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「おいしい?シェリル。」
「…………!」
こくこくと頷きながらアップルパイを味わうシェリルを、
リアムは満足そうな表情で見つめる。
「調理場に頼んでおいたんだよ?
シェリルが喜ぶだろうから作っておいてって。」
「………っ、そうなんですか?」
ゴクリと口の中のアップルパイを飲み込み、
シェリルは城のシェフ達にお礼を言わなければと思う。
「………そういえば、あいつは?」
「………あいつ?
………あ、ヴィー先生のことですか?
そういえばいつの間にかいなくなっちゃって。
一緒に陰から見てたはずなのに。」
不穏な空気を察したか、
それとも関わりたくないと思ったのか、
リアムが自分たちのところに来る気配を感じて
一足先にその場から立ち去ったのだろう。
今度会ったら問い詰めてやる、と、
二口目のアップルパイを咀嚼しながら決意する。
「………ねぇ、
この前言ってた護衛の話だけど………
………ヴィンセントに頼もうか。」
「!!
………へっ、えっ?いいんですかっ?」
「アレの護衛としての力量は間違いないし、
なにより今みたいに"先生"として
教えてもらいたいことがまだあるんじゃないの?」
「っ………そうなんです!
まだまだ先生に聞きたいことがいっぱいあって。
でも王子妃教育が終わったら
先生と今みたいに会えなくなるし………
でも護衛としてそばにいてもらえれば、
何かわからないことがあってもすぐ聞けますから。」
ニッコリ笑って嬉しそうな顔をするシェリルを、
リアムは少しだけ拗ねたような顔で見つめる。
…………そこまで嬉しそうにするか。
「…………そんなに嬉しい?
ヴィンセントがそばにいてくれるのが。」
「それはもちろん!
先生がそばにいてくれたら心強いですし。」
「…………へぇ。」
「?」
ふいに自分の方へと伸びてきたリアムの手が、
持っていたフォークをすっと取り上げる。
なに?と不思議そうな顔でリアムを見つめれば、
彼は取り上げたフォークでアップルパイを刺す。
「リ、リアム様も食べたかったんですか?」
「全然?
………食べさせてあげようかと思って。」
「……………え。」
アップルパイが突き刺さったフォークが、
自分の口元へと近づけられる。
この人はまた急に何を………と戸惑うシェリルを無視して、
リアムがアップルパイをグイッと口に押し付けてくる。
「…………"あーん"して?」
「んぐっ?!」
「ほら、好きなんでしょ?これ。
食べさせてあげるから早く口開けて。」
「っ………じ、自分で食べられっ………。」
「いいから早く。
じゃないとパイがボロボロになっちゃうよ?」
「…………………………。」
リアムの言うとおり、
パイ生地がポロポロとシェリルの膝に落ち始めている。
このままだとパイごとフォークから落ちるかもしれないと
シェリルは観念したようにおずおずと口を開き、
差し出されたアップルパイを口に含む。
「美味しい?」
「………………んっ。」
小さく首を縦に振れば、そっか。とリアムが笑う。
だがその笑みが妖艶さを含んだことに、シェリルは気づく。
「そんなに美味しいんだ?…………それは気になるかも。」
「!!」
嫌な予感とは当たるもので…………
抵抗する間もなく顎をグッと掴まれ、
そのまま噛み付くようにリアムに唇を塞がれる。
「んんっ!!っ…………んぅっ?!」
アップルパイの味を確かめる為に
リアムの舌が口の中に入ってきたのを、
シェリルは息を詰まらせそうになりながら感じつつ
彼の上着を掴みその苦しさに耐える。
「…………は、甘い。」
そっとシェリルの唇から自身の唇を離し、
舌なめずりしながらアップルパイの感想を口にしたリアムは
彼女の唇を拭うように親指でなぞる。
「………こういうことは、俺とだけね?」
顔を真っ赤にして睨みつけてくるシェリルを、
リアムは意地の悪い笑みを浮かべながら見つめたのだった。




