わき道―その⑨
どうも、もんたです。
メリークリスマス。
クリスマスSSとなっております。聖なる夜を。
これはマルクが小屋にいたころのお話――
「今日は一段と寒いなぁ…」
「ガウッ…」
今日は12の月の25日。
起きて布団をでると、一瞬で身体を冷たい風が包んだ。
ベッドの下にいるグリムもいつもより小さく丸まって寒さをしのいでいる。
「ん? わぁ…」
やけに寒いなと思って窓の外を見ると、一面真っ白な世界。
今も雪が降って、葉の落ちた木々に雪が茂っている。
でもあの木は枝細いし、雪の重さで折れちゃいそうだけど…
「くぅん…」
「わかったわかった。」
辛そうな声をあげるグリムの声をきいて、ストーブに火をつける。
魔石を利用したストーブは薪のストーブは違ってあっという間に暖かくなる。
グリムは気持ちよさそうな顔で満足げに身体を震わせた。
狼としてそれはどうなの?
家にあった動物の図鑑だと狼は寒さに強いってあったんだけどな。
そういえば外の狼小屋にもストーブは用意しているんだっけ。
あっちはこの時期つけっぱなしだから大丈夫だろうけど。
着替えて台所へ向かうと、かあさんが朝食の準備をしていた。
「おはよう、マルク。起きれたのね。」
「母さんおはよう。遅くなっちゃった?」
こちらをちらっとみて笑いかけた母さんはそのまま振るわれるフライパンに目線を戻した。
自家製ベーコンの焼きあがる匂いがぺこぺこのお腹に届く。
「いいのよ。昨夜は少し遅くまで訓練してたでしょう?もう出来上がるからテーブルに座ってなさい。」
「はぁい。」
ぽよんぽよんと跳ねるアドラーをキャッチしてリビングのテーブルに向かうと、じいちゃんがゆっくりとお茶を飲んでいた。
「おはよう、じいちゃん。」
「うむ、おはようマルク。疲れが残ってはおらんか?」
「うん。大丈夫。」
「良い良い。まぁ今日は特別な日じゃからゆっくりしよう。」
「特別な日…?」
じいちゃんはそういうと機嫌よさそうにカップを傾けた。
また難しそうなタイトルの本読んでるな…
じいちゃんの斜め後ろに置いてあるストーブの前にはグランがだらりと寝そべっている。
「グランもおはよう。グリムとそっくりだ。」
「…ガウ。」
一緒にするなと言わんばかりに首を振るとさらに丸まってしまった。
いじけちゃったかな。
「マルクも飲むかの?」
「あ、うん!」
じいちゃんとお喋りしながらお茶を飲んでると、母さんが朝食を持ってきた。
焼きたてのパンにベーコンとスクランブルエッグ、サラダも野菜がキラキラして美味しそう。
グランはやっと部屋からでてきたグリムを見つけると一緒に狼小屋の方に帰っていった。
みんなもこれからご飯なのかな?
