第25節『旅は道連れ飯の恩』
どうも、もんたです。
お待たせしました。
「よし!時間になったので出発する。揺れるので気を付けてくれ。」
馬車は幌馬車になっていて、後ろから乗り込むようなかたち。
当然、前に詰めて座るので、御者さんが言うように僕は縁に座る。
景色がよく見えるので僕は好きなんだけど、兵士の人たちは砂ぼこりが辛いって言ってた。
…風魔法使って埃が来ないようにしてるなんて言ってないよ?
「出発!」
「ブルルッ!!」
馬車が動き出したのを確認して、僕は馬車の縁に腰かけた。
ポクポクと心地よいリズムを刻みながらガヤガヤとした雑踏の中を進んでいく。
あっという間に街を抜けていき、僕は外壁を眺めながら、クランドさんの屋台で買った串焼きをほおばった。
正直もう我慢の限界だった。
若干焦げたタレのにおいが空っぽのお腹には刺激が強い。
よだれを飲み込み、子どもには少々大きめに切られた一切れが口の中をいっぱいにする。
――もぐもぐ――
「うわあっ…。」
思わず声がでてしまうほどおいしい。
ボア肉のような顎が疲れるような噛み応えはないので、おそらくバッファローか何かのお肉だと思う。
一噛みごとに千切れていく肉が口の中に肉汁と甘辛いタレを広げ、鼻から香草の香りが抜けていく。
大きめに切られた肉であっという間にお腹にたまりそうなはずなのに、口が止まらない。
ガーリケとブラッパの香りがもう一切れ、もう一切れとおなかを刺激していく。
複数の香草がお肉の脂を程よく消してくれてるんだな。
飲み込んで、ああ、食べた…と思ったはずなのに無意識に次のお肉を食べ始めてる。
気づいたら串だけになった1本目を見てびっくりした。
正直3本もあればお腹いっぱいになると思ってたのに、これ下手すると足りないんじゃないかな。
そのあとも香りの暴力をまき散らした串焼きを順調に1本撃退し、もう1本いこうと手を伸ばした時だった。
「なぁ、坊主。」
「んぐっ。は、はい。」
声のした方を振り返ると、目をランランと光らせて、今にもとびかかろうとしている獣…まちがった、冒
険者の男の人が目の前に迫っていた。
あまりの表情に思わず変な声が出た。
「ひぇっ!」
「んあ?」
「ダン!!彼が怖がってるだろうが!!」
「ぐぎゅっ!?」
その隣に座っているひげもじゃのおじさんが振りかぶって拳骨を落とした。
あ、ドワーフか。
おそらく鳴ってはいけない音が鳴った後、初めに声をかけた短髪のお兄さんはぐったりと動かなくなった。
え?
大丈夫??
「うちの欠食リーダーがすまんな、若い冒険者よ。」
「え。あ。いえ。大丈夫です?」
どう返していいかわからず、思わず質問する形になってしまった。
ドワーフのおじさんの奥に座っている男の人が杖でぐったりとしているダンと呼ばれた人をつついていた。
「うむ。俺はドルノンドと言う。欠食リーダー兼軽剣士であるこのダンが率いる≪ダドラの剣≫に所属してタンク役をしとる。横でちょっかいをかけているのが魔法使いのチシャ。こんな見た目だがしっかりと男だ。」
「ドル、うるさい。」
チシャを小突いた後、向かいに座っている二人を指さしながら続けた。
「お前もだ、チシャ。そっちのは斥候をしてるテッドと剣士のズーロン。」
「バカがすまないな。」
「左に同じだ。」
外側に座っていたテッドは、ちょうど正面でオチているダンを短剣でたたきながら話した。
真ん中に座っているズーロンは眠そうに大きく口を開けてあくびをしている。
「あ、いえ、ご丁寧にどうも…。マルクと言います。」
「あぁ。今回は奥にいる学園のお偉いさんの護衛依頼なんだわ。」
「はは…。お偉いさんでは決してないですが。マルク君、でしたか、初めまして。トーカ分校に勤めているアレオスと言います。顔を合わせるのは初めてですが、僕は君のことを存じておりますよ。」
「え?」
「さすがに、しゅ…おっと。これはまだ内緒でした。学園にいる関係上、入学試験の様子もみていましたからね。マルク君は話題になっていましたし。」
「あ、あの!」
「はい?」
「話題って…。」
「悪いことじゃないですよ。良い方向です。」
アレオスさんはにっこりと笑う。
「なんだ、マルクは学生じゃないのか?」
「明日の結果発表次第ですね…。」
「はぁ~。ってことは今12歳とかだろ?しっかりしてんなぁ。」
「えぇ。ダンにも見習ってほしいところです。」
「…全くその通り。」
「マッカラクロウの串焼き!?」
「「うおっ!?」」
さっきまでダウンしていたはずのダンさんががばっと起き上がった。
なんの串焼き?
