回顧録ーその①
どうも、もんたです。
本編に影響はありません。
サブストーリー、バックグラウンドとして、登場人物の過去に触れていきたいと思い書き上げました。
わき道は本編に沿った別人物の話
回顧録は本編とは外れた時系列の話
として読んでいただければと思います。
それではどうぞ。
・・・・・・・・視点
――何年。
――いや、何十年だろうか。
――おそらくもっと長い年月ここにいる。
――最早、年月という言の葉では表せないほどの長い時の流れかもしれないが。
――あの時に見た華は今も形を変えずに咲き誇っているだろうか。
――あの日々を過ごした岩山は大地の恵みを受けることができているだろうか。
――いや、そんなことはどうでもよい。
――あの日、このわたしに長年の友の裏切りすらくだらないと一笑できるような怒りを与えたあいつはどうなったのだろうか。
――おそらく、いや確実に、決定的にこのわたしの爪は奴の心の臓を貫いた。
――わたしから生まれた滅却の光は奴の腕をこの世界から滅ぼした。
…はずだ。
――そう、確実にやったはずなのだが。
――いつもここで引っかかる。
――本当にトドメをさせたのだろうか。
――じつはあいつは今ものうのうと生を謳歌しているのではないか。
――こんな問答は幾度となく繰り返した。
――既に意味などないことはわかっている。
――世界を包む柔らかな光を象徴していたはずだ。
――世界に住む数多の生命に前へ進む光を与えていたはずだ。
あの日までは。
――もう、わたしの誇りは変わってしまった。
――世界を包んだ光は今、世界を割くことしか考えぬ闇に埋もれてしまった。
――未来を照らした白光はくすみ、今や過去の闇を暴く黒光と変わってしまった。
――わたしという存在は変わらぬというのに。
――いや、それすらも変わってしまったから、ここにいるのだろう。
――身体を封され、魂を縛られ、意識のみ。
――かつての仲間と世界に住んだものの多大な犠牲をはらい、ここに縛り付けられた。
――はて、わたしの名前はなんだったか。
――名前なぞあっただろうか。
また、時が経つのだ――
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「ここか…」
なにやら近づいた者がいるな。
ふむ・・・
これまで耳の長い…エルフといったか?
その種族のおなごしかこなかったが…
人族の男女…違うな。
女の方は精霊のようだ。
「辛気臭い場所だな。本当にここで人柱なんぞおくのか?」
『さぁ、細かいことは知らないわ。でもどうするの、▼□●。』
「知らん。」
『知らん、って…。まさか何も考えずに忍び込んだの!?』
どうやらこやつらは忍び込んできたらしいな。
そうでなくてはエルフ以外は入れないということか。
「だからそう言ってるだろ。とりあえずぶっ壊せばいいんじゃねぇの?」
『ぶっ壊すっていってもねぇ。こんな岩壊したところで何かあるとは思えないけど…。」
「村長の話だと、この岩に悪しき白聖龍とやらが封じられてんだろう?」
『確かにそう言ってたわよ?あのエルフの子…名前なんて言ったかしら?」
「あー…?オル…?オリ…?」
『どっちでもいいわ。あの子の話ではこの岩の前で祈祷を一月ずっとすることで平穏を、とかだったわよ。』
「けっ!胸糞悪ぃ話だ。そんなことで村が守れるんだったら冒険者なんていらねぇんだよ!」
『私に怒鳴らないでよ。それに忍び込んでるの忘れたの?』
「っと。わりぃ。」
『はぁ。で、本当にどうするの?」
「エルフの姉ちゃんたちは、この縄で龍の身体を縛り付けて、そこにある白石で魂を封じてる、と言っていた。であれば、その二つを壊しちまえば封印は解かれる。んで、出てきたやつを倒せば万事解決ってことだ!」
男は自慢げに腕を曲げ女にアピールをしている。
女の方はそんな男をみてずいぶん呆れているようだが?
