第29節『このさきのみらい』
どうも、もんたです。
おまたせしましった。
そいじゃあ、どうぞ。
翌朝、いつも通り目を覚まし、中庭で訓練したあとゆっくりと朝食を食べる。
シャンドラさんは忙しいらしく既にお仕事中らしい。
マリアンヌさんは
「朝食くらいゆっくり取ればいいのに」
とちょっぴりお怒りだった。
今日は合格発表の日。
朝食を食べ終えるとすぐにソラリアさんと一緒に学園へ向かった。
合格発表は何かしらイベントのようなことがあるわけではないらしく、掲示板として張り出されるだけなんだとか。
合格者はそのまま、明日の入学式に向けて徐々に入寮が始まる。
発表の次の日って本当にせわしない。
ソラリアさんとお喋りしつつ、馬車の窓から外をみると、僕らと同じ年くらいの子どもたちがぞろぞろと学園へ向かっていくのが見える。
この中にこれから3年間一緒に過ごす人たちがいるんだと思うと不思議な感じだ。
「到着いたしました。」
御者をしてくれたライオネルさんがドアを開けてステップを用意する。
僕が先におり、ソラリアさんの手を引く。
初めの頃は恥ずかしかったけど、流石にもう手慣れたもの。
多少自然に見える動作に横で見ているライオネルさんも満足そうに頷いている。
「どうぞ、ソラリア様。」
「はい。」
「お嬢様、私はこちらでお待ちしておりますのでお気をつけて。試験の日に集まった広場で結果は張り出されますので、そちらへ向かわれてください。」
「わかったわ。ありがとう、ライオネル。」
「もったいないお言葉です。マルク、お嬢様をお願いしますよ。」
「もちろんです。」
ちょっと前に一騒動起きた乗降場を後にし、会話もそこそこに広場へ向かう。
そういえば乗降場はそこそこ魔法が当たってたはずだけど、何事もなかったかのようにピカピカになっていた。
口では結果は大丈夫、とは言いつつもやっぱり気になるのか、ソラリアさんの歩く速度も心なしか早めだ。
僕だって気になってはいるんだけど。
自信あるかないかで言えば、ある。
筆記試験もそんなに難しくなかったし、実技試験もしっかりやれてた。
あとは希望のコースにきちんと入れるかとかそのあたりだと思うんだけどな。
中庭の広場に向かうとお立ち台のあった場所にトンデモサイズの板があって、白い紙にびっしりと数字と文字が書かれていた。
自分の受験番号を少しでも早く見つけようと、僕らと同じ受験生が押しかけてわけわかんないことになってる。
「おお…。結構人いますね。」
「それはそうですよ。みんな試験を受けていた子どもたちなんですから。でも中には、遠方から来た子の場合は代理の大人が見に来ることもあるみたいですけど。」
「代理の人が来ても明日入学式なのにいいんですかね。」
「お金のこととかあると聞きますし…。一応、遠方の方や他にも何かしら事情のある方向けに入学式は二回あるようです。半年後、と聞きました。」
「あ、そういえば…そんなことを聞いたような。卒業がずれ込むんでしたっけ。」
「そうです。それよりもマルクさん!もっと前に行ってみませんか?」
やっぱりソラリアさんは結果が気になって仕方ないみたいだ。
確かに僕も気になってはいるけど、この人混みはなぁ…
ちょっとソラリアさんと突入するには不用心かな。
周りに近衛兵や職員の人たちもいるけど、この数の子どもの中からソラリアさんだけを見ておく、なんてできないだろうし。
「早く結果が見たいのは僕もですが、もう少し待ちませんか?」
「でも…。」
「あの中に入っていくと疲れますから。人が減るまで少しの間ベンチで休憩していましょう。飲み物を買ってきます。」
「そうですね。わかりました。あ、飲み物はアプリルのジュースを!」
「はい。座って待っててください。」
掲示板から離れたところにあるベンチに腰掛けたを確認して、近くにある屋台でアプリルのジュースを買う。
真っ赤で丸っこい形をしている果物で、生のままでも食べられる。
焼いてもおいしいんだよなぁ。
小屋にいた時は近くに生える気がなくって行商人が持ってくるのを食べるくらいだった。
よく見れば朝市でもジュースを売ってるおばさん(おっと。お姉さん)で、向こうも覚えていてくれたのかサービスしてくれた。
ほかの屋台もちらほらと見たことのある顔の人たちが立っていて、ついつい足をのばしてしまいそうになった。
