第9節『依頼達成』
どうも、もんたです。
おまたせしました。
それでは、どうぞ。
「マルク君、シャンドラ様がお呼びですよ。」
「あ、ありがとうございます。なんでメイリーンさんが?」
「ん?私も一応、解放されて一使用人だから。それにたまたま近くを通りかかったの。」
そういいながら、メイリーンさんはまだ若干跡の残る首元を指さして笑った。
僕は解放されてからのことしか知らないんだけど、それまでは奴隷としてシャンドラ様に仕えていたらしい。
かあさんと同じエルフ族で魔法はもちろん知識も優れていたので、奴隷の身分でありながらソラリアさんの家庭教師として仕事をしていたんだとか。
奴隷になったのは色々と複雑な理由があるみたいで僕は聞かないようにしてるけど、少なくともこの屋敷の人たちは奴隷という身分と制度に反対してる貴族の中でも少数派の人たちばかり。
以前、いかに良くない制度かとセバスさんに懇々と説明された。
とはいえ、フリオニール領の全ての貴族が同じような考え方を持ってるわけでもないし、一部必要な場合もあるそうで、奴隷の売買はどこかしらでされている。
ただし領内の奴隷売買は許可された一部の商人のみとなってる。
「そうだったんですね。そのまま執務室に行けばいいですか?」
「ええ。理由はわからないけど私も呼ばれてるから一緒に行きましょう。」
「メイリーンさんも?わかりました。もう準備はできているので行きましょう。」
話のついでにと依頼の内容に必要な分だけ薬と素材を入れた背負子を背負って、部屋を出る。
コの字型になっている一番外側の二階角部屋から、反対の角にある執務室まで使用人用の外階段を使って行く。
いつも華やかな中庭の花壇も、寒い時期なこともあって結構色が寂しい。
この季節に咲く花もあるけど、積もる雪に紛れるためなのか白っぽいものが多くって、雪が降ってしまうと全く分からなかったりする。
「マルク君、着きましたよ?」
「え?あ、すいません。」
ぼーっとしている間に部屋に着いちゃったみたいだ。
――コンコン
「誰かな?」
「ご主人様、メイリーンでございます。マルクを連れてまいりました。」
「早かったね。入っておくれ。」
「失礼いたします。」
執務室ではシャンドラさんがセバスさんと一緒に書類に目を通しているところだった。
シャンドラさんの横ではマリアンヌさんが大きなお腹をさすりながらお茶を飲んでいた。
「シャンドラ様、マリアンヌ様、セバスさん、先ほど戻りました。」
「うん、聞いていたよ。おかえり。」
「おかえりなさい、マルク君。ソラリアにも後で会ってあげてね。」
「元気なようで何より。…身だしなみも整っていますね。」
「ははは…、ありがとうございます。それとこちらが受けていたご依頼分の薬と魔物の素材です。」
「おお!ありがとう!せっかくだし、机に並べてくれるかい?」
シャンドラさんがそそくさと机の上の書類を脇に寄せると、セバスさんが綺麗に整理する。
おそらく、シャンドラさんに近い順番に優先度ごとで書類の山を作ってるんだろう。
書類が片付いたシャンドラさんの広い机に次々と持ってきたものを並べていく。
気になるのかメイリーンとマリアンヌさんも前のめりだ。
マリアンヌさんは傍に控えていたメイドさんに色々言われているけど知らんぷりしてる。
大丈夫なのかな。
「えっと、こちらで全部になります。」
「うん。薬はもちろん、素材も十分な品質を保ってるようだね。」
「はい。ウルフの爪や牙も傷なく保管されております。また、依頼にはありませんでしたが、これはバサラベアの素材のようですね…。毛皮に牙、爪に肝と重要な素材がそろっております。こちらは爪と毛皮に若干傷がありますが、問題になるようなほどではないかと。」
「どの瓶の薬もとっても綺麗ね~。家にある薬もこんな感じだったかしら、メイリーン?」
「常備している薬の一部は同様のものですが…。流石にすべてがこうではありません。」
「それは凄いってことかしら?」
「え、えぇ。とっても。」
「マルク君、念のため、順番に説明してもらってもいいかな?」
「わかりました。それでは左にある薬から。青くて透明な…って全部透明ですね。青いものが回復薬、緑のものが強壮薬です。それから順番に麻痺、毒、睡眠を解除するための薬です。最後の2瓶は解呪の薬です。依頼は1本でしたが、材料も余ったので予備に追加します。料金は不要ですと母さんも言ってました。」
「ふむ、わかった。手紙でお礼も届けるつもりだけど、この件はマルク君からも改めてお礼を伝えておいてくれるかな。」
「はい。それと品質は全て高品質なものを用意しています。」
「「は?」」
「高品質ですって!すごいわねぇ、メイリーン。」
「は、はぁ…」
僕と母さんからすると割と当たり前に近いことなんだけど…
シャンドラさんたちは違うみたいで、マリアンヌさんを除いて目を大きく見開いていた。
「…セバス、聞いたかい?」
「えぇ。私の耳が耄碌していたわけではないようで。」
「ちなみになんだけどね、この薬は全てオルガさんが作ったものかな?」
「えーっと、回復薬と強壮薬は僕が作ったものです。それ以外は母さんが作りました。僕が作ったものに関しては出来るだけ質のいいものを選んだつもりなんですけど…」
「…あぁ、違うんだ。問題があるわけじゃないから心配しないでくれ。びっくりしただけだよ。」
「よかった…」
「もう街の薬師では太刀打ちできませんね。お抱えの医師とも面会させますか?」
「それもアリだね。商会に仕入れるように頼むよりマルク君に頼んだ方が確実そうだ。」
「何の話でしょうか…?」
シャンドラさんとセバスさんは顔を見合わせると頷き合った。
「マルク、改めて聞きたいのですが、薬はどのレベルまで作れますか?」
「えっと、よく街で売られているようなものならたいていは作れます。作ったことがないものもありますけど…作り方は知ってるので、何度か試せばきちんとしたものが出来るようになると思います。」
「ふむ…。ちなみにここにある薬は自力で作れますか?材料はあるとして。」
「はい。あ、でも解呪の薬だけは作ったことないです。」
「作り方は?」
「今回初めて習いました。難しい手順も一ヵ所だけだったので作れるようになると思います。」
「最後に、回復薬と強壮薬、それから通常の風邪薬なんかもですが、効き目は?」
「効き目…ですか?」
お読みいただきありがとうございます。
あっという間に1月も終わりですね。
いちご狩りの季節です。
作者も今度行くことになりました。おなか一杯食べてきます。




