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その鎖、まぼろしです。  作者: クロネコ
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ジネットに、お茶のことをお願いした数日後。

シェリルはレンと連れ立って久しぶりに登城していた。


…………二週間ぶりぐらい?


それまで何度も通っていた場所なのに、

なんだか懐かしいような、新鮮な気持ちになる。

………それと同時に、

またあの拗らせ婚約者の相手が始まるのかと

少しだけ憂鬱な気持ちも湧き上がった。

………いやいや、あの人はわたしの婚約者で、

少なくとも"好き"という感情は持ち合わせている。

ただ向こうからの愛情が少し、いやだいぶ?重すぎるのだ。


「…………それにしても、本当に大丈夫なわけ?」

「!」


ひとり悶々と考え込んでいたシェリルに、

隣を歩くレンがため息混じりに問いかけてくる。


「………まだ言ってんの?

 "これぐらい"のことで文句言うなら、

 わたしに王子妃なんて求めないで欲しいんだけど。」

「王子妃になる人間だからだろ?

 ………殿下のあっけにとられた顔が想像できるよ。」

「……………髪なんて、どうせすぐ伸びるのに。」


ファルツォーネの屋敷に戻っている間に、

シェリルは伸ばしていた髪をバッサリ切った。

顎のラインで切り揃えたその髪型に

家族は唖然としていたが、当の本人はスッキリした顔で、


"これで心機一転、また頑張ってくる。"


と、満面の笑みを浮かべたのだ。


「まぁ姉さんがどんな髪型になったところで、

 あの人が幻滅することはないと思うけどね。」

「…………少しぐらいしてくれてもいいけど。」


遠い目をしながらそうつぶやいて、

シェリルは久しぶりに王城へと足を踏み入れた。



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