また次の機会に、と目移りする気持ちを抑えてソラリアさんの待つベンチへ向かった。
手持無沙汰に足をふらふらさせていたソラリアさんにジュースを渡し、後ろに立って待つ。
「ねぇ、マルクさん?」
「はっ、はい?」
「座らないんですか?」
「これでも従者なので…。」
「むぅ…。今は二人しかいませんよ?」
「そんなことないですよ。周りにいっぱいいます。」
「でも知らない人です。」
「これから同じ学園に通うかもしれませんし…」
ジト目で非難を告げるソラリアさんになんとか切り返すと、納得したのか目を大きく開いた。
「あ、それもそうでした。じ、じゃあ、マルクさんも飲まないのですか?」
買ってきたのはソラリアさんの分だけ。
僕はのどが渇いているわけじゃなかったので買わなかった。
それにこれでも護衛中。
あり得ないとはいえ、毒が入っていて動けなくなるなんてことになるわけにはいかない。
護衛任務の重要さはマットさんから嫌というほど聞かされた。
「一応、護衛も兼任なので…。」
「なんかかたっくるしいです。」
「はは…。きちんとしないとライオネルさんとセバスさんに怒られちゃいますから。」
「え゛。」
ソラリアさんからすごい声が出た。
表情もなんともいえない、悲しそうなちょっと怖そうな感じだ。
「あの二人から…ですか?」
「え、ええ。お屋敷にきてからお二人から色々教わっていましたので、上手くいかないときは怒られてましたよ。」
「それは、あの…大丈夫だったのですか?」
「え?あぁ、まぁ、きつい訓練もありましたけど…。」
「あのソニアが怒らせてはいけないと言った二人を…。」
「ははは…」
期間は短かったし、という言葉は飲み込んでおく。
お嬢様を守るために、という名目で近衛騎士の訓練に参加し、ライオネルさんとマットさんから直々に訓練を受けた。
周りの兵士さんからかわいそうって目で見られていたのは忘れない。
でも、おかげさまでこれまであんまりやってなかった近接の格闘もそこそこできるようになった。
短剣は及第点、長剣は初心者並、というのが二人からの評価だったし、頑張ったんじゃないかな。
(ねぇ、マルク。あの二人の評価は当てにならないわよ?)
…え?それはどっちの意味で?
(良い方で。)
……ん?
二人からの熱烈な指導も、じいちゃんとの修業がなければ何回意識なくしたかわからないけど、それのおかげもあって数回で済んだ…はず。
僕の記憶が間違ってなければ。
ただ、あまりダウンしないからとライオネルさんの目がどんどん本気になっていく様子は怖かったかな。
一緒にやっていたはずのマットさんに同情されたくらいだし。
なんてぼんやり思い返していると、ソラリアさんがじっと僕を見ているのに気付いた。
「ソラリア様?」
「マルクさん、きついときはきちんと言ってくださいね。」
「え?は、はい?」
「わたし、いつでもお話聞きますから。」
「ありがとうございます?あ、掲示板の方空きましたね、行きましょうか。」
「本当ですね。結果はどうでしょうか。」
ちょっとした心配をしつつ多少人の減った掲示板へ近づいていく。
嬉しそうな声と泣き声とごちゃまぜになってすごいことになってるな。
周囲に気を配りつつもソラリアさんと掲示板からそれぞれの番号を探す。
えーっと…
「ありました!」
「あった!」
ソラリアさんと僕は目を合わせて笑う。
「あはは!よかったです!」
「はい。二人とも無事合格です。」
「当然です!わたしたちが不合格なんてありえませんから!」
「頑張りましたもんね。」
「マルクさんもですよ。」
にこっと笑ってまた嬉しそうに掲示板の自分の数字を見つめるソラリアさん。
これでまた新しい生活が始まるのか…。
学園、どんな感じなんだろう。
楽しく過ごせるといいなぁ。
お読みいただきありがとうございました。
本章にて第2章、完結、となります。
ここまで本作品に目を通していただきありがとうございます。
第3章は今月末ごろ投稿開始できるかな、という感じです。
それまでは第1章のように閑話や人物紹介、用語紹介等更新はしてきますので、またチラッと見ていただければと思います。
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