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ゼインと別れ、ヴィンセントに連れて来られたのは、
彼から王子妃教育を受けている見慣れた部屋だった。
「まったく………
クソガキに頼まれてあなたの事を探してたら、
あんな現場に遭遇するなんてビックリしたわよ。」
「す、すみません…………
わたしもあんなことになるとは思ってもみなくて。」
「あの男がゼインって外交官よね?
いかにもインテリ男って感じだったけど。
………登城して早々に捕まるなんて、
あなたもツイてないわねぇ、シェリルちゃん。」
「………ははは。ホントに。」
用意されたお茶を飲みながら
呆れたような表情を浮かべるヴィンセントに、
シェリルはため息をつきながら答える。
………やっぱり彼は、
わたしの体からアザを消すことができる。
そのことを確証できた出来事だったが、
あの現場をリアムに見られなくて良かったと
心の底から安堵しつつ、
「さ、さっきのことはリアム様には内緒ですよ?!」
慌ててヴィンセントに口止めする。
ただでさえゼインの話になると不機嫌になるあの男に、
今回のことを知られるわけにはいかない。
「………まぁそれはいいけど。
でもその代わり、教えてくれる?
あなたとクソガキ、それとあのインテリ男の関係。」
「!」
「そろそろ王子妃教育も終わって、
私はあなたの専属護衛になる。
………それなら、主を危険にさらす男のことは
ちゃんと知っとかないとね。」
頬杖をつきながらニッコリと微笑むヴィンセントに
シェリルは黙って少し考え込んだ後、
「…………昔からの、
信じられないような話なんですけど。」
ポツリポツリと話し始めたのだった。
と、シェリルがヴィンセントに打ち明けている頃。
笑顔を浮かべながらも冷たい空気を放つ男が一人。
「………機嫌悪そうですね、殿下。」
「………そりゃそうだろ。
シェリル様が登城するってわかってて、
自分は急遽会議に出なきゃいけなくなったんだから。」
「………早く終わらないですかね。
もう話の内容なんて頭の中に入らないんですけど。」
ヒソヒソと話す部下たちの声を耳に入れながら、
リアムは微笑みを崩さず淡々と話を聞いている。
その内心は、もはや無に近い状態ではあるが。
「…………それで?
相手との交渉はどうなってるの?
こっちに損が出るなら
これからの付き合い方を改めてなきゃいけないし、
別のやり方で解決できるならそれを提示してくれる?」
「は、はいっ!!すぐにでも案を………!」
「まだ考えてない?それとも考えてる最中?
相手がこっちの返事を待ってる状況なら、
すぐにでも考えてその案を教えてくれる?」
「ヒッ………。」
「明日の夕方までに提出できるよね?
大体の条件は変わらないみたいだし、
キミたちは俺の優秀な部下だから、できるよね?」
「で、できっ………。」
「どっちだよ?できるの?できないの?
………できないなら今からサッサとやれよ。」
「!!!」
「もちろん。
そこで無駄口たたいてるお前らも、だよ?」
「!!!!」
どうしてよりによって今日会議を開くことになったのか、
せめて明日だったらまだ機嫌も良かったはずなのに。
無理難題をふっかけてきた外交国を恨みながら、
その場にいた全員が冷や汗をかいたのだった。




