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パーティーを追い出されたのでしばらく冒険はお休み  作者: 散散満
伝令人、学校へ

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83:入学準備

「魔法学校の知り合いってアシュリーちゃんだったわよね」


 夜が明けてもまだ続いている俺を魔法学校へと押し込む打合せの中でコーリーが確認してきた。


「『アシュリーちゃん』って俺よりも年上だったはずだが、まあいろいろと世話になってるな」


「まあそうよねえ。わたしがまだ教師やってたときの教え子の一人だし。もう30年以上前かしら」


 女性に年齢を訊くわけにはいかないから気にしないようにしていたが結構な年齢であったようだ。何しろある程度以上腕のいい魔法使いは大抵が老化抑制の魔法を使っているので、アシュリーも見た目ではまだ妙齢の美人という外見をしている。コーリーなどは外見だけなら幼い少女だ。魔法使いの間では『老化抑制呪文を自力で開発してこそ真の上級者』という共通認識があるそうなのでコーリーは今の外見年齢である少女時代に老化抑制呪文を完成させた天才魔法使いということになる。なおこのことを教えてくれた元パーティーメンバーの魔法使いマユはまだ完成には至らず外見のままの年齢であるらしい。


「年齢の話はともかくアシュリーとの基本はこいつに関する経過報告だ。前にも見せただろ」


 そう言って携帯投石紐(スリングショット)を取り出して机に置く。


「そうそう、ちょっと前の狩りでも使ってたわよね。その偶然できたっていう伸び縮みする紐に関する解析と再現が研究内容だったわよね」


「俺がやってるのはその紐の実用例の報告だな。オマケで弾に魔力を乗せる魔法円の点検(メンテ)もしてもらってる。普通に狩りで使う分には大した影響はないが幽霊(ゴースト)系の魔物にも効果が出るようになるんで単独(ソロ)で行動してるとちょっと安心できる」


「そうだったわね。狩りで見てたときも魔力がちょっと動いてるのがわかって面白かったわ。もっとよく見ていいかしら」


 コーリーはそう言って携帯投石紐に手を伸ばして紐の中心の受け布に目を凝らし、短く呪文を唱えて空中に魔法円を浮かび上がらせるとそれを拡大してじっくりと観察する。


「以前と変わらずスッキリした魔法円かいてるわね。わたしとしてはもうちょっと装飾増やして威力上げてもいいと思うんだけど、これだと使う魔力も少ないから魔法使い以外が使うと考えたら正解かもね。うん、わかりやすくていいわ」


「俺にはよくわからないがすごいのか?」


「すごくはないわね。むしろ普通よ。でも逆にここまで普通にできる人もなかなかいないわね。こういうのも結構個人のクセが出ちゃうのよ」


 それを聞いて俺は首をかしげる。


「それで結局のところアシュリーの評価はどうなるんだ?」


「実地で動く魔法使いとしては並、研究者や教育者としては優秀ってとこね。当人に変なクセが少ないから教え子が偏った魔法使いになることも少ないでしょ」


 それを聞いた俺の脳裏にはアシュリーの教え子の一人が浮かぶ。


「マユは普通に魔法で攻撃するよりも補助呪文を使う方が好みだったが。あとはもっといろいろやりたいからと仕官の申し出を断って冒険者続けたりしてるな」


 俺の言葉にコーリーは天井を見上げて言う。


「あちゃー、研究者のほうに寄っちゃったか。でもまあ、アシュリーが教師の方に向いてるってのは間違いないと思うわよ。新しいことを試すのは研究者にも向いてるし」


「つまり『大人になってから魔法を習得するにはどのように教育するか』という俺を使った実験にも向いてるっていうことか」


 俺がそういうとコーリーはにんまりと笑う。


「知り合いに適任者がいたのは好都合よね。そういうわけだからアシュリーをチャックの担当教師にするために動くわよ」


「やっと方針が決まったか。じゃあ俺はもう帰っていいかな」


 俺が席を立ちかけるとコーリーが引き留めてきた。


「根回しが済んだらチャックにも動いてもらいたいからもう少し待ってて。とりあえず今晩の晩ご飯作ってくれるかしら」


「それは構わないが、今からすぐに動くというとまた王都のザカリーさんに迷惑かけるつもりか」


「あいつには互いに貸しも借りもたくさんあるからいいのよ。この間まではわたしが結構無理したんだからちょっとは無理を聞いてもらわなきゃ」


 そう言ってコーリーが準備のために部屋を出て行くのを見ながら俺は思った。『貸しも借りもあるってのはもう相殺されてるんじゃないか』と。


◆――◆――◆


「準備できたわよー」


 コーリーが呼びに来たのは翌日の午前中のことだった。ちなみに今日の朝食も俺が二人分作っている。


「あいかわらずザカリーさんは仕事が早いな」


 そう言いながらコーリーが持ってきた紙を手に取る。例によって転送魔法円で王都から送られてきたのだろうが、羊皮紙でもない植物製の紙であるあたりは気合いの入り方が違うのを感じさせる。それに目を通した俺は最後の署名を見て一瞬思考が止まる。


「……なあ、この署名って俺もよく知ってる名前なんだが」


「あ、さすがにわかる? ちょうど面会の都合がついたから名誉理事長にちょっとお願いしたのよね」


「王太子殿下じゃないか。いや、俺をどういうコネで学校に行かせる気だよ。分不相応なんてもんじゃねーぞ」


「まあそのへんは学園でも上層部しか知らされないはずだから大丈夫よ。それはともかく仕事もお願いね」


 コーリーはそう言って別の紙を一枚出してくる。これは俺もよく見るやつだ。


伝令人(メッセンジャー)のチャックへの指名依頼よ。この書類をヤダイの学園まで届けてね」

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