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あの子は僕のモノなのに。
ずっと一緒だと約束した相手は僕なのに。
どうして今もまた、あんな男に捕らわれているのだろう。
好きじゃないだろうに、
本当に愛しているのは僕のはずなのに。
また"あの時"みたいに、
閉じ込められてしまうかもしれないのに。
「………でも、今回は少し違うね。
…………手の届く場所に、キミはいる。」
自然と笑みがこぼれる。
捕まっているのなら、そこから連れ出せばいい。
そして今度こそ、彼女に告げるのだ。
"大丈夫。これからは僕が一緒にいるよ"………と。
ズキッと目の奥が痛んだ気がした。
………これもあの男のせいか。
自分の中に流れる"血"の記憶が、
あの時の痛みを忘れるなと警告している。
彼女を自分の手に連れ戻せ、と。
「…………待っていて。助けてあげるから。」
ひとり静かにつぶやいて、男はニヤリと笑った。
「アイリーン様と………?」
「はい。一緒にお茶しましょうって。」
"婚前旅行"という名の散々な旅から戻って数日後、
シェリルはリアムの執務室に来ている。
リアムも近頃は仕事が落ち着いているのか、
シェリルが突然訪問しても大概は執務室にいて
彼女が登城している時に彼の方から顔を出すこともある。
「………まぁいいんじゃない?
これから妃同士、
仲良くなっておいて損はないだろうし。」
「…………わたしはまだ妃じゃないです。」
「いずれ近いうちにそうなるでしょ?
…………まさかならないつもり?」
「そうは言ってません。
ただ、まだ妃の立場ではないって意味です。
………で、その時の護衛についてもらう方なんですけど
どうせいらないって言ってもダメって言われると思って、
それならこっちで指定させてもらえないかと思って。」
「は?」
「ヴィー先生にお願いしたいんです。」
「……………………………。」
「以前ヴィー先生のお母様と話をした時、
本当なら先生は
バルド様の専属騎士になるはずだったって聞いて………
それだけの実力がある方なら、
リアム様も文句はないんじゃないかと思って。」
「あるけど。」
「え?」
「なんでアイツなの?
王子妃教育の担当だけで十分でしょ?」
「で、でも!
王子妃になったら、
わたしには専属の騎士がつくんですよね?
………わたしはそれを、
ヴィー先生にお願いするつもりです。」
「!」
「城に登城するようになって、
いろんな人たちと話すようになりました。
その中で先生は………
わたしが信頼できる数少ない人間のうちの一人です。
今回のお茶会は急ですから別の方でもいいです、でも、
自分が王子妃になると確実に決まったら、
わたしから直接先生にお願いするつもりです。」
「…………よりにもよって。」
「え?なんて?」
リアムの小さなつぶやきは、シェリルには聞こえていない。
彼がなんて言ったのかはわからなかったが、
表情からするに賛成ではないことはわかる。
「………専属騎士のことは保留。
頭のどっかには入れといてあげるよ。」
「………どっかじゃなくて、
ちゃんとわかるところに置いといてください。」
ムッとぶすくれたような顔をするシェリルを見ながら、
リアムはいつもの微笑みを浮かべる。
…………よりにもよって。
一介の護衛なら何かあってもすぐに切り捨てればいいが、
ヴィンセントが相手だと話が違ってくる。
まがりなりにもアレは国王の従兄弟であり、
剣の腕前も右に出る者はいない程の実力の持ち主。
………ただ"束縛"を嫌う。
ゆえにシェリルの王子妃教育を引き受けた時は少し驚いた。
向こうは面白半分で請け負ったのだろうが、
今では真面目にその役目を務めている。
………間違いなく、シェリルはアレの"お気に入り"だ。
「………ほんと、シェリルは煽るのがうまいよね。」
「?!
………な、なんで怒ってるんですか?」
ギョッとした表情で自分を見つめるシェリルを
リアムはジトっとした目で見つめ返し、ため息をついた。




