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………ヴィー先生の何が気に食わないんだろう。
シェリルは用意された紅茶を飲みながら真剣に考える。
リアムに護衛の話をした翌日、
シェリルはアイリーンに誘われたお茶会に参加していた。
結局ヴィンセントの都合があわず、
今日そばについてくれた護衛は別の者だ。
「どうかされましたか?シェリル様。」
「!
い、いえ!………ちょっとだけ考え事を。」
「………リアム様と何かあったんですか?」
「!」
「昨夜お会いしたとき、
彼もなんだか"ご機嫌ななめ"でしたから。
仕事で何かあったのなら
バルド様もおっしゃるはずですけど何も言わなかったし、
ならばシェリル様関係かしら、と思って。」
「……………ははは。」
「あの方が不機嫌な表情をするのは
朝だけかと思ってましたけど、
あなたのことになると顔に出やすいみたいですね?」
「…………そんな大したことじゃないんです。
この先わたしが王子妃になった時、
専属の護衛をヴィー先生にお願いしたくて。
その話をしてからなんだか不機嫌になって………。」
「まぁ、ヴィンセント様に?」
「わたしが城で信頼できるのは
アイリーン様はもちろんなんですけど、
そんなにたくさんいるわけじゃないし………
常にそばで守ってくれるなら、
知ってる人がいいなぁって思ったんですけど。
………わたしのワガママだし、
ヴィー先生の気持ちも聞いてないですから。」
「不安になる気持ちはわかりますわ。
私もバルド様の婚約者になってしばらくして
こちらで生活するようになったんですけど、
やっぱり最初は心細かったですもの。
いくら国から侍女を連れて来ていたとはいえ、
過ごしていた部屋も、見ていた景色も、
すべてが変わってしまって………寂しくて。」
「……………………。」
「自分が好きでバルド様の婚約者になって
こちらに嫁ぐことを決めたのだから、
寂しいだなんてワガママ言っちゃいけないって
一人でこっそり泣いたりもしてたんですのよ?」
クスクスと昔を思い出して笑うアイリーンを、
シェリルは可愛らしい人だなぁと思う。
きっと彼女も、
いろんなことを乗り越えて今の立場を築いたのだろう。
王妃になるという重圧は、
王子妃になる予定の自分より遥かに大きかったはずだ。
「でも、そんな私に気づいて、
バルド様がいろいろと考えて、気遣ってくださって。
………ですからきっと、
リアム様もシェリル様のために、
いろいろと考えて動いてくださるはずです。
だってあちらがぜひにって
あなたを婚約者に選んだんですもの!
ワガママ言ったって罰は当たりませんわ。」
だから大丈夫。
そう言ってアイリーンはシェリルを励ます。
きっと自分は恵まれている。
アイリーンのように他国から来たわけでもない、
家族や友人にいつでも会える環境にいる。
多少、………いやかなりのだが、
執着心と重めの愛をぶつけてくる婚約者は、
たぶん最後には折れて、
自分のワガママを聞いてくれるだろう。
…………甘え過ぎかもしれない。
今の自分に与えられた環境に。
……………望んだワケではないのに?
そう思ったのは自分か、
それとも"彼女"だったのか。
シェリルは心の闇に蓋をして、再び紅茶に口をつけた。