「さぁお待たせ。食べましょう。」
「うん!」
一通り食べ終わり、片付けも終わったあと母さんも交えてゆっくりとお茶を飲む。
アドラーとイズマはテーブルの下でクッキーのかけらをもぐもぐ(?)と食べてる。
「マルクよ、今日が何の日か知っておるかの?」
「今日…?誕生日、でもないし…もうすぐ年越しのお祝いがあるくらいだけど…」
「まぁ知らぬのも仕方なし。これはわしの生まれた国での決め事じゃからの。」
「じいちゃんの故郷…?」
「うむ。わしの生まれた国では、12の月の25日にあたる日を"聖スマクリスの日"としておる。」
「聖…なに?」
「聖スマクリス、じゃ。はるか昔スマクリスという名前の人間がおったと言われておる。その者は貧しい家庭に生まれてひっそりと暮らしておった。生活の中で日々神への感謝は忘れなかったそうじゃ。
毎日朝夜、神への祈りを捧げていた。するとある時、天より神の声が聞こえたというのじゃ。」
「神様の声?」
「そうじゃ。スマクリスは神より"各地のあなたより貧しいものを助けよ"と告げられたらしい。スマクリスは翌日から生まれ育った村を身一つで出て旅をした。」
「身一つで?普通の農民さんが危なくないのかな?」
「その通り。しかし、スマクリスは神より魔力を授かっていたんじゃ。聖属性の魔力じゃな。」
「へぇ…」
「スマクリスはその力をもってまずは近場の村々を周り、病に伏せるもの、怪我をして動けないものを治療して回った。もう治らないと言われた病人すらも治し、神の奇跡と呼ばれた。
感謝され、褒められ、それでも彼は驕らなかった。ただただ神より授かった使命を全うしようとしたんじゃ。」
「でもお金とか持ってなかったんでしょ?どうやって生活してたの?」
「治療したお礼にと渡された品々で最低限の食事をしていたということじゃ。必要以上は受け取らず、清貧に有り続ける彼の話はあっという間に各地に広がり、色々な人が彼に治療を依頼した。
だが、彼はそのほとんどを断った。」
「どうして?お金持ちとかもいたんじゃないの?」
「もちろんじゃ。じゃがなマルク、スマクリスが神から受けたお告げはなんじゃった?」
「えっと、自分より貧しい人を助けろ?だっけ。」
「そう。彼らはスマクリスよりも金持ちじゃった。スマクリスは神のお告げのことを話し、そのほとんどを断った。流石に王族となると話は違ったようじゃが。」
「えー…」
「まぁ聞きなさい。王族を治療した彼は目もくらむような財宝を手に入れることができたが、彼はそれらに興味を示さなかった。
代わりに各地に教会や孤児院を作ること、そして貧困にあえぐ人々に施しを与えるようにしたのじゃ。」
「あぁ、そういうこと。」
「これを偽善と呼ぶものもおるじゃろうがな。やらない善よりやる偽善、じゃ。その後スマクリスは教会のサポートを受けながら延々と貧しい人々の治療に専念した。
治療以外にも炊き出しも行い、亡くなるまで精力的に活動を続けたということじゃ。」
「すごい人?なんだね。」
「対価無しに他人に尽くすなど本当に良き人にしかできることであろう。スマクリスが亡くなった日が12の月の25日、つまり今日じゃな。教会はスマクリスに聖の称号を与え、彼の偉業を忘れないように25日を聖スマクリスの日と名付けた。
この日は貴族や商人が市井の人々に施しを与えたり割引をしたりという日になるのでそこそこの街じゃとお祭り騒ぎじゃな。特に子供はすごいぞ。」
「こどもが?」
「聖スマクリスは子どもたちに飴玉を与えたと書物には書かれておる。そこから大人たちが子どもたちにプレゼントを渡すような習慣になったんじゃ。と、いうわけじゃから…」
「ん?」
じいちゃんはいそいそと杖を取り出すとテーブルの上に杖の宝玉を向けた。
「マルクへのプレゼントじゃな…≪オープン≫」
白い光がおさまるとそこには一本の短剣が置かれていた。
植物の蔦のような装飾がされた白い鞘に包まれて、持ち手のグリップの革からは新品のにおいがした。
なんか高そう…
「ダガー…?」
「うむ。わしが昔使っておったものじゃ。そうはいっても刃は研ぎなおしておるし、グリップもはりかえた。ついでに付与魔法もしておるし性能はばっちりじゃ。」
「みてもいい?」
「勿論じゃよ。」
「うん。≪物質鑑定≫」
滅龍のミスリルダガー
(対龍族切れ味極大)(耐久上昇大)(***)…
