第12節『静かな夜』
どうも、もんたです。
お待たせしました。
それでは、どうぞ。
「やっぱり、私あなたのことが好きなの。」
「えっと…」
「いいの。聞いて?このお休みの期間でそう思ったのよ。きっかけは私が悪かったから…というのがもやっとしたのもあるけど、出会って半年一緒に過ごした日を思い返して、そう思ったの。」
「そう…」
「そ、それで、今夜はね?答えをちゃんと聞きたいなって思って。」
「え?」
「女の子がこんなに勇気を振り絞ったんだから、男の子からもちゃんとした答えがききたいわ。」
「えぇ…」
「答えてくれるまで部屋に戻らないからね!イエスかノーよ!」
「ほんとに?」
「勿論本当。あ、ちなみに。」
「まだあるの?」
「答えがどっちであっても最低でも卒業までは従者としていてもらうから。」
「そうなの?」
「そうよ。さぁ、マルク、答えて!」
言い切ったソラリアさんはカップの残りを一気に飲み干した。
一息ついたあとじっとこちらを見つめる。
頬はミルクのせいか照れのせいか赤く染まって…
これは本当に答えないと帰らないんだろうなぁ…
どうしたらいいんだろう。
(別にいいじゃない。)
デフィー?
(マルクはソラリアのこと、嫌いなの?)
まさか。
(じゃあ答えはイエスね!)
いや、うん、そうなんだけど…
(細かい男は嫌われるのよ?)
え?
(今マルクは自分がソラリアと付き合ったら~とか考えてるでしょ?)
そりゃそうだよ。
(将来は問題になるかもね。でも、今は関係ないわ。)
そんなこと…
(あるわよ。彼女だって貴族の子どもなんだし先のことはマルクよりもきっともっとちゃんと考えてるもの。)
だったら…
(だから、今しか好きに出来ないの。)
!
(先のことだからわからないけど、将来結婚する相手が彼女が好きだと思える人かわからないでしょ?今、なの。今好きな人と一緒にいれるのは今しかないの。)
…
(その「今」のために彼女は勇気を出したのだけど、マルクはよくわからない「先」のせいで困ってる。)
…うん。
(先のことなんてその時に考えればいいの。「今」は今だけよ!わかった!?)
わかった。わかったよ。
(じゃあ早く返事して!女の子を待たせるなんて男の風上にもおけないわよ!)
はいはい。……ねぇ、デフィー。
(まだ何かあるの?)
ちがうよ。ありがとう。
(…ふふ。また時間もらうわね。)
「ソラリア様…。いや、ソラリア。」
「っ!…はい。」
「僕も…ソラリアが好きだ。」
「そう…」
「うん。僕が守るよ。必ず。」
ソラリアは嬉しそうに顔をあげて、そのまま泣き出してしまった。
立ち上がってそばに駆け寄ると、ぽすっと僕の胸に頭を預けた。
「ど、どうしたの?」
「ち、違うの。…ぐすっ。嬉しくて…」
「そ、そっか…」
どう声をかけたらいいかわからずに、泣き声が落ち着くまでそのまま。
少しすると声も聞こえなくなり、代わりに赤くなった目で僕の方をにらみつけた。
「な、なに…?」
「女の子が泣いてるんだから、あ、頭を撫でるとか…だ、だ、抱きしめ、るとか…」
「い、いや…えっと…」
「いくじなし…」
「えぇ…」
抗議するようにポスポスと僕の肩を叩きながら、また顔を胸に埋める。
これって頭を撫でろってことなのかな?
もやもやしながらもやらなきゃいけない気がして左手をゆっくり近づけ――
「あ~もうじれったいわ!!」
「ちょっとマリー!?」
「「!!??」」
大きな声とドアの開く音が静かな部屋に響いた。
音のした方を見ると胸の前で腕を組んでちょっと起こった様子のマリアンヌさんが仁王立ちをしていた。
その横では困ったように頬をかいたシャンドラさんと慌てているメイリーンさん、そして静かにセバスさんが立っていた。
服がぎゅっと引っ張られる感じがしたのでソラリアさんの方を見ると、顔を上げてぷるぷると震えている。
「お、お母様…?それにお父様まで…」
「メイリーンさんにセバスさんも…なんでそんなところに…」
「なんでじゃありません!!」
「「ひっ!!」」
初めてマリアンヌさんの大声を聞いた気がする。
「いいですか!そもそも――「まぁ落ち着いて、マリー。」…あなた。」
「シャンドラ様…?」
「遅い時間にごめんね、二人とも。いや、その前に聞き耳を立ててごめんってところなんだけど、それは一旦脇におかせてくれ。」
「…」
「あ、はい。」
「マリー、とりあえず細かい話は次のお休みにしよう。せっかくだからマルク君の保護者も呼んで、ね。」
「あら、それは良い提案だわ!」
「えっ!?」
「とっても大事な話だからね。ゆっくり落ち着いてしないといけない。さぁさぁお邪魔虫は撤収だよ。2人は明日から授業なんだからね。」
軽く手をたたく音に合わせて大人組がそれぞれ散っていく。
残ったシャンドラさんは僕の部屋の扉を閉める前に僕の顔を見つめて言った。
「あ、マルク君、ソラリア。」
「なんですか…お父様。」
「な、なんでしょうか…」
「ソラリア、悪かったって。そんなに怒らないでよ。この屋敷、壁は分厚いし全然イチャイチャしてもらって構わないんだけど、初めては翌日が休みの日をおススメするよ。」
「ちょっ!?」
「えっ?…はっ!」
シャンドラさんのご機嫌な笑い声が廊下に響くのを聞きながら、僕たちは完全に固まっていた。
「あ、あの…?」
「なに…?」
「これは、と、取り合えず正式にお付き合いが認められた、ということなのでしょうか?」
「た、多分…。最後のは、そういう意味だと思うし。」
「さ、最後のって…」
ソラリアはシャンドラさんの去り際の台詞を思い出して顔を真っ赤に染めた。
いや、僕も恥ずかしいんだけど…
「マルクは、わ、私とそういうことをしたい、と思うの…?」
「そ、そりゃ僕も男だし…」
「そ、そう…」
「う、うん…」
「…」
「…」
「…き、キスなら…」
「えっ…」
「ち、違うの!マルクとそういうことをしたくないとかじゃなくて、私もしたいなって思うんだけど…。あっ、い、今のなし!!今の無しね!聞かなかったことにして!!」
「ちょ、ちょっと、落ち着いてよ。大丈夫だから。」
「ご、ごめんなさい…」
ついグリムたちを撫でていた時のように自然に手が動いちゃった。
ただ効果はあったのか、しだいに呼吸が静かになっていった。
「い、いきなりは恥ずかしいから、ね?あ、明日もあるし、今日は…」
「そ、そうだね。ゆ、ゆっくり、ね。」
「うん…」
ふぅ、と深呼吸をした後、静かに顔を上げた。
閉じた瞼は緊張から時折、ピクリと動いてる。
肩に手を添えるとひと際大きく揺れた。
マルクとソラリアの顔がゆっくりとその距離を縮めてゆく。
二人の静かな部屋に聞こえるのは鳥の鳴き声だけ。
お読みいただきありがとうございます。
最近、色々と自粛自粛ですね…
そんなこと気にせず、週末外で歩いてます。
マスクはしていますが…( ゜Д゜)
イチゴ、食べに行ってきます




