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少し離れた場所にいた護衛や侍女たちにも、
シェリルの悲鳴が聞こえたのだろう。
何かあったのかとこちらに向かって来ようとするが、
それをリアムが"来るな"と視線だけで制する。
「いっ!?………っぎゃ?!痛たたっ!!」
突然自分の太腿に
何かが巻きついて締めつけられるような痛みが襲い、
シェリルはリアムに握られた手をパッと払いのける。
………すると。
「…………あ、れ?」
襲いかかってきていた痛みがスッと消えていく。
太腿にギリギリと締め付けられるような痛みを
たしかに感じていたのに。
「………どこが痛いの?」
「え?あ………太腿が…………。」
「へぇ………見せて。」
「はっ?えっ?ここで?」
「だって痛かったんでしょ?
虫とかに刺されたのかもしれないし。」
「だ、大丈夫です!もう痛くないですから!」
スカートの上から太腿をさするシェリルに、
リアムは一瞬、口元に笑みを浮かべる。
「…………噛んだところ?」
「!」
「おいで、シェリル。」
グイッと手を引っ張られ、
座っているリアムの腕の中に
すっぽりと収まるように座らされたシェリルは
首筋にあたる彼の吐息に体をビクっとさせる。
「………これなら、
後ろにいる人間に見られないよ?」
自分たちから少し離れた後ろにいる侍女達には、
リアムの背中しか見えないだろう。
だからといってこんなところで
太腿をさらけ出す勇気もない。
「リ、リアム様!
痛いところはあとで確認しますから………!」
「あぁ、恥ずかしいの?
…………じゃあ俺が見てあげる。」
「だっ………!!」
ダメです!!と、
咄嗟にスカートを押さえることには成功したが、
噛まれた右の太腿は残念ながらあらわになってしまう。
だが、そのことに恥ずかしさを感じるのではなく、
「…………な、んで。」
驚き、小さな疑問の声をシェリルは発する。
………どうして………ここにもあるの?
あらわになった右の太腿には、
巻きつくようにしてアザが浮かび上がっている。
それはまさに、
腕にある鎖のようなアザとまったく同じだった。
「…………俺が噛んだところ、か。」
「!!」
「ふはっ。
………それなら首も
もっと強く噛みつけばよかった。」
「ひっ………。」
リアムに首筋をするりと撫でられ、恐怖で身がすくむ。
あの痛みをまた味わうなんてとんでもない。
シェリルは首をそらして抵抗の意思をあらわす。
「リ、リアム様………
イヤですからね?痛かったんだからっ………
か、噛み付かないでっ……!!」
「イヤイヤ言われると逆に噛みたく………。」
「最低!!!」
「…………でもまぁ、
体中、噛み跡だらけじゃかわいそうだし。
………"その時"の気分によるかなぁ。」
「"その時"ってなに?!いつですか?!」
ギャアギャアと騒ぐシェリルの声と、
そんな彼女を抱え込んで微笑むリアムの横顔を、
後ろで見守っていた者たちが
「………仲直りしたんでしょうか。」
「………そうなんじゃないか?喋ってるし。」
ホッと胸をなでおろしていたのを、二人は知らない。