芯をドラゴンの骨、刃部分を総ミスリルで仕上げた短剣。
龍・竜族に対して大幅に切れ味が増大する。付与魔法済。
聖龍の白鞘
(耐久上昇大)(自動修復大)…
聖龍の皮膜を元に作成された鞘。
龍族特有の耐久性と魔力から多少の傷も自動で修復する。付与魔法済。
「うわぁ…」
「まぁ…」
「ほっほっほ。素材は気にせんでもよいぞ。簡単に手に入るからの。」
「簡単にって…。ねぇじいちゃん、ダガーの方、読めない文字があるよ?」
「ん?あぁ、それは気にせんでも良い。悪いものではないからの。」
「まぁそれは心配してないよ。でも、ちょっとやりすぎじゃない…?」
「そうかのぉ?」
「龍とも竜とも戦うことはないよ。」
「世の中何があるかわからんぞ?ここ【トバ大森林】とて山頂近くなればリザードマンやワイバーンなんかがうろついておる。たまに空飛んどるじゃろ?」
「そうだけど…」
「まぁまぁ、何かの時のためと思っておけばいいんじゃないかしら?」
「そうじゃそうじゃ。何が起きるかわからんからの。」
「…わかった。プレゼントありがとうじいちゃん。」
「良い良い。受け取ってもらってその言葉を聞ければわしは満足じゃ。」
にっこりと笑うと言葉通りいつも以上にご機嫌なようで鼻歌を歌いながらカップを傾けていた。
「マルク、いいものもらったわね。」
「うん。明日から森に入るときはこれ使うよ。持ち手も慣らさないといけないし。」
「そうね。はじめは大変かもしれないけど。」
「切れ味すごそうだから加減を覚えないと素材ぐちゃぐちゃにしちゃいそう。」
「ふふ。その時はまた集めてきなさいね。それと、私からはこれ。」
「え?かあさんも?」
「当り前じゃない。はい、どうぞ。」
そういうと、いつの間に隠していたのか背もたれにかかっていた布をとりだした。
半円状になったそれはテーブルにあたるとコツンと少し高い音がする。
金属かなにかかな?
サイズは僕の背丈より少し大きいくらい。
あと何年かすれば使いやすくなりそうだけど…
「おっきいね…?」
「ええ。子どもはすぐに大きくなるもの。サイズが合わなくなったら言いなさい。調整してあげるから。」
「合わなくなったら…?これなんなの?見た目弓みたいだけど。」
「開けていいわよ?」
ニコニコする二人に見守られながら布の包みをはぐと、出てきたのは真新しい弓だった。
本体はこげ茶の木でできていてシンプルだけど綺麗な装飾がされている。
一本の老木に蔦が絡みついてるようなデザイン。
弦は一本キラキラと光る糸がしっかりと張られている。
「これもじいちゃんのみたいにすごいやつ…かな?」
「どうかしらね。ふふふ。」
意味ありげに笑うのすっごく怖い…
精霊樹の龍弓
(威力上昇大)(耐久上昇中)(魔力上昇中)…
エルダートレントの幹から削り出された材料でできた弓。
弦には聖龍の髭が使われており、魔力とともに放つ矢には聖なる力が宿る。付与魔法済。
「かあさん!?」
「ふふふ。ドラコニア様には負けられないもの。とはいっても材料はお借りしたけれどね。ありがとうございました。」
「なんの。可愛い子どものためのプレゼントじゃ。遠慮はいらぬ。」
「と、いうことで全力で作ったわ!どうかしら?」
「嬉しいけど…やりすぎだよ。」
「お守りのようなものよ。大切にしてくれないと泣いちゃうわ。」
「絶対大事に使うよ。ありがとう、かあさん。」
「どういたしまして。」
2人は僕そっちのけでプレゼントの話をし始めた。
材料の何が大変で、どこを作るのが難しくてって話。
ところどころ、強そうな名前の魔物の名前がでてきて後から本で調べた時はびっくりした。
随分遠いところに行ってたんだもの。
確かにちょっと前にかあさんが珍しく遠出することがあって、その時はじいちゃんと一緒に過ごしてたけど、まさかプレゼントのためだったなんて…
2人からのプレゼントはどちらも世界にひとつだけ。
窓から入る陽の光を受けてキラキラと輝いてる。
「じいちゃん、かあさん、ありがとう。」
お読みいただきありがとうございます。
皆さんこどもの頃にもらったクリスマスプレゼント覚えてますか?
僕は覚えてます。
おもちゃに洋服にゲームにと色々もらいました。サンタさんから。
いつか結婚して子どもが出来たら、次は僕の番だな~と思います。
今年も残すところあとわずか。
のんびり過ごしましょう。




