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その鎖、まぼろしです。  作者: クロネコ
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ぽた、ぽた、と、

水が垂れ落ちるような音がする。

………あぁ、そうだ。

わたしすごい量の鼻血を出したんだっけ?

上向いちゃったから喉に血が流れてきちゃって、

すごい苦しかったなぁ………。


それになんだか体が重い。動かせない。

…………あぁ、夢を見てるのかもしれない。


視界だけはハッキリしているシェリルの目に、

またあの捕らわれた彼女が映し出される。


…………苦しい、痛い、苦しい。


すぐそこにいる彼女は床に手と膝をつき、

苦悶の表情を浮かべ涙を流している。

………ポタポタと、口から血を流しながら。


…………叶わない、共に生きることは。

…………願ってはいけなかった、そばにいることを。


呼吸がままならず、彼女が咳き込むと、

同じようにシェリルも肺が苦しい感覚に陥る。

苦しい、息がうまく吸えない。

夢の中のはずなのに感じるその辛さは、

目の前の彼女が味わっている感覚なのかもしれない。


…………謝らなくては。

…………出来ない約束をしたことを。

…………愛していると、伝えられなかったことを。


"かはっ"と、口から血を吐き出し、

とうとう彼女は床へと倒れ込んでしまう。

顔は白く、口のまわりは吐血で真っ赤になり、

彼女の命の灯火は、静かに消えようとしていた。


…………あぁ、最後にもう一度だけ、あなたに会いたかった。

愛してると、ちゃんと伝えたかった。

…………そばに、ずっとそばにいたかったと。

そんな些細な願いすら、もう叶うことはないけれど、

それでも自分は………あなたを愛していたと。


視界がぼやけていく。

もう苦しくない、痛みも感じない。

目に映るのは、真っ赤な血で汚れた自分の手だけ。


…………どうか幸せに。

…………あなたがずっと笑っていられますように。

…………わたしのこの気持ちが、あなたに届きますように。



……………愛してるわ。私の愛しい人。



彼女の視界も、シェリルの視界も、プツリと切れた。



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