わき道ーその10-2
どうも、もんたです。
お待たせしました。
それでは、どうぞ。
『ふむ。どう…したなどと言ってはおられんようだな。』
「えぇ。理解が早くて助かるわ。一刻も早く処置をしないといけない。今から言う薬草や植物をかき集めてきて頂戴。」
『相分かった。』
思いついた限りの薬草の名前を伝えるとヴァルは返事もそこそこに駆け抜けていった。
小屋にある回復薬でも間に合うとは思うけど、それは一時的な処置になりかねない。
血で汚れてしまったお身体を洗ってあげたいけど、血を流しているうえにこの怪我では体力が落ちちきってしまっているだろうから変に手を付けるわけにもいかないし…
日ごろ使わないからと体力を底上げする薬の材料を切らしていたのが痛かった。
「こんなこと考えてる暇ないわね。次…!」
≪精霊召喚・ウンディオーネ≫
――…?
青く光った魔法陣の中から、水の塊がポチャンと音を立てて現れる。
マルクが契約している彼女のように明確な形をとることはできないけれど、力はちゃんと中位精霊として持っている。
「この部屋を魔力水のベールで覆って頂戴。出入りは全て私の許可のみよ。」
『――……!』
ウンディオーネはチャポッと水音を鳴らすと魔力を高めて部屋を薄い水の膜で覆った。
このベールの中は清潔に保たれるし、膜を作っているのは精霊由来の魔力を豊富に含んだ水。
これならドラコニア様の魔力回復力をあげる一助になってくれるはず。
≪光と風の精霊よ。我が魔力を糧と成し、遙けき空より照らす陽光、この者の闇を祓い給え。
大いなる聖を纏いし風、彼の者の傷を癒し給え・テンダーハイヒール≫
それなりに高位の回復用魔法だけど、このさい気休めにでもなればいい。
そもそもドラコニア様は体内に聖龍を宿していた。
龍種の生命力も持ち合わせているから正直、この程度の傷は平気なはずなのだけど…
焦って思考がまとまらない。
落ち着いて、私。
回復魔法と水精霊のベールが効いたのかドラコニア様の呼吸が落ち着いた。
身体の傷もひとまずは消すことができている。
左腕のひどいやけどのような跡だけは消すことができないようね…
魔力で探ってみても、何かに邪魔されているようで治療ができない。
強い呪法のようなものかもっと高位の魔法で付けられたものなんだろう。
どうしたものかと思案にくれていると、ウンディオーネのベールがぷるんとふるえた。
『オルガよ、頼まれたものは揃えたぞ。ビビアにも手伝わせた。』
「あら、丁度いいわ。ありがとう。」
『問題ない。調合まで手伝うか?』
「えぇ、お願い…いえ、ここに残ってドラコニア様の様子を見ておいてくれるかしら。」
『うむ。今のところ問題なさそうだが、誰かいたほうが良いだろう。異変があれば我がなんとかしよう。』
「ありがとう。少し集中したいから…よろしくね。」
『ああ。』
その場をヴァルに任せ、調合室へかけ下りる。
ヴァルの採ってきた薬草は流石は森の精霊と言わんばかりの品質だった。
場合によっては魔力で効力アップさせる必要があるかと思ったが不要そうだ。
棚や倉庫から必要な材料をかき集めテーブルの上に並べなおす。
漏れはない。
材料は今できる最高の物がそろっている。
手順もきちんと頭に入っている。
あとは、やるだけ。
これまでの私の技術をすべて注ぎ込むのだ。
********************
************
*******
「……む。」
『目が覚めたようだな、ドラコニアよ。』
「…その声……ヴァールトか。」
『然り。動くなよ、身体も魔力も回復しつつはあるが、疲労と中身はそう簡単に回復せぬ。』
「その…ようだ。左腕はほとんど動かぬ。」
『その怪我で動いたらそれこそ人外である。いや、既にお前は人ではないが。』
「…わしはまだ人間つもりじゃ。」
『身体に龍を宿すものがただの人のはずがなかろう』
「そうか…。オルガはどこに?」
『動くなと言っている。自室で寝ておるよ。』
「そうか。」
周囲を覆う水のベールの揺れる心地よい音だけが部屋に響く。
『何があった。』
