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「…………リアム様、
どうしてあんなに不機嫌だったんですか?」
「………………………。」
声をかけてきた侍女の言葉を無視して、
シェリルは横を向き、窓から見える外の景色を眺める。
………あれはわたし、悪くない。
今から数時間ほど前。
自分の身支度を手伝いに来てくれた侍女たちに
"大丈夫だから"と言って退出させたシェリルは、
まだ眠っているリアムを起こすためベットに向かい、
彼に声をかけ、体を揺さぶってみた。
………そう、ここまではよかった。
「リア………。」
「…………なんで着替えてるの。」
まだ眠そうな目を薄らと開け、
それはもう不機嫌そうな声でつぶやいた彼は、
そのままシェリルをベットへと引きずり込んだ。
「…………跡、確認させて。」
「え?………い、いやです!」
「どうして?
ちゃんとついたか確認しないと。
………ねぇ、首にもつけたよね?
なんで綺麗に隠れちゃってるの?」
「な、なんでって………
あんな状態で外に出たら、みんなに見られっ………!」
「見せるためにつけたのに?
………じゃあこっちは?」
そう言ってリアムは躊躇することなく
シェリルの履いているスカートをまくし上げ、
自分がつけた太腿の噛み跡を確認する。
「なっ、なんっ………?!」
「…………ん、ちゃんとついてる。」
ボソッとつぶやいて、リアムは満足そうに微笑む。
とっさにスカートを押さえ、
なんとか下着までは見られずに済んだシェリルだったが、
微笑んでいるリアムの顔を見て、ワナワナと震え始める。
「シェリル、ガーターつけるタイプ…………。」
「……………!!」
その言葉で何かがプツリと切れた。
痛い思いをして、恥ずかしい思いもしたのに、
この男は謝りもせず変なことばかり言う。
そう思ったシェリルの怒りは頂点に達し、
彼の頬に平手打ちを食らわせた。結構全力で。
その後、部屋を飛び出してから
馬車で移動中の現在に至るまで、
シェリルはリアムと口をきいてもいないし、
目も合わせていない。
「いったい何があったのかは知りませんが、
今日はこのあと、
湖畔の近くでごゆっくりなされるんですよね?
………二人っきりで。」
「なのに馬車も別々に乗ってらっしゃるし、
どうするんですか?このサンドイッチ。
せっかく現地で調達してきたのに…………。」
「………それは食べる。
でも"殿下"とは一緒に食べたくない。」
名前を口にするのも嫌なぐらい、
シェリルのリアムへの怒りは収まらない。
そんな様子の彼女を見て、侍女たちは顔を見合わせる。
短期間とはいえ王弟とその婚約者の日常を見てきたが、
ここまで彼女が怒っているのは初めて見た。
普段リアムの言動に恥ずかしがったり拗ねる事はあっても、
ここまでの怒りをあらわにする事はなかった。
だからなおさら、何があったのかと気になる。
「………今ごろ向こうの馬車は氷点下でしょうね。」
「………そうかもしれないわね。」
ボソボソと小声でささやき合いながら、
侍女達はシェリルを見つめるのだった。




