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アイリーンとのお茶会を終え、
さてこの後はどうしたものかと考えていたシェリルに
「…………シェリル様。」
「!」
声をかけてきたのは、会いたくない人物だった。
「今日はアイリーンとお茶会だと聞いていましたが、
そちらはもう終えられたのですか?」
「………えぇ、ゼイン様。
アイリーン様でしたら部屋に戻られましたよ?」
「そうですか。
………でしたら少し、僕と話をしませんか?」
「!」
「"あの夜"のことを少し………お話したくて。」
「……………………。」
「ご心配をなさらなくても、
部屋で二人っきりで、などとは言いません。
中庭なら密室ではありませんし、
回廊を歩くメイド達の目もあるでしょうから。」
「…………わかりました。」
どうせここで拒否しても、
この人は簡単に引いてくれるタイプではないだろう。
下手にここでもめるより
おとなしく言うことを聞いた方がいい………。
シェリルの返答を聞いて、ゼインがニッコリと微笑む。
………この笑顔を望むのは私じゃない。
そう思いながらシェリルは、彼の後に続いた。
ちょうどその頃。城内の別の場所では、
「おい、…………ヴィンセント。」
ちょうど登城してきたヴィンセントに、
リアムはさも嫌々といった目で声をかけていた。
「………そんなに嫌なら、
声をかけないでいただけます?クソガキ殿。」
「…………お前、
シェリルの王子妃教育が終わったら何するつもり。」
「は?」
「おとなしく家にいるのか、
それともまたどっかに行くのか。」
「…………まだ何も考えてねぇよ。」
「ならこのまま、シェリルのそばにいる気は?」
「!」
「シェリルがそれを望んだら、お前はどうする?」
「………何が言いたい?ハッキリ言えよ。」
「………シェリルが、
お前に自分の専属護衛になって欲しいって。」
「!」
「もちろん断れ。引き受けるな。シェリルに頼まれても。」
「………なんで?そもそも断る理由があるか?
あの子の王子妃教育が終わったら
俺は元の"放蕩息子"に戻るだけだし、
それなら専属護衛の職に就いた方がババアも喜ぶな。」
「………………………。」
「あの子は危なっかしいもんなぁ?
お前がして欲しくないことをして
お前が近づいて欲しくない部類の人間にも
何の疑いもなくついて行くようなタイプだし?」
口角をあげて笑うヴィンセントを、
リアムは眉間に皺を寄せて睨む。
だがヴィンセントの言うこともあながち間違いではない。
………彼女は危機感が薄い。
この先自分と一緒に他国への外遊に行くことになれば、
行事や宴席に呼ばれることも格段に増える。
そうなれば異国の歴史やその地の物に
関心をよせる彼女なら、………間違いなく話しかける。
それが女性であれ男性であれ、そんなことは気にしない。
"それでは向こうで………。"なんて誘われても、
微塵も疑わず二人っきりになりそうで怖い。
そう考えていたリアムの気持ちを見透かすように、
ヴィンセントは愉快そうに見ている。
「まぁあの子から"まだ"直接頼まれたワケじゃないし?
でも頼まれたら断れる自信ねぇなぁ?
可愛い可愛い教え子に、
今度からずっとそばで守ってもらえませんか?
………なーんて言われたら、
即答でオッケーの返事しちゃうわぁ。」
「…………テメェ。」
「あらやだぁ、そんな怖い顔して。
男としてもーちょっと
広い心を持った方がいいんじゃないのぉ?
あくまであの子と俺は教師と生徒、
護衛になったら主人と臣下の関係になる"だけ"よ?」
「…………胡散臭ぇんだよ。」
「ま、あの子が直接言ってきたら本気で考えるわ〜。
………楽しみだなぁ?」
そう言ってヴィンセントは去っていく。
………味方にすれば役に立つが、敵に回すと厄介な人間。
それがリアムから見たヴィンセントだ。
その男を、シェリルの護衛にするべきか…………
………ただ、アイツなら………
思案に耽りながらリアムは、
ヴィンセントが去っていた逆方向へと歩き始めた。




