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その夜、
シェリルは自分の横でニコニコと笑いながら
腕枕をしてくれているリアムの顔をジッと見つめていた。
「…………リアム様?
そろそろご自分の寝室に戻られたらいかがですか?」
「どうして?俺も今日はここで寝るけど。」
「………わたし、一応病人なんです。
体を休める為にも一人で寝たいんです。」
「侍医が添い寝ぐらいなら大丈夫って。」
「聞いたんですか?!一緒に寝てもいいかって?!」
リアムのまさかの発言に驚き
大きな声を出してしまったシェリルは、
ゴホゴホとむせこんでしまう。
「ほら、そんな大きな声出すから………
まだ喉痛いんでしょ?咳出るんだよね?
………屋敷に帰るの、やめたら?」
「………………大丈夫です。
今のは急に大きな声を出したから…………。」
とは言ったものの、
なかなか治まらない咳に苦しむシェリルの背中を、
リアムはよしよしとさすってくれる。
………それはいい、ありがたいのだが。
「…………ねぇ、シェリル。」
「…………っ、な、なんですか?」
「………………結婚しよっか。」
リアムの突然のプロポーズに、
治りかけていた咳がピタっと止まる。
………いや、でも、
婚約しているのだからいずれは結婚するのでは?と、
シェリルは頭の中で整理してリアムを見つめる。
「そ、それはまぁ………いずれは…………。」
「"いずれ"じゃなくて"すぐ"に。」
「…………………………。」
冗談とは思えないその口調に、
自分が眠っている間に
この人はまたなにか拗らせてしまったのかと
シェリルは身じろぎもせずただジッとリアムを見つめる。
「な、なんで急に………。」
「嫌なの?」
「い、嫌なんて言ってな………。」
「じゃあ結婚しよ?………そうすれば、
シェリルの帰る場所はココになるよね?」
「!」
「俺はね、シェリル。
何かあったら"屋敷に帰る"ってのが
もう耐えられないしおかしいと思うんだよね。」
「お、おかしい………?」
「シェリルが帰る場所は俺のところでいいし、
シェリルがいるのは
俺のそばじゃなきゃダメだと思うんだよね。
だって目を離すと何しでかすかわからないし。」
「………………………。」
…………こわい、こわい、こわい。
自分の左腕にあるアザを確かめるように、
スリスリ撫でながら話すリアムを
シェリルは黙ったまま恐怖の目で見ていた。
………重い、感情が重すぎる。
「だからまぁ結婚しちゃえば、
とりあえず帰るのは俺のとこになるワケだし?
おはようからおやすみまで
ずーっと一緒にいられるってことでしょ?
………イイコトずくめだと思うんだよねぇ。」
「………………………………。」
クルリと体を反転させて、
シェリルはリアムに背中を向ける。
………考えがどんどんヤバい方向に進んでる気がする。
このままだと本当に、
監禁される日も近いのではないだろうか。
言い伝えのように鎖でつながれて、自由を奪われ、
すべてリアムに管理されながら
生きていくことになりそうな気がして、
シェリルはブルッと体を震わせる。
「…………シェリル。」
「!」
怒ってはいない、とは思うが、
拒否するのは許さないとでもいうような強い口調で、
リアムが自分の名前を口にする。
ゆっくり、おそるおそる振り返ってみれば
眉をひそめこちらを見つめるリアムがいた。
「…………拒否するつもり?」
「ち、ちがっ…………。
リアム様は考えすぎなんです!
婚約中だろうが結婚しようが、
わたしはリアム様から離れようとは思ってないし、
体調が完全に戻ればちゃんとまた戻って来ますっ。
…………ですからその間、
リアム様もちゃんと執務をこなしてください!
もしサボって屋敷に来たりしたら、
二度と口ききませんからね!?」
「……………………………。」
自分でも子供っぽい怒り方だとは思ったが、
シェリルはそのままプイッと横を向いて目を閉じる。
「…………え、キス待ち?」
「違います!!寝るんです!!」
クスクスと小さく笑い、
リアムは自分の方へとシェリルを引き寄せる。
そんな彼の行動をおとなしく受け入れ、
見つめられている気配を感じつつも
シェリルが目を開けることはなかった。