『万事解決、ね…。相手は曲がりなりにも古の龍でしょう?それと、一つ疑問があるんだけど?』
「ん?」
『白石、って聞いてたけど、あれはどう見ても黒石だと思うの。』
女がわたし――我の魂を縛る憎き魔石を指さしながら言う。
「あぁ、俺もそう思う。」
『へ?それなら別に白石って石があるってことかしら?』
「いや、あれが白石だ。」
『どういうこと?』
「魔物化、ってあるだろ?」
『ええ。普通の動物が魔素とか近くの魔物の魔力に影響を受けて魔物に変質してしまうってやつよね?』
「そうだ。恐らく、それと似たような事象が起きてるんだと思う。」
『石が魔物になったとでもいうつもり?』
「そうじゃねぇ。そうじゃねぇが成り立ちは似たようなもんかな。」
『わからないんだけど?』
「なんで精霊のお前がわかんねぇんだよ。いいか?魔物化って言っても理由はさっきお前が言ったこと以外にもあるんだ。」
『そうなの?』
「あぁ。普通の魔物には起きにくいんだけどな、お前みたいな精霊や妖精に起きたりする異常化って名付けた現象がある。」
『異常化?』
「おう。狂戦士状態に近いかね?本来、精霊や妖精ってのは清らかな魔力に包まれている。そんでもってそういった場所に生息してる。人里離れた自然の中とか、古い神殿とか。」
『えぇ。そうね。』
「そして、そういうところには魔物が寄り付かない。いや、正しくは寄り付きにくい。そうだな?」
『間違ってないわ。私たちが結界を張ることもあるけど、弱い魔物なんかは強い精霊の気配を感じたら勝手に離れていくもの。』
「そこで俺は考えた。精霊や妖精の魔力を正として、魔物の魔力を邪とする。これを無理やり引き合わせるとどうなるのか。」
『それって…。』
「いや、まだ実験はしてないけどな。俺の予想では精霊や妖精が邪の魔力を浴びすぎると魔物化する。逆に魔物が正の魔力を浴び続けるとおとなしくなるんじゃないか?魔物を飼い慣らすことだってよくあるが、たまに本来なら凶暴な魔物を連れ歩いてるやついるだろ?あれってよ、魔物の邪な魔力を浴び続けてないから性格変わったんじゃねーかなっと思ってるわけ。」
『なるほど…。』
「んで、今回の件な?元々は聖龍っていうくらいだから正しい魔力を帯びてたと思う。だけど今日洞窟に入ってどう思った?」
『ダンジョンみたいって…。』
「そう。この洞窟は魔物の気配に満ちてる。しかもレベル高い方。でも魔物はいない。つまり?」
女は何かに気づいたようで目を見開いた。
『聖龍が魔物化したってこと!?』
「声がでけぇ。推測だけどな。強引に縛り付けられたんだろ?恨み憎しみが漏れてそいつが邪の魔力になって、封印してる石を侵食した、なんて話がすっきりするだろ?」
あぁ…
そうか…
『なんて推測よ…。でも…そうね…。』
「実際、石は真っ黒、縄も石に近い方から黒く染まってるように見えなくもねぇ。こいつはもう、祀られる対象じゃなくって祟りの元凶だぜ。それにここには結界に近い保護魔法がかけられてる。おかげで聖龍様は正の魔力を十分に確保できなくて限界、だろうな…。」
そうであった…
我――私は…
『はぁ…。そこまで考えてたなんて言わないわよね?』
「まさか。たまたまだ。たまたま気づいたから、こいつが暴れだす前に俺が切る。」
『俺が切る、って…。そう簡単に行くかしら。』
「そりゃ、いざとなりゃアレをするからな。」
『…本気で言ってるの?アレは奥の手でしょう。』
「奥の手だからいざとなれば使うんだろうが。」
『そういうことじゃないわよ。奥の手をここで使うのかって聞いてるの。』
「使う。」
男は女の問いに間髪入れず応えた。
『どうして?』
「俺がそうしたいと思ったからだ。」
『あなたってああいった子がタイプなの?』
「ちげぇよ!」
『じゃあどうして会ったばかりの子のために命を懸けられるのよ。』
「いつも言ってんだろ?「迷う前にやれ。迷った時にはすでに答えは決まってる。」どうしようこうしようとかボヤボヤしてる時はもう既にそいつの中で答えは決まってんだよ。なのに悩んでるのは自分の決めた答えに自信がなくて何かどうでもいい理由をこじつけようとしてる時だ。」
「だから俺は迷わない。選択肢はすぐ決める。やらない後悔はどうしようもねぇが、やった後悔なら反省できるからな。」
『はぁ…。ほんと、頑固者って嫌い。』
「お互い様だっつーの。」
『何か言った?』
「いいや?さ、そうと決まればさっさとやるぜ。」
『はいはい。付き合いますよーっだ。』
「おう。頼りにしているぜ、〇▼×●」
『えぇ。』
覚悟を決めた二人はそれぞれ獲物を構えて我の方を向きなおした。
女は青く光る杖を、男は白銀の剣を腰から抜き放った。
一呼吸ののち、男が一点の曇りも迷いもなく剣を振り下ろした――――――
お読みいただきありがとうございました。
敢えて名前を伏せておりますが、なんとなく皆さん想像つきます…よね?('ω')
伏せる意味ある?と思われるかもしれませんが、作者の気分の問題です。笑
今後もこう言った形で過去の話を掘り返していこうかな、と思います。
本編は外れた時系列ですが、出てくる人物たちは若き日のキャラクターたちとなっておりますので、
どこかでつながる瞬間があるかな…?
今後もよろしくお願いいたします。
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