「……」
『まぁ良い。オルガには話せ。』
「…どれくらい寝ておったか。」
『お前が小屋に来た日から一日半というところか。処置が終わった後ずっと付きっきりでオルガが様子を見ておったが、流石にあやつも気力が持ちそうになかったのでな。強制的に寝かせたわ。』
「そう…か…」
『また寝るがいい。お主が起きたことは我から伝えておく。≪スレプス≫』
「世話を…かけ……た――」
『……』
********************
************
*******
処置が終わって二日目の昼過ぎ。
徹夜していたこともあり随分寝過ごしてしまった。
そして、今朝早朝にドラコニア様は気が付いたらしい。
私と変わって少ししてからのタイミングだったらしく二、三言、ヴァルが話したよう。
こうなった原因は教えてくれなかったようだけど。
その日の夕方、再びドラコニア様が目を覚ました。
「ドラコニア様。」
「おお…。オルガよ、世話をかけたな。」
「とんでもありません。お身体の具合はいかがでしょうか。」
「うむ。まだ節々が傷むが…。これは年のせいか怪我のせいかわからんの。ほっほっ…つつ。」
「安静になされてください!全く…」
「すまんすまん。冗談が言えるくらいには回復したわ。」
「それは……よかった。」
「…感謝する。このおいぼれの命を救ってくれた。」
「いえ。恩の一つを返せたにすぎません。…ドラコニア様。」
「言いたいことはわかる。その前に、どんな薬を使った?」
ゆっくりと身体を起こそうとするドラコニア様に手を貸し、腰元に枕とクッションをよせる。
「以前お預かりしていた龍の素材を使いました。元は秘薬です。こちらは残りですが、今の状態にそのままでは効果が強すぎますので薄めて飲んでいただきます。」
「これか…≪全鑑定≫」
「ドラコニア様!?」
薬神の秘薬(龍)
(生命力向上極大)(魔力向上極大)(疲労付与大)…
薬神の名を持つ者の技術全てが注がれた秘薬。
一瓶飲めばどんな瀕死の存在をも治療することが出来るが、生命力と魔力を大量に消費するため回復後疲労がたまる。
また生命力と魔力が不足している場合、回復も限界値がある。
秘薬内に龍の素材を使用しており、適性のあるものは疲労効果が減少する。
「エルフの秘薬か。貴重なものを使わせたな…。重ねて礼を言う。」
「お気になさらないでください。それと簡単な魔法とはいえ起き上がれるようになるまで魔法の使用はお控えください。薬の副作用でただでさえ減っている魔力がさらに減っているのですから、また倒れてしまいます。」
「うむ…。回復したと思っておったが少々きついなこれは。」
「お話は後程。まずは休まれてください。アドラーたちがついておりますので。」
アドラーとイズマは任せてというように体をぷるぷるとふるわせるとドラコニア様の枕元に移動した。
二匹は身体からハーブの香りを出すことが出来るのでドラコニア様が休むのにも丁度いいだろう。
何かあれば呼びに来てくれるだろうし。
「そうだな。そうさせてもらおう。」
「はい。おやすみないませ。」
ドラコニア様を布団に寝かせ、目を閉じたことを確認して部屋を出る。
『ドラコニアはどうか。』
「ヴァル。」
『その様子だとひとまず落ち着いたか。』
「えぇ。あなたもありがとうね。助かったわ。森の管理もあるでしょうに。」
『良い。ビビアをひっぱたいて働かせておる。それに森も落ち着いておるしの。』
「そう。それならいいわ。」
『それよりもお主だ、オルガよ。』
「私?」
『お主も寝よ。面倒を見ていてお主まで倒れては何も回らんぞ?』
「私はまだ大丈夫よ。意識もちゃんとしているし。」
『そういう者ほど危ないのだ。さぁ部屋に戻って寝ろ。我が寝かしつけてやろう。』
「ちょ、ちょっと?ちょっと!」
そのままヴァルに引っ張られベッドに横になると、やはり疲れがたまっていたのかすぐに眠ってしまった。
お読みいただきありがとうございました。
次回でわき道話おわり…かな?
もっと長くなるようなら一度本編に戻りたいと思います。




