第3節『放課後』
どうも、もんたです。
あっという間に12月ですね。
びっくりします。
それでも、どうぞ。
「――クさん!マルクさん!!」
「へ?あっ、す、すいません。」
「もう!何度も呼んでるのにずっと上の空で。何を考えていたんですか?」
「いえ、ぼーっとしてました…」
「ふーん、わたしという者がありながら他の女の子のことを考えてたんですか。先日の会にいたタルコスク嬢ですか?それともムルチー嬢?お顔をじっと見られてましたもんね?」
「ち、違います!確かに顔を見てはいましたけど、それは名前と顔を覚えるためで…」
そう。
お茶会において何よりもそれが一番大変だった。
お茶会に参加することになって、不安なことが多すぎたので急いで屋敷へ戻りセバスさんに相談した。
一応、従者として礼儀作法は学んでいるとはいえ、お茶会ってそういう会だと聞いてたから…
セバスさんによれば従者が参加することは結構よくあることらしい。
ただし同性の従者がって話ね。
お茶会に限らず、貴族同士の夜会でも従者と一緒に参加して従者に相手の貴族の顔を覚えさせるんだとか。
当然、本人も相手の顔を覚えるけど、大きな会になるととんでもない数の相手と挨拶をすることになる。
顔と名前なんて覚えてられないと思うんだけど、実際そうで。
どうしても名前が出てこないときにフォローするのが従者の役目。
今は顔と名前を覚える練習だと思って参加してもいいって言われた。
むしろ後々のことを考えて積極的に参加するようにソラリアさんを説得しなさいとまで言われた。
なによりもこっちの方が大変だったのは言うまでもない。
そうはいっても、そんな大きな会に参加する機会があるのかわからないけど。
「ふーん…?まぁ、そういうことにしておいてあげましょう。この後は何をするんでしたっけ?」
「はぁ…。今日はもう授業もお茶会もないです。寮に戻りますか?あ、いえ、明日からお休みですしお屋敷に戻りますか?」
ソラリアさんは思い出したように頷いた後、机についた肘に頭をのせた。
コテンと傾げる仕草に綺麗な髪が揺れていい匂いが広がる。
「う~ん。屋敷に帰ったとて特にすることもないんですよね。図書館にでも行きましょうか…」
「それもいいかもしれませんね。前に話していた小説の続きを読んでいたらどうでしょう。」
「あ!そうしましょう。マルクさんは何か予定は?」
「僕も特にないんですが…。強いて言うのであれば森に行こうかと思ってます。あとのことはアイナ…嬢にお願いして。」
「大森林へ?」
「はい。1週間お休みですし、そろそろ一度小屋に戻ろうかと思って。」
「じゃあ、オルガさんに合うのですか!?」
「ソラリア様!声が大きいです!」
「はっ!ご、ごめんなさい…。」
「いえ。」
なんとありがたいことにしっかりとお休みなのです。
基本的には5日学園で授業があって2日休みというサイクルなんだけど、主だった先生方が皆王都に行かないといけないらしく授業ができないので休みになった。
なんて言ってたっけ?
緊急会議?
もうすぐ今年も終わるし、年の終わりから1の月はまるごとお休みになるって聞いたんだけどな。
早めのお休みってことで皆浮足立っている。
とはいえ、今回の期間じゃあ遠方から来ている学生は家に帰ってゆっくりとはいかないので、ほとんどみんなトーカの街でわいわいと過ごすことになるんだろうな。
学園がお休みになることは街全体もわかっているので、学生向けのお店が売り込もうと準備に熱をいれてるらしい。
「そ、それで、戻って何をされるんですか?」
「ん~。特にしたいことがあるわけではないですけど、学園とか街の話くらい?」
「いいなぁ~。」
「え?」
「わたしも行ってみたいです。」
「それは…。どうなんでしょう。」
「ダメ…ですか?」
「僕からはなんとも…。そんなに距離はないとはいえ時間はかかりますし、大森林の中なので魔物もでるし…。」
「むぅ。」
「護衛が着くなら行けなくもない、とは…。シャンドラ様次第ですけど。」
僕の言葉に可能性がなさそうだとと判断したのか机に突っ伏すソラリアさん。
「はぁ…。今回もダメそうです。」
「今回"も"?」
「はい。半年前、マルクさんをお迎えにお父様が行った時、本当は私も同行する約束だったんです。なのにお父様ったらやっぱり危ないからって連れて行ってくれなくて。」
「あ、あの時。そんな約束してたんですね。ダリアさんたちもいたし多少は安全だったと思いますけど…」
「そうなんです!まぁ、もう一つの約束は守ってくれましたが…。」
ソラリアさんは頬を軽く染めながらボソッとつぶやいた。
「何かいいました?」
「い、いいえ!なんでもないです!それより寮に戻りましょう!!」
「それでは私もお供させていただいてもよろしいでしょうか?」
「え?あ、アイナ!」
「はい。ご機嫌麗しゅう、ソラリア様。それからマルクさんも。」
「こんにちは、アイナ嬢。」
「あら。以前のように呼び捨てで構いませんよ?」
「はは…。それより、まだ教室にいたの?」
アイナ、わかってやってるよね?
ソラリアさんから凄い目で睨まれてるんだよ、僕。
呼び捨てで呼んだりしたら後々大変なことになるのが目に見えるので却下。
わざとらしく話題を逸らしてみた。
「ふふふ。いえ、用事があったので職員室へ行って帰るところだったのですが…。教室から話し声が聞こえて誰だろうと思ったらお二人だけいらっしゃったので。」
「「え?」」
アイナに言われて周りを見渡すと、本当に誰もいなくなっていた。
話を始めた時はまだぽつぽつと残ってたはずなのに。
横で「呼び捨てで呼ばれるチャンスを…」とぼやいてらっしゃいますが、やめてください。
「いつの間に…。」
「お休みですから。皆さん早く帰りたかったんでしょう。」
「それもそうですね。アイナはお休みの間予定あるの?」
「いいえ、特に何もありません。父の商会の手伝いをすることになるかと思います。マルクさんもお暇でしたらどうでしょう。父も喜びます。」
アイナは嬉しそうににっこりと笑って首をかしげた。
やめて、ソラリアさんが今にも爆発しそう。
「残念ながら予定があるんだ。」
「あら、振られちゃいました。」
「ア、アイナ!!私と遊びましょう!」
泣いたふりをしておいおいと目を隠すアイナにソラリアさんが慌てたように声をかけた。
がっちりと肩をつかみ、僕の方に顔が向かないようにしている。
「ソラリア様…?」
「マ、マルクさんはこれから準備に忙しいようなので、2人でのんびりお休みを過ごしましょう!話したいこともありますから!!」
「え、あ、はい。あの?」
「そ、それじゃあマルクさん、ごゆっくり!!」
「え?ちょ、ちょっと、ソラリア様!?」
そういうとソラリアさんはぐいぐいとアイナを連れて教室を出て行った。
アイナの方が少し大きいのだけど…
一体あの身体のどこから力が湧いてるんだろうか。
不思議に首を傾げつつ、僕は誰も居なくなった教室を後にした。
お読みいただきありがとうございます。
本当に寒いですね。
秋どこにいったんでしょう。食欲の秋が…
皆様ご自愛ください。
今後もよろしくお願いします!




