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パーティーを追い出されたのでしばらく冒険はお休み  作者: 散散満
伝令人、田舎へ

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77:山賊襲来

「思ったよりも何事もないね」


 今回の護衛仕事の雇い主であるカルムは冒険者に扮しての移動にも慣れてきて口調もだいぶくだけてきた。何事もないというのがちょっと残念という雰囲気であるのは冒険物語が好きな少年の態度としてはまあ仕方あるまい。


「油断は禁物ですよ。途中の村で聞いた話でも最近は治安が悪いっていうことでしたから」


 侍女のジゼルがたしなめている。実は俺の『気配感知』では何度も様子を伺ってくる人間の集団が引っかかっているが、ある程度で引き返していくので過度に不安がらせることもないかと黙っている。なお野生動物はおそらくそいつらがウロウロしているせいで少ないまである。


「ジゼルのいう通りだな。こっちは人数も半端だからかえって警戒されているのかもしれない」


「そうだね。気をつけるよ」


 カルムはそう答えるが特に行動が変わったりする様子はない。まあ経験がない人間にはどう警戒すればいいのかもよくわからないだろう。ちなみにジゼルの方もカルムのお付きだったためか行動には大きな差はないが周囲の気配を探るのだけはちょっとできるようだ。これは普段から屋敷の警備をしている経験だろうか。


「まあ確かにせっかくだから普段経験しないこともしたいよな。街道からそれほど離れず鳥でも狩れる機会があったら獲っていくか」


◆ーー◆ーー◆


 二往復めであるし街道の広場に置かれた伝令人(メッセンジャー)秘伝の目印からアマバ手前で狩場を見つけて短弓で鳥を狩るのはそれほど難しいことではなかった。


「お昼ですがここで食事にしましょう。串焼きにしようと思いますので手頃な枝を採っていただけますか」


「わかった。任せろ」


 カルムが嬉しそうにそう言って広場の端まで行きナイフを取り出して樹の枝を落として串を作りジゼルに渡していく。俺はそれを横目で見ながら火を(おこ)す。火がしっかり強くなる頃にはもう鳥肉の準備もできて焼きながら食べ始めた。ジゼルがなんだかんだと世話を焼くのは見ていて微笑ましいものがあるが、一方で俺の『気配感知』には嫌な雰囲気が引っかかってきた。俺は平静を装ったまま二人に声をかける。


「どうやら面倒な連中が近づいてきているようだ。まだ距離はあるがそいつを食べ終わったら警戒してくれ」


 そういうと二人の顔に緊張が走る。ジゼルはすぐに武器を確認して応戦する気が強く見え、カルムの方はただ慌てていて不安のほうが勝っているようだ。そしてそれほど時間を置かずに林の中から5人のいかにもという感じの山賊が現れる。


「よう、そこの坊っちゃんは貴族様だろ。生かして捕らえれば身代金ががっぽり取れるっていうんでな。痛い目にあいたくなければおとなしく渡してもらえねえかな」


「なんのことかな。俺達はただの冒険者だが」


「とぼけんなよ。聞いてた話より人数多いんでしばらく見てたが、そっちのお嬢ちゃんの態度はどう見ても御主人様に使える侍女だろ」


 うん、まあ冒険者仲間の接し方じゃあないなとは思ってた。


「わかったか、じゃあおとなしく……」


「『爆裂火球』っ!」


 いきなり魔法を放ったのはジゼルだった。なにやら小声でブツブツ言っているのは聞こえていたが呪文の詠唱だったようだ。


「ぐわっ!」


 先頭に立って話していた山賊が爆風でふっとばされる。それでできた一瞬の隙に俺は短弓を構え『気配感知』で捉えていた林の中の伏兵二人に向けて連続して矢を放つ。


「くそっ、わかるのかよっ?」


 少なくとも一本は外れたようで林から山賊が一人走り出て叫ぶ。


「『火球』」


 叫んだ男に気を取られてそちらを向いてしまった山賊に向かってジゼルが魔法を飛ばし、頭部に命中して打ち倒す。あれは詠唱時間は短い代わりに威力は落ちるものだったはずだが急所に当たれば問題ない。


「距離を取るな。突っ込めっ」


 こちらが遠距離主体と見た山賊たちが距離を詰めてくるのに合わせて俺も短剣(ショートソード)とナイフを抜く。


「右後ろ、木の陰にあと一人!」


 『気配感知』で見つけていた伏兵の情報を伝えながら構え、左からの攻撃をナイフで受け流し、右の相手の胴に短剣で一撃。皮鎧は着込んでいたがドワーフの親方が気合を入れて鍛えた短剣は十分に深く切り込んだ。続けて受け流して体勢を崩していた相手に蹴りを入れて転ばせる。


「えいっ!」


 前から来ていたもう一人はカルムが一閃して倒していた。


「へえ、なかなかやるじゃないか」


 そう声をかけたがカルムの顔は蒼白だった。


「いざというときのために稽古はしていましたが、実際に人を斬ったのは初めてです」


 倒した相手をまだ睨みながらそう言うが声も震えている。


「後ろの方、出てきていただけますか」


 ジゼルの方を見ると右手の上に火球を浮かべながら林に向かって話しかけていた。それに応じて山賊の一人が両手を上げながら出てくる。


「わかった。降参だ。こんな強いやつがいるなんて聞いてないぞ」


 武器を捨てさせて地面に伏せるよう命じ、後ろ手に縛り上げてから尋問する。


「誰かに俺達のことを聞いたのか?」


「誰だかは知らんが『もうすぐここを貴族の少年と連れの女が通るはずだ。そいつらを生け捕りにすれば高額の身代金が手に入る』って言われてな。お前らは3人だからしばらく様子を見たが間違いないだろうと襲ったらこのザマだ。お嬢ちゃんも魔法を使うし伝令人がこんなにできるなんて聞いてないぞ」


 山賊の生き残りはベラベラと喋ったが肝心なことは聞けなかった。焚き付けられはしたが依頼されたというわけでもないらしい。倒した相手はそこに放置し、こいつは次の村で役人に突き出した。

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