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鏡の前に座るシェリルは、
顔を少し赤くしながらもその出来栄えに満足していた。
「………それにしても、
派手につけられちゃいましたね、シェリル様。」
「リアム様には少し控えていただくように、
私どもからも伝えておきますわね。」
「…………いいからほっといて。」
鏡に映し出されているシェリルの首筋には、
どこからどう見ても赤い痕など無いように見える。
………実は、
今回の"婚前旅行"に行くにあたり、
シェリルはヴィンセントにお願いしておいた
アザをも隠すというクリームを持参していた。
もちろん。リアムに痕をつけられるなどと
そんなことはこれっぽっちも考えていなかったのだが、
近頃少し暑くなってきた為、
もしかすると上着を脱いで半袖になるかもしれないと
そちらを予想して持ってきていたのだ。
ちなみに普段、
城にきた際にはなにかと世話をしてくれる侍女達は、
シェリルの腕に鎖のようなアザがあるのを知っている。
なので彼女達もまさか持ってきたクリームを
首筋に塗ることになるとは思ってもいなかったはずだ。
「よほどの事がない限りは、これで大丈夫かと思います。」
「うん、ありがと!
これでしばらく………
ねぇっ!これってどれぐらいで消えるの?!」
「まぁ、人それぞれでしょうか………
シェリル様は色白ですから目立ちますし、
その、首筋にあったのは………噛み跡ですよね?」
「噛みっ……!?」
「リアム様って、
あんな優しそうな顔してドSだったんですねぇ。
これから大変ですよ、シェリル様。」
「た、大変?!」
「だって自分の婚約者の首に
噛み跡つけるような性癖の持ち主って………。」
「………………………。」
実を言えば、噛まれたのは首筋だけじゃない。
………太腿にもガブリと噛み付かれた。思いっきり。
「ヴィンセント様から聞いてはいましたけど、
まさに執着心の塊みたいな方ですわね………
シェリル様がご自分のものだと、
皆に見せつけたいのではないですか?」
「………そ、そんな。」
そんな理由で人に噛み付かないで欲しい。
太腿を噛まれた時は本当に痛くて、
少しの間暴れたぐらいなのに………
まぁそれで事は終わらず、続行されたのだが。
「なのに普段はシェリル様を
ベッタベタに甘やかすんですから、
まさにDV男ですね!!」
「………………………。」
笑えない。真実すぎて。
いまだ隣室で眠るリアムの顔を思い出して、
シェリルは身震いをする。
………昨夜も、太腿を噛みつかれ痛さで暴れる自分を
リアムは押さえつけて離さなかった。
それどころか彼は自分の泣き顔を見つめ、
うっすらと笑みを浮かべていた。
「リアム様はどうなされますか?
付き添いの者か、護衛の者に声をかけさせますか?」
「………ううん。わたしが起こすからいいよ。」
チラリとリアムが眠る部屋を見ながら、
シェリルは小さなため息をついた。
何事もなく起きてくれますように、そう願いながら。




