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その後、シェリルが再び目を覚ましたのは、
リアムとご飯を食べる約束をした翌日………ではなく、
それから二日後の朝だった。
「………ほんと、よく寝るよね。姉さんって。」
安心したような、呆れたような声で弟は言い、
「よかったっ………
このままシェリル様が目を覚まさなかったら
どうやってリアム様にお詫びしようかとっ………!!」
アイリーンにはうわぁぁぁん!!と大声で泣かれ、
王太后にも謝罪されたシェリルは、
申し訳なさから二人にペコペコと頭を下げた。
「愛されてるわねぇ、シェリルちゃんは。」
「………なんだか申し訳ないです。
まさか二日間も寝てたなんて…………。」
ベッドのそばにある椅子に座り、
自分を見ながら微笑んでいるヴィンセントに
シェリルはしょんぼりした表情で答える。
「今はちゃんと休んで、
元気になった姿を見せてやればいいのよ。
あのクソガキもやっと執務に戻ったんでしょ?」
「そうみたいです…………
レンにもその事で散々言われちゃって。
"姉さんに何かあると
殿下が仕事しなくなるのが一番困る"って。」
「でもまぁ、今回は仕方ないでしょ。
それにアレが数日仕事に穴あけたぐらいで
ヒーヒー言ってる部下たちもどうかと思うわ。」
「………それだけ、
リアム様は必要とされてる方なんですよ、きっと。」
この二日間、シェリルはずっと眠っていたわけではない。
時折うっすらと目を開け、
ぼんやりとした意識で周りを見ることがあった。
そんな時に見える光景はほとんど、
………リアム様、仕事してる………?
机に書類を広げ、
なにやら難しい顔をして執務に取り組むリアムの姿だった。
………早く起きて、元の生活に戻らなきゃ。
まどろみの中でそう思いつつ、
襲いくる睡魔に瞼を閉じてしまう自分を恨む。
…………この人は、
わたしだけが必要としてる人じゃない。
たくさんの人に信頼されて、必要とされている人だ。
…………わたしだけが、縛りつけちゃダメだ。
睡魔へと意識を預ける間際、シェリルはそう思った。
「………しばらくは屋敷に戻るんだっけ?」
「!」
ヴィンセントに話しかけられ、
シェリルは意識を現実へと戻す。
「あ、はい………
城で安静にしてればいいってリアム様は言うんですけど、
でもそうしちゃうと、
みんなが余計に気を使うんじゃないかと思って。
しばらく屋敷に戻って体調がよくなったら、
また王子妃教育をお願いしますね、先生。」
ニコっと笑ってヴィンセントにそう言えば、
同じように笑顔を返してくれる。
きっと彼にも心配をかけたはずだ、
自分が眠っている間に何度も足を運んでくれていたと
レンが教えてくれた。
「それに………屋敷に戻ったら会いたい人がいて。
お願いしたいこともあるし…………。」
「………会いたい人?」
「とっても頼りになる人なんです。
実は調べたいことがあるんですけど、
その子に頼んで調べてもらおうかと思って…………。」
考え込むような素振りをみせるシェリルを、
ヴィンセントは少し怪しむような目で見つめる。
「………それ、クソガキは知ってるの?」
「…………………言ってません。」
「ちゃんと伝えておいた方がいいんじゃない?
ただでさえあんな事があったばかりだし、
勝手なことすると今度こそ暴走するんじゃない?」
「大丈夫です!
わたしがどこかへ行くとかそういうのじゃないし、
リアム様に言うと"自分が何とかしてあげる"とか言って
また執務を放り出しそうな気がするので。
…………だから先生も、内緒にしてくださいね?」
ニンマリといたずらっ子のような笑顔を見せれば、
ヴィンセントが大きなため息をつく。
「………いいけど、
もし何かあればすぐ報告すること、いいわね?」
「もちろん!先生にすぐお伝えしますね。」
そう言ってシェリルは、コクコクと首を縦に振った。




