第8節『クランドの店②』
どうも、もんたです。
おまたせしました。
それでは、どうぞ。
「良い薬だ。」
「え?」
「マルク、お前さんは良い薬師だ。いい薬を作ってくれた。」
「え、あ、ありがとうございます。でも、何か特別なことをしたわけじゃ…」
クランドさんはニカッと笑うと軽く首を振る。
「いや、そうじゃねぇんだ。手間暇とか高価かどうかの話じゃない。この薬にはお前さんの想いがこもってるって話さ。」
「想い…ですか?」
「そうだ。先に聞いとくが、俺がお礼に金払うって言ったらお前受け取るか?」
「い、いえ。僕が勝手にやったことですから。」
「だろ?そういうと思ったわ。まぁそれでも払うけどな。」
「え。」
「まぁ聞け。この薬にはお前さんの"相手に良くなってほしい"って想いがこれでもかって入ってる。これで金儲けしようとか恩を売ろうとかそんな気持ちが一切ない。ああ、もし薬師になって街で店やってくれるんだったら今後は金のこと考えねぇといけねぇが今は良いとしよう。俺が言いたいのは、お前さんの"俺を治したい"って気持ちがこの薬から感じられるってことだ。これはその辺の奴らに簡単に出来るようなことじゃねぇ。だから良い薬、なんだよ。効き目だけじゃない良さがあるってことよ。」
「は、はい。」
「んまぁ、おっさんの小言だと思って聞いてりゃいい。今はイマイチピンと来なくてもきっとこれから先どっかでわかるからよ。最後にこれだけは言っとくぞ。」
「なんでしょうか。」
「ありがとうな。」
「い、いえ!」
「薬の代金今払っちまいたいんだがあいにく手持ちがなくてな…。下に降りて勝手に取ってもいいんだがそんなことするとかあちゃんに怒られんだよ。」
「そんな、ほんとにいいんです。」
「わかったわかった。お前が勝手に薬を作ってくれたように、俺も勝手にお礼を渡したいだけだ。…まぁ、また店か出店の方にくんだろ?」
「もちろんです。明日から学園の授業が始まるので、早くても次のお休みとかになっちゃいいますけど。」
「あー…そういえば学生さんか。ん?そうはいっても、シャンドラ様の屋敷にいるんじゃなかったか?」
「はい。でも学園には寮から通ってるんです。」
クランドさんはぽかんと口を開けて目を瞬かせた。
「は?ソラリア様いんだろ?一緒に屋敷から通ってるんじゃないのか?」
「それが…せっかくだから寮から通いたいってことで、入学してからずっと寮で暮らしてます。」
「は~。父親に似たのか母親に似たのか…。まぁいいや。代金のことはなんとか考えとくわ。」
「す、すいません。気を遣わせてしまって…」
「いや、おめぇの方が気を遣ってるだろこの場合。…だいぶ話し込んじまったな。この後屋敷に戻るのか?」
「はい。」
「長く引き留めちまってすまんな。薬、ありがたくいただいとくよ。」
「ゆっくり休んでくださいね。お邪魔しました。」
「おう。」
クランドさんの部屋をでて、階段を降りるとさっきのお兄さんがせかせかとお客さんを対応していた。
ハムリさんだっけ?
「お、用は済んだのかい?」
「はい。ありがとうございました。」
「いいのいいの。これで店長が早く戻ってきてくれれば大助かりさ。それじゃあね。」
「お邪魔しました。」
仕事の邪魔にならないようにとそそくさとお店を出る。
お昼を少し回ったくらいの時間なのもあり、大通りにでると屋台に冒険者や建築の仕事をしてる人たちが集まっていた。
あわせてお肉やパンが焼きあがるいい匂いがしてくる。
買いたくもなるけど…
クランドさんのお店で少し時間を使ってしまったし、ひとまず屋敷に戻って帰ってきたことを報告しておかないと心配をかけちゃうかも。
香辛料のお腹にくる匂いに後ろ髪引かれつつも大通りを通り抜け、噴水広場に出ると冒険者ギルドと商業ギルドの周りが一段と賑やかそうだった。
周りの人たちの話し声を聞く感じだとキャラバンの護衛依頼で冒険者たちが沢山帰ってきたみたいだ。
商業ギルドの方でも装備の整った冒険者が商人のような人たちと話し合ってる様子。
装飾の派手な荷馬車が何台も止まっていて、その全部に同じ紋章が入っている。
子爵家以上の貴族家や有名な商会はみんな紋章を持っていいことになっていて、まぁたいていの人たちは持ってる。
紋章があればそれだけでも人目につくし、覚えてもらいやすい。
一応、獅子やドラゴンは王家やそれにまつわる一族以外は使用不可となっているけど、それ以外なら自由に使うことが出来る。
この国ではそんな感じだけど、他の国はどうだったっけな?
その馬車に描かれた紋章はどこかでみたことある気がするんだけど…
紺色の生地に金糸で刺繍されているみたいで、すごく立派な紋章だ。
セバスさんたちなら知っているだろうから屋敷に帰ったら聞いてみよう。
あーでもなんで覚えてないのかって怒られそうだな。
屋敷に続く北通りの人通りは思っているより少ない。
ただ、人通りが少ないだけで馬車の出入りは結構激しくて、ふらふらと道の真ん中を歩いていると危ない。
北通りも噴水広場から少し離れれば貴族の家しかなくなるし、歩いてどこかへ向かうなんてこと貴族は少ないから当然と言えば当然なんだけど。
横を過ぎていく馬車からくる視線を感じながらシャンドラさんの屋敷にたどり着くと、ちょうどライオネルさんが出かけるところだったみたいだ。
ちなみに、セバスさんは未だに僕に敬語で話したりするけどライオネルさんは同じ使用人として見てるようで、フランクな話し方をしてくれる。
「おお。マルク、帰ったか。」
「はい。ただいま戻りました。」
「母上はお元気だったか?」
周りに他の使用人がいるのであえて名前は出さずにごまかしたライオネルさん。
「はい。変わらず元気にしていました。シャンドラ様からの依頼の分も持ってきましたから。」
「そういえば頼まれていたんだったか。ご主人様と奥様は執務室におられるからセバス様に案内してもらうといい。おい、セロン、セバス様をおよびしろ。マルクが帰ってきたと言えばわかるはずだ。」
「わ、わかりました。」
セロンと呼ばれた若い使用人さんがパタパタと屋敷の中へ戻っていくのを見送って、ライオネルさんは僕の頭をなでた。
「よく帰った。明日から学園だろうからゆっくりしておくといい。のんびりと話を聞きたいところだが私は所用で出なければならない。またな。」
「ありがとうございます。行ってらっしゃいませ。」
ライオネルさんは馬車に乗ってすぐに出て行ってしまった。
馬車の中には武器や食料が積まれていたから、恐らく遠い街へ遠征か森に討伐依頼を片付けに行くのかな。
僕に割り当ててある部屋に戻るといつものように綺麗に掃除してあった。
控えていたメイドさんにお礼を言って荷物を下ろし、必要な物以外はポーチと棚に次々としまっていく。
大体整理が終わったころにメイリーンさんがやってきた。
お読みいただきありがとうございます。
ちょっと更新ペース乱れてしまっていて申し訳ありません。
2月には元に戻ると思います…
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