潜入、そして再会
翌朝、調査隊を安全な場所まで送り届けた後、ミーニャが持っていたリィネの「魔導結晶」が、かつてないほど激しく明滅しました。
「……シュウ。……リィネの声。……泣いてる」
結晶から聞こえてきたのは、雑音混じりのリィネの悲痛な叫びでした。
「シュウ様……っ、来ないで……! 私は……大丈夫ですから……!」
リィネの危機。
シュウは迷わず、かつての因縁の地、レムリアへと引き返すことを決意します。
リィネの危機を知り、シュウの瞳に静かな火が灯りました。
もはや、ただ逃げるだけの時期は終わった。大切な居場所を守るため、シュウは再びレムリアの門をくぐります。
「いい、シュウ。あんたのその威圧感はステータスの高さから漏れ出してるの。魔法で無理やり抑え込むわよ」
エレインが呪文を唱えると、シュウの全身を淡い光が包みました。
現在のステータス 9,620。その膨大な魔力を何重もの膜で覆い隠し、見た目だけは「どこにでもいる、少し目付きの悪い新人冒険者」へと変貌させます。
1. 懐かしきレムリアの門
「……新人、シュウだ。登録証を確認してくれ」
かつては測定不能で深紅に輝いた水晶も、エレインの偽装魔法の前では大人しく、平均的な「Dランク」程度の輝きしか放ちません。門番は鼻で笑い、シュウを通しました。
「へっ、また一人、夢見がちなガキが来たか。死なないうちに帰んな」
その言葉を背に、シュウは静かに街へと潜入します。傍らには、フードを深く被ったミーニャとエレイン。二人の美貌も、今は魔法で「地味な村娘」程度に抑えられていました。
2. リィネの窮地
ギルド『レムリア』の裏通り。そこには「異端審問」の名目でリィネを拘束し、シュウを誘い出そうとする教会の執行官たちがたむろしていました。
「おい、例の魔物喰いのガキはまだ現れないのか? この女の爪でも剥いでやれば、すぐに泣き喚いて出てくるだろうにな」
下卑た笑い声を上げる執行官。その中心に、鎖で繋がれ、床に膝をつかされているリィネの姿がありました。彼女の頬には薄い切り傷があり、その瞳には絶望の色が滲んでいます。
「……シュウ様……来ないで……。私のことなんて……」
3. 「新人」の乱入
「……おい、そこをどけ。リィネに触るな」
路地裏に、一人の少年が立っていました。
執行官たちは、現れた「パッとしない新人」を見て、腹を抱えて笑い転げます。
「あぁん? なんだテメェ。ギルドの使いっ走りか? 引っ込んでろ、ガキ!」
一人が剣を抜き、シュウの肩を小突こうとした、その瞬間。
シュウの周囲で、パキパキと「空間が軋む音」が鳴り響きました。エレインの偽装魔法が、内側から溢れ出す圧倒的なステータスに耐えきれず、ひび割れ始めたのです。
4. 隠しきれない「覇気」
「……言ったはずだ。触るな、と」
ドォォォォォン……!
シュウが一歩踏み出しただけで、周囲の石畳がクレーター状に陥没しました。
「新人」に見えていたシュウの姿が、一瞬で「深淵の捕食者」へと書き換わります。
「な、なんだ……この圧は!? ステータス偽装か!? 貴様、まさか……!」
執行官たちが恐怖で腰を抜かす中、シュウは無造作に歩み寄り、リィネを縛る特殊合金の鎖を「素手で」飴細工のように引き千切りました。
「……遅くなって済まない、リィネ。もう大丈夫だ」
「……シュウ、様……っ」
リィネがシュウの胸に飛び込み、泣きじゃくります。
その様子を、物陰から見ていたエレインがため息をつきました。
「……全く。地味に潜入するって言ったのは誰よ。これじゃあ、街中の教会勢力が集まってきちゃうじゃない」
「……いい。……シュウ、怒ってる。……全部、なぎ倒せばいい」
ミーニャが双剣を抜き、不敵に微笑みます。
シュウのステータスは、怒りと共にさらに跳ね上がり、ついに10,000の壁を突破しようとしていました。




