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「………シェリル。
何をそんなに警戒してるの?」
「えっ?!………な、なにって。」
夜になり宴席がはじまると、
シェリルはリアムの横でいつものごとく、
顔に笑顔を貼り付けて他の客人たちに挨拶をする。
………大丈夫。
たとえどこからともなく女性が近づいてきても、
わたしは堂々とこの人の横にいればいい。
そう決意しながらも、
やはり警戒心を捨て切れないシェリルにリアムは、
不思議そうな顔でそう尋ねてきた。
………人の気も知らないで。
少し挙動不審になりながらも、
シェリルは何も警戒なんてしていないと平常心を装う。
「べつに………警戒なんて。」
「さっきから挨拶されるたびに
ビクッてなってるよね?どうして?」
「だ、だから!なんでもないですってば!
リアム様の思い過ごしです!」
「…………そう?ならいいんだけど。」
そう言ってリアムは、
シェリルの耳横あたりから結われている
ゆるめの三つ編みを、そっと手で持ち上げる。
「リ、リアム様っ?」
「…………鎖みたいだね、これ。」
「!!」
「ねぇシェリル。もう部屋に戻ろっか?
なんだかずっとそわそわしてるみたいだし、
食事もさっきそこで何か食べてたよね?」
シェリルの三つ編みを手の中でいじりながら、
リアムがテーブルの上に用意された食事をチラリと見る。
今日の宴席は自由に飲食ができる立食式になっていて、
シェリルも他の客人とたわいもない会話をしつつ、
いろいろな料理を少しずつ口にしていた。
「えっ?………じゃぁ、
もう一切れだけそこにあるパイを食べてもいいですか?
それを食べ終わったら部屋に戻りますから。」
「………べつにいいけど、
さっきも食べてたよね?そのパイ。」
「だって美味しいんですよ!そのミートパイ。
わたしの好きな食べ物のひとつですし。」
そう言ってシェリルは、
テーブルの上に並べられたミートパイをひとつ取り、
皿の上にのせる。
ちなみにミートパイはもちろんだが、
シェリルは"パイ"と名称につくものに弱い。
ミートパイ、ポットパイ、アップルパイ………
それらが用意されているとあれば、
どんなに美味しいと評判の料理よりも
真っ先にそちらを口にしてしまうほどの好きっぷりだ。
「………んふふ。おいしっ。」
「そんなに好きなら、城に戻ったら作ってもらう?」
「とんでもない。そんなワガママ言えないです。
………それに一番大好きなミートパイは、
お城じゃなくてほかの所で作ってもらえますから。」
そう言ってパイを食べ終わると、
シェリルは満足気にリアムの方を見て微笑む。
今食べたミートパイも美味しかったけどでもやっぱり一番は
ジネットの屋敷で作ってもらえるミートパイだ。
国に帰ったらジネットに頼んでまた用意してもらおう。
「それじゃあ部屋に戻ろうか。
………大丈夫?お腹いっぱいで動けなくない?」
「リアム様、わたし子供じゃないんです。
動けなくなるほど食べてなんかいないし、
たとえそうだとしても抱っこしてなんて頼みません。
………だから、その手はしまってください。」
自分に向かって両手を小さく出していたリアムに、
シェリルはピシャリと言ってのける。
「お腹いっぱいじゃなくても抱っこしてあげるよ?
………もちろんお姫様抱っこで。」
「絶対に嫌です。
リアム様、なんだか最近ちょっと………!」
「話なら部屋で聞くよ。
もちろん布団の中ではだ………。」
「ひとりで寝てください。」
おかしな発言を遮り、
シェリルはスッとリアムから距離をとり歩き出す。
………今日はソファで寝ようかな。と、
叶うことのない願いを頭の中で考えながら。




