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吹雪の合間の食卓

「……助けていただいたこと、心より感謝いたします。私は隣国クロイツのフィオナ。……失礼ですが、あなた様のような御方が、なぜこのような死地に?」

 フィオナ王女が、震える足を叱咤して立ち上がり、シュウを見つめる。彼女の目には、シュウの背後に控えるエレイン(ステータス3,800)とミーニャ(ステータス4,000)という、一国の騎士団長クラスの二人が、当たり前のように彼を支えている異様な光景が映っていた。

「……腹が減ってるなら、来い。丁度、鹿肉が煮えたところだ。立ち話は凍えるぞ」

 シュウは王女の問いに答えることもなく、ただぶっきらぼうにテントを指差した。

 テントの中で、差し出された『氷晶の剛角鹿』のシチュー。フィオナ王女は、震える手で木皿を受け取り、一口そのスープを啜った。

「……っ、温かい……。それに、なんて滋味深いお味……」

 それは魔法のような劇的な回復ではない。しかし、丁寧に灰汁を取り、岩塩と香草で魔物の臭みを除いたその味は、死の淵にいた彼女たちの凍えた胃袋を優しく解きほぐし、生きる活力を呼び起こした。

「……あなた様は、この魔物を『ただの食材』として扱っておられるのですね。我が国の精鋭ですら、仕留めるのに多大な犠牲を払うというのに」

「……俺にとっては、生きるための糧だ。それ以上の意味はない、王女様」

 シュウは淡々と自分の分の肉を噛み締める。

【ステータスが 120.00 上昇しました】

 その横顔を見たフィオナは、確信した。目の前の少年は、権力や名声といった世俗の価値観ではなく、もっと根源的な「強さ」という理の中で生きているのだと。

「シュウ様……。もし、あなたがこの地を去ることがあれば、ぜひ我が国へお越しください。あなたのような……その、真っ直ぐな強さを持つ方を、私はもっと知りたい」

 フィオナが少し頬を染め、真っ直ぐにシュウを見つめる。それを見たエレインが、少し面白くなさそうにシュウの隣へ座り込んだ。

「ちょっと、王女様。この男、食べる以外のことには本当に疎いんだから。勧誘しても無駄よ?」

「……シュウ、私の。……あげない」

 ミーニャもシュウの袖を掴み、王女を牽制するように小さく喉を鳴らす。

 図らずも隣国の王女にまで「憧れの種」を植え付けてしまったシュウだが、本人は鍋の底に残ったスープの行方を気にしているだけだった。

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