「…ん?なんだみんなぼーっとして。あ!!そうだ!坊主!!串焼きくれ!!!」
「えっ?あ、え?」
「ん?ダメか??金払うからさ、いい匂いすぎてたまんねぇんだよ!一口でもいい!ほれ、俺の口に――「せいっ!」ぎゃああああ!!!」
「お前はもう少し落ち着け!」
「いでぇぇぇえええ!!へっろ(テッド)!ほまへひゃひひやはる(お前なにしやがる)!!」
ものすごい勢いで口を開けて近づいてきたダンさんに引いていたらテッドさんが下あごをダガーでぶん殴った。
犬のように舌をだしていたダンさんは思いっきり舌を噛み悶絶している。
この人がリーダーでやっていけてるんだろうか。
僕の疑問に気付いたのか、いつの間にか隣に座っていたチシャさんが話しかけてきた。
「…お腹が膨れてれば優秀。」
「い、今はお腹減っているからこんな感じ、ということですか?」
「…半分正解。」
「半分?」
「…お腹いっぱいになってもポンコツ。戦闘はいつも優秀。」
「あぁ…。」
なるほど。
冒険者なんて常に危険と隣り合わせなのにあの感じで良いのか、と思ったけど…
危険なときに頼りになるなら十分なのかな。
「…串焼き、くれる?」
「え?いいんですけど、あ、もう冷えちゃったかも…。」
「…大丈夫。 ――熱よ、≪ヒート≫」
チシャさんは串焼きの入った袋を手にすると魔法で温めた。
生活魔法と呼ばれるとても簡単な魔法で、ほとんどの人が使うことができる。
チシャさんは魔法使いとして訓練をたくさんした人なんだろう。
魔力の動きがとってもスムーズだったし、無駄がない。
「…マルク、わかる?」
そんな風に感心してると不思議そうにチシャさんが首を傾げた。
「え?」
「…僕の魔力の動き、みてた。」
「あ…。そうですね。とっても綺麗でした。」
「…ありがとう。」
そういうと被っていたフードを少し目深にして元の位置へ戻っていった。
さりげなく1本串焼きを引き抜いて。
「ててて…。ま、マルクっていうんだっけ?」
「あ、はい。」
「串焼き、俺も食っていい?」
「ど、どうぞ。お腹いっぱいなので、2つとも食べちゃってください。」
「マジか!!!お前良いやつだな!!!」
初めの時のように目をランランと光らせると、感謝の言葉を口にしながら両手に串をもって食べだした。
なんだろう。
ボアのお肉を久しぶりに上げたグリムと同じ感じがする。
お読みいただきありがとうございます。
先日通り雨に見舞われ、右半身びしょぬれで仕事をする羽目になりました。
福岡は暑くなったり寒くなったりとせわしないです。
体調崩さないように気を付けなくてはいけません。
皆様も残暑厳しいですが夏風邪にはご注意を。
こんごもよろしくお願いいたします。




