで出かかった言葉を飲み込んで、

シェリルは首を傾けながらリアムを覗き込む。


「そ、それは偉かったですね?

 でも今日からわたしも来ますし…………。」

「シェリルは?

 シェリルは俺に会えなくて寂しかった?」

「え?」

「…………寂しかったよね?」

「……………………………。」


…………寂しかった、かな。

実家でグータラ生活を送り、ジネットとお茶会して、

読みたかった本を読み漁り、ミートパイを食べて………

いや、でもたまにリアム様の事も思い出してたよ?

ちゃんと真面目に公務に勤しんでるかなー?って。

………うん、寂しかった。寂しかったことにしよう!


「そ、それはもちろん!!

 リアム様元気かなー?って。

 でもきっと公務が忙しくて大変だろうなぁって!」

「………それ、寂しいと思ってなくない?」

「な、なにを言うんですか!!思ってましたよ?!

 ………ね、寝る時とか、

 リアム様にポンポンされた方がすぐ眠れるなぁ?とか。」


これは嘘じゃない、真実だ。

彼に背中をポンポンされながら眠る習慣がついたせいか、

実家にいる間は眠りつくまでに時間がかかった。

それでも一般的には早い方だとはおもうが、

それでもリアムと眠るより時間がかかったのは間違いない。


「じゃあもちろん、今日は泊まって行くよね?

 俺がいないと寝つきが悪いんだもんね?」

「え?あ?それとこれとは話が別…………。」

「なにが別?一緒でしょ?

 ………それとも、

 これ以上俺に我慢させるとか………放置プレイ?」

「違うから。変なふうに言わないでもらえます?」


じゃあいいよね?と首筋に顔をグリグリされると、

シェリルはくすぐったさから逃れようと体を捩らせる。


「…………ねぇ、そういえば。」

「?」

「アザ、見せて?」

「………………え。」


耳元で囁かれたその言葉にシェリルが、

ピクリと体を震わせたのをリアムは見逃さなかった。


「…………見せて。早く。」

「な、なんでですか?

 べつにアザに変わりは…………。」

「特に理由はないよ。ただ、

 離れてる間になにか変化があったら嫌だなぁと思って。」

「か、変わったことなんて何も…………。」


つい先ほどゼインに抱きしめられ、

脱力感を味わったことを思い出し、

シェリルはしまった!と心の中で焦る。

どうしてリアムに会う前に確認しなかったのか。

肝心なことを忘れていたことに気づいたが、後の祭りだ。


「…………隠し事がヘタだねぇ、シェリルちゃんは。」


そう言ってリアムが服の袖をまくるのと、

シェリルが声にならない叫びを上げたのは同時だった。



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