第5節『一息』
どうも、もんたです。
寒いです。
小屋の方から狼の遠吠えが聞こえる。
重なる声に少し驚いたのか、デフィーが近くに走り寄って僕の裾を掴んだ。
「マルク?」
「多分、お迎えがきたんじゃないかな?」
案の定、鳴き声の聞こえた先から猛スピードでやってきたのはグリムだった。
後ろについてきている小さめな狼はグリムの子どもたちだと思う。
懐かしいなと思って手を広げると、グリムのスピードがぐんと上がって…え?
「ちょ、ちょっとグリム!!!「がうっ!!」わぁっ!?」
既に大人サイズまで成長した狼を子供の僕が受け止められるわけもなく…
グリムと子供たちは僕に大かぶさって顔を全力で舐めてきた。
「うわっ!グリム!やめっ!!」
顔中べとべとになったころにやっと落ち着いたのか僕の上からどいて狼たちはお行儀よくおすわりした。
ただ、まだまだ興奮しているようでしっぽはぶんぶんと左右に揺れて、地面に広がる落ち葉を舞わせている。
そんな様子を脇目にデフィーに水を出してもらい、汚れた顔を洗った。
ちなみにグリムが飛びついた瞬間にデフィーは木の陰に逃げ込んだらしい。
「狼たちは好きだけど、あんなにとびかかられたら怖いもの。」
だって。
ひどい。
グリムと子供たちの頭を順番に撫でるとおさまりだした尻尾がまだ大きく揺れだした。
「あはは。久しぶりだね、グリム。それに赤ちゃんたちも。」
「「キャウッ!!」」
「あぁ、もう赤ちゃんじゃないってことかな?出会ったときのグリムより少し小さいくらい?」
「グゥ?」
「魔物はあっという間に大きくなるっていうしね。よし、休憩終わり!小屋まで帰ろう。」
その後はグリムたちとわちゃわちゃとしながら小屋までの道のりを進んでいった。
とはいってももうずいぶん近いところまで来ていたので、10分ほど歩けば木々の隙間から小屋が見えてきた。
道中捕まえた野鳥をくわえてグリムの子どもたちはご機嫌だ。
思っていたより野鳥も太っていて、食べ応えはありそう。
もう森の木々もあちこち葉を枯らしているし、餌も少ないとおもったんだけど。
「もうずいぶん寒いけど、結構太ってるね。この辺は木の実がまだ残ってるのかな。」
「川辺の小魚とか虫でも食べてるんじゃない?この辺りは海にも近いし水辺が多いから。」
「そういえば…じいちゃんの小屋から少し上ったところで海が見えたっけ。デフィーの湖もあったし川も多いね。」
「珍しいのよ?ここからもっと北に行くと禿げ山があるくらいなんだから。」
「え?どうして?」
「さぁ…?確か…今よりずーっと昔、古龍が燃やしたせいで一切植物が生えなくなった、とかだった気がするけど。」
「へぇ…。行ってみたいな。」
「マルクだって冒険者でしょ?いつかいけるんじゃない?それこそ、護衛依頼とか討伐依頼とか。」
「そうだね。でも、遠出も楽しそうだけど街で薬売りをするのも気になってるんだよな…」
「マルクはそっちのほうが向いてそうだけど?」
「やっぱり?僕も―――「マルク!!」」
ふいに聞きなれた声が耳に届いた。
声のする方に顔を向けると、、、
「なんだか大人びたわね。おかえりなさい、マルク。」
「た、ただいま、かあさん。」
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その日は嬉しそうなかあさんがちょっぴり気合を入れすぎたようで豪華な食事になった。
お腹いっぱい。
やっぱり採れたての野菜は美味しいや。
半年ぶりの僕の部屋は少しものが減っていたり、敷物が変わったりしてるだけでそのままだった。
ものが減ってるって言っても薬品棚に置き忘れてた材料が片付けられてるってくらいだけど。
「いつ帰ってきてもいいようにこまめに掃除してるわよ?アドラーが。」
と、かあさんは言ってた。
かあさんはしてないのか…?
褒めて!と言わんばかりに身体を揺らすアドラーをたっぷりと撫でて送り返す。
その後イズマがひっそりと部屋に入ってきてねだってきたのは二人の秘密だね。
アドラーもイズマもスライムは寝ないで活動するので夜の間にお掃除をしてくれる。
一応、休憩するタイミング?のようなものがあって、その時は何があってもいいようにカチコチに固まってる。
その辺の剣じゃ傷すらつかないくらいの硬さだ。
部屋は小型のストーブの発する熱でほんのりと温められて心地いい。
狼小屋にも同じものを用意しているらしいけど、グリムは僕の部屋で寝るみたい。
既にストーブの前の一番いい席に丸まってる。
寝るまでの少しの間、うとうとして気持ちよさそうなグリムをブラッシングしてあげた。
ぐっすりと眠ったグリムを最後に一撫でしてランプを切った。
ベッドに寝そべり、脇の小窓から外を眺める。
葉っぱが減って少し寂しくなった森を月と満点の星空が照らしている。
月の明かりが優しく差し込んで、まるで小屋に戻ってきたことを歓迎してくれてるようだった。
そういえばトーカの街ではゆっくり外を見上げることもなかった。
こんな時間でも街は煌々と照らされていて、見上げても十分に星は見えなかったかもしれないけど。
もう何年もみていたはずの景色なのに、全然あきた感じがしない。
帰ってきたんだな、って思う。
こんな日はのんびりと眠りにつける気がするんだ。
小屋に帰ってきたからと言って特に何かあるわけでもなく、翌日からは昔のように過ごしていた。
朝一甕の水をいっぱいにして、狼たちと軽く遊ぶ。
グランのこどもたちも大きくなって、お兄ちゃんであるグリムと随分仲良くしていた。
グリムの子も元気いっぱいで三匹がかりで僕にのしかかってきたときは実は少し怖かった。
かわいいと思っていても立派な狼だしね。
デフィーは母さんの手伝いをしつつ、思う存分クッキーを食べている。
つい先日行商人のエルフがやってきたらしく、乾燥させた果物入りのクッキーにデフィーは夢中だ。
お土産用に少しは残しておいてほしいんだけど…
昼からは狩りに出かけたり、かあさんと一緒に薬を作ったり。
シャンドラさんからの依頼分は早めにきっちりとこなした。
既に手紙で必要なものは聞いていたみたいでサクサクと話は終わった。
少し貴重な薬草もあったし森を探しまわらないといけないかなと思ってたのでとってもありがたかった。
代わりに色々手伝わされたから手間は帳消しかな。
お読みいただきありがとうございます。
年の瀬も近づいてまいりました。
読者の皆様はいかがお過ごしでしょうか?
僕は25日、ヒトリデスゴシマス、です。




