第4節『準備』
どうも、もんたです。
ソラリアさんはアイナと一緒に先に帰ってしまったらしい。
寮に戻って部屋をノックしても反応がないので困ってたら他の女子生徒が教えてくれた。
しかたなくお休みの里帰りに備えて自分の部屋から必要な荷物をもってシャンドラさんのお屋敷へ歩いて帰ることにした。
荷物と言っても着替えくらい。
あとは当日の朝に朝市でお土産が買えたらいいかなとおもってる。
帰っている途中で、ライオネルさんがわざわざ迎えに来てくれた。
ソラリアさんだけ帰ってきたのでびっくりしてきたと。
ソラリアさん自身は僕も乗ってるものと思って帰ってきたらしい。
屋敷についてアイナしかいないことに気づいてびっくりしたんだとか。
そんなことあるんだ…
その日の夜、やたらと顔が赤いソラリアさんの様子を気にしつつ、お屋敷で夕食を食べた。
「マルク君、ソラリアがごめんね。まさか置いてけぼりするとは。」
「ほんとねぇ。明日からお休みだからって気が抜けたのかしら。」
「お、お父様、お母様…。反省していますのでもうやめてください…。」
「ははは。そうそう、このお休みはマルク君どうするんだい?部屋は使えるようにしているけど。」
「ありがとうございます。せっかくなので母さんに会いに行こうかと思っています。」
「おや、オルガさんの小屋へ?それならちょっと頼まれてほしいことがあるんだ。」
手元にあるベルを鳴らすと、セバスさんが一枚の紙を手渡してくれた。
そこには母さんと作っていた薬の名前と森で採れる植物の名前がいくつか書かれていて、どうやら帰るついでにおつかいをしてくれないかっていうことだった。
書かれている植物に関しても小屋の付近で採取できるものばかり。
冒険者ギルドと薬師ギルドでも依頼を受けようと思ってたからついでにちょうどいいかな。
翌朝、セバスさんから必要経費という形で金貨の詰まった袋を預かった。
シャンドラさんは別の用事があって朝一で王都に向かったらしい。
手渡された皮袋は手のひらにずっしりとした重みを伝えてくる。
…これ中身確認するの怖いんだけど。
前にシャンドラさんがきたとき、かあさんの回復薬は金貨1枚とか言ってたっけ?
普通の回復薬が銀貨1枚が平均の金額だから、約10倍?
この袋で何本買えるんだろう…
馬車に乗る前にクランドさんのお店に寄ったけど店番は違う人だった。
腰を痛めてしまったらしい。
帰りに腰痛に聞く薬を作って持ってこよう。
他にもお土産用にいくつか露店を回った後、朝一の馬車に乗り込み、何事もなく森にたどり着いた。
入り口から少し進んだところの水辺に立ち寄ると、湖の近くの地面に何かが焼けた跡が残っていた。
「冒険者が野宿でもしてたのかしらね。」
「デフィー。」
「小屋に戻るのよね?それなら一緒に行くわ!」
「わかったわかった。それで、やっぱり野宿の跡だよね。」
「えぇ。魔力の後とかは残ってないから人数とかはわからないけどね!」
デフィーはそういうと湖に飛び込んですいすいと泳ぎ始めた。
泳ぐ、って言ってるけど、実際は水の精霊だから湖と一体化してるの方が正しい表現な気もするけど。
デフィーの周りを下位妖精が飛び回って楽しそうだ。
それにしても野営の後か…
馬車下りた時は特に誰も居なかったし、ギルドの依頼にも数日かかるようなものはなかったと思う。
勿論、僕が見てない間に出ていたなら話は変わっちゃうんだけど。
まぁ何か危険な魔物がいるような森じゃないし、特に気にすることもないかな。
「デフィー!そろそろ行くよ!」
「わかったわ!」
湖から上がったデフィーはいつものように水色のワンピースを揺らしながら上機嫌に僕の右手をつかむ。
「…デフィー?」
「なぁに?」
「この手は?」
「いいじゃない。」
「森の中は危ないでしょ?何が出てくるかわからないし、足元だって…」
「危ないって思ったら手を離すし、そもそもこの辺りで私やマルクに勝てる魔物なんていないもの。足元が危ないっていうけど、片手が使えないだけで転ぶほど私のマルクは森に不慣れかしら?」
にっこりと笑ってさっきよりも強く手を握りだすデフィー。
…口じゃ勝てないな。
マットさんも
「いいか。女の口に勝とうとするな。これは俺との約束だ。」
とか言ってたし。
お酒も入ってたけど、変に熱を帯びてたし、周りの兵士さんたちもうんうん頷いてたから大切なんだろうね。
うん。
「はぁ…。行くよ。」
「はーい!」
そうしてご機嫌なデフィーと森の奥へと足を進めていった。
「そういえば、サクサク進んでるけど小屋の位置ってわかるの?」
「うん?わかるよ。この辺りまでは小屋に住んでた頃に通ってたし、景色も覚えてる。」
「はぁ~。すごいわね。どこ見たって木ばっかりなのに。」
「色々とコツがあるんだって母さんが言ってたよ。光の射し方に雑草の生え方、地面の凸凹なんかも全部違うんだって。なんにもない草原とかに比べれば目印は多いって思えるでしょ?」
「そういわれればそうかも?あ、あれって薬草じゃない?」
時折デフィーと薬草を摘みながらゆっくりと小屋へ向かって進んでいく。
とりあえず、薬師ギルドで受けた依頼分は集まってしまったので、これも小屋で製薬して納品することにしよう。
森の中腹あたりに差し掛かったところで、嗅ぎなれたにおいが鼻を通り抜けた。
軽くあたりを見渡すと何種類かの薬草が青々と葉を広げている。
ちょうど人の手のはいらない群生地に着いたみたいだ。
こんな場所あったんだなぁ。
デフィーもなんとなくわかったのか鼻を動かして匂いのもとを探ってる。
「これ!ククリ草よね。」
「うん、そうだね。それにあんまり街では売ってないようなのも生えてる。小屋には在庫もあるだろうけど…どうしよう。」
「マルクの分のストックはあるの?」
「一応ポーチに入ってるよ。でもせっかくだし採っていこうか。」
「この辺りは森の奥側寄りだし、他に採りに来る冒険者もいないでしょ。結構無造作に生えちゃってるし。」
「そうはいっても採りすぎはダメだよ。生き物のえさになるんだから。」
「わかってまーす。」
ちょっとだけ拗ねた様子のデフィーと二手に分かれて採りすぎない程度に薬草を摘んだ。
手先にいろんな薬草のにおいがついてちょっと刺激が強い。
ただ、魔物避けに使うような草もあったので、恐らく魔物に会うことはないだろうけど。
デフィーに水を出してもらい、自分たちと摘んだ薬草の汚れを落としていると、小屋の方から狼の吠える声が聞こえてきた。
「マ、マルク?」
「多分、お迎えがきたんじゃないかな?」
お読みいただきありがとうございます。
12月になりましたね。
みなさんお忙しいと思いますが、体調崩さないようにお気を付けください。




