第11節『思いを』
どうも、もんたです。
お待たせしました。
それでは、どうぞ。
「まぁまぁ、奥様。落ち着いてくださいませ。」
「あら、セバス。あなたは反対なの?」
「恐れながら、今はまだ学園に通うことを優先しても良いのではないかと思います。」
「そうかしら。」
「はい。幼少期からの友人というのは大人になっても大切なつながりでございます。既に数名友人もできたと言っておりますし、今は人とのつながりを学ぶこの機会を優先しても良いかと。」
「それならお店をやった方が貴族とか商会とか繋がりが出来るんじゃないかしら。」
「それは繋がりというより、伝手だね?」
「旦那様のおっしゃる通りでございます。確かにそういう繋がりも貴重とは思いますが、相手はみなマルクよりも一回り二回り上の人間となるでしょう。同世代の友人を作るのは今しかないかと。奥様も旦那様も盟友、悪友問わず大切になさっておりますし、お嬢様はもちろんマルクにもそういった関係をもてる相手とつながりを持ってほしいと考えます。のちのち店をやるにも助けになるでしょう。」
「セバスの言うとおりね!ちょっと急ぎすぎたわ。ごめんなさいマルク君。」
「い、いえ。お店はやりたいと思っていたので、まずは学園を頑張ります。」
「うんうん。話がまとまったようでなによりだ。少し時間も取りすぎてしまったし、今日はここでお開きにしよう。セバスは素材と薬の管理を頼む。マルク君、疲れているのにすまなかったね。ゆっくり休んでくれ。」
「わかりました。それでは失礼します。」
「うん。おやすみ。」
――コンコン
部屋に戻って明日からの授業用に荷物をまとめていると、ドアがノックされた。
そこそこ遅い時間なのに珍しい。
「はい。開いています。」
「入りますね。」
「ソラリア様!?」
ドアを控えめに開けて入ってきたのはパジャマに着替えたソラリアさんだった。
その後ろからメイリーンさんがついてきてニコニコと笑っている。
「あの、えっと?こんな時間にどうされましたか?」
「ちょっとお話したいことがあって…。すぐ終わるんですが…入ってもよろしいですか?
「勿論大丈夫ですけど…準備しますね。」
「マルクさん、私の分は不要です。」
「いえ、メイリーンの分もお願いします。」
「お嬢様?」
「うっ…。わかり、ました…」
「それでは失礼します。」
メイリーンさんが扉を閉めて出ていくのを横目に見ながら、部屋の隅に片付けておいた椅子とテーブルを用意して座ってもらう。
ドタバタと準備しているとなにもないことに気づいた。
紅茶を入れようにも茶葉はあるのにポットがない。
普段使わないからと全く用意してなかった…
仕方ないのでポーチに入れておいたミルクとカップを取り出して魔法で温める。
「≪ヒート≫すいません。何も用意していなくて…ホットミルクです。」
「わぁ…ありがとうございます。マルクさん、そのポーチは空間収納がついているのですか?」
「はい。そんなに沢山は入らないですけど。あ、ミルクは小屋から持ってきたもので美味しいと思います。」
そういって腰掛けるとソラリアさんが目をキラリと光らせてホットミルクを口に運んだ。
ソラリアさんに続いて僕も口をつける。
屋敷の中とはいえこの時期は少し肌寒いので、温かい飲み物が丁度いい。
「「ふぅ…」」
ほっと落ちついた息が2人そろってでてきた。
思わず顔を見合わせて笑いあう。
「ふふふ。美味しいですね。」
「ありがとうございます。蜂蜜や砂糖を入れられるとよかったんですけどね。」
「そうですか?このくらいで丁度良いと思います。甘すぎると眠れなくなってしまいそうです。」
「あぁ、それもそうかもしれないですね。」
「「……」」
しばらく静かにミルクを飲んでいると、ソラリアさんはカチャリとカップを置いた。
つられて僕もカップを受け皿に置いて座りなおした。
「あの、マルクさん。」
「は、はい。」
ソラリアさんは突然、テーブルにぶつけるんじゃないかぐらいの勢いで頭をさげた。
「ごめんなさい!」
「ちょっ、ソラリア様!?」
「…お休みの前、気が動転してそのまま置いて帰ってしまいました。」
「あ、あぁ。アイナと一緒に帰ったんでしたね。」
「はい…。すぐに謝れば良かったのですが、その…」
「その…?」
「その、えっとですね?なんか顔を合わせにくかったというかなんというか…。」
「はあ…」
「だから、えっと、は、恥ずかしくてですね?丁度いいタイミングでお休みだし落ち着いてから謝ればいいやと、思ってしまいまして。」
「そうでしたか…」
「それでいいやと思っていたのですが、いざお休みに入ってマルクさんがいないとこう、もやっとしまして。」
「もやっと。」
「そうです。あぁ、謝っとけば良かったとか、その、き、嫌われちゃったらどうしよう、とか…」
「そ、そんなことないですよ!それに全然気にしてませんから。」
「…ほんとですか?」
「はい。」
「…ほんとにほんとに気にしてませんか?」
「ほんとに気にしてません。」
「よかったぁ…」
気が抜けたのか、ソラリアさんは背もたれに身体をぐったりと寝かせた。
少し冷えてしまったカップを魔法で温めなおすとソラリアさんはにっこりと頷いた。
ソラリアさんたちが来た時に慌てて付けた暖炉もやっと火が熾きて温かくなってきた。
「気が利きますね?」
「これでもソラリアさんの従者ですから。」
「…今二人きりですよ?私もさっきまで忘れてましたけど。」
「…ソラリアの従者ですから。」
「えへへ。」
ソラリアさんは満足そうに笑うとカップを傾けた。
「ねぇ、マルク。」
「なに?」
「やっぱり、私、あなたのことが好きなの。」
お読みいただきありがとうございます。
最近、コロナに花粉に紙類にとネットは話題に事欠かず大盛り上がりですが、
皆さん影響のほどはいかがでしょうか。
体調崩さないようにお気を付けください。
作者は超健康体です。




