第21節『ちょっとした覚悟』
どうも、もんたです。
お盆終わりですね。
皆さん、社会復帰してください(白目)
それでは、どうぞ。
「えっと、薬師ギルドに登録しているせいだと思います。」
「薬師ギルドのせい?…まさか!」
マリアンヌさんが何かに気づいたように立ち上がる。
「まさか、冒険者ギルドに嫌がらせをうけているんじゃないの!?」
「そんな!お母様!!」
「え!?い、いえ!」
「ええ!こうしてはいれません!!冒険者ギルドの長をまた呼び出しましょう!!」
また…?
「二人とも、落ち着いて。マルク君が何かいいたそうだよ。」
「「??」」
「はは…。いじめられているとか、嫌がらせとかではないですよ。」
「ではどうして?」
「薬草とか毒草とか草木の採取依頼は薬師ギルド、魔物の駆除とかそれ以外の依頼は冒険者ギルドで処理をしてもらっているからです。採取は難しいものであれば一気にランクを稼げるんですけど、魔物退治は森の奥に行かないとなかなか上げられなくって。ダンジョン行くには時間が足りないですし…。」
「なるほど。ダンジョンは…。近場だと港町か。あそこは難易度も高いしあまりお勧めはできないんだよな。」
「そうです!ダンジョンなんて子どものわたしたちにはまだまだ早いですよ!」
「え?」
「え?」
マットさんやサイロウ爺には
――お前(坊)なら死なない――
って言われてるんだけどな。
「難しいとはいえ、マルク君なら問題ない気がするんだけど。もちろん、冒険者や近衛兵団とパーティーを組んで、の話だけどね。」
「それはもちろんです。森なら慣れているので平気ですけど、流石に初めての場所で一人は怖いですから。」
「うんうん。狩りになれている人はそういった面で優秀だね。うちの領地は大森林付近に街や村を建てないようにしているから、あまり手慣れた人が育たないんだよねぇ…。」
「そういえば、この前メイリーンさんに地図を見せてもらいました。どうして森の近くは休憩所だけなんでしょうか。」
「簡単な話だよ。危ないから、これに尽きる。もちろん、さっき言ったように、大森林と平地の境に村や町を作れば、定期的に間引くことができるし、兵士や冒険者の戦闘経験も十分に積める。そうなれば当然、魔物や動物の素材、薬草に果実といった森の恩恵を十分に感じることが出来る。」
「大森林から得たものは全て国内外問わず販売することが出来る。うちは森に面しているからそんなに影響ないけれど、王国東部からすれば貴重な資源だから、そこそこ稼げるんだよ。商人が稼げば、税として僕の懐に入る。僕はそのお金を使って街を整備し、領内の村を整備することで街にお金が落ち、いずれ民の手に渡り、生活に使われる。そうしてお金が回り続けることで徐々に規模が大きくなり、領地全体が成長する。」
「正直、領主としてはこれだけのメリットがみえているのならこの策を取るべきなんだけどね。自己の領地を潤ませ、国に貢献してこそ貴族だ。ただ――」
「ただ?」
「僕は貴族だ。我がサドニア王国で侯爵の地位を授かっている。が、それ以前に僕は一人の父親だ。父親として、この国に住む一人の民として、危険と隣り合わせというのはやはり簡単に認められるものではない。…まぁ、マルク君にはまだわからないことも多いかとは思うが…。」
手元のカップを飲み干すと、そばに控えていたメイドさんが静かにお代わりを注ぐ。
ほのかにあがる湯気を見ながらシャンドラさんは満足そうに笑った。
「ふぅ…。色々言ったけれど、回答は決まっているというところがオチさ。いやぁ、領主なんて本当に面倒だよ。マルク君、変わらないかい?」
「お父様!?」
「へ?い、いえ、ぼくなんかじゃ!!」
「ははは!さすがに冗談だよ。いや、面倒だというのは嘘ではないんだけど。領主になる人間はきちんと教育を受けた人間じゃないとね。変な人間が上に立つと、下々の民にしわ寄せが来る。ああ、言い方が悪いかな。他意はないんだ。為政者として――」
「んんっ!あなた?」
マリアンヌさんのあの顔だ。
「…おっと。ついつい話過ぎてしまったな。今夜はここまでにしよう。ソラリアは明日朝僕の執務室にくるように。みんな、おやすみ。」
「おやすみなさい。シャンドラさん、マリアンヌさん。」
「はぁい。おやすみなさいませ、お父様、お母様。」
「ええ。二人ともおやすみなさい。」
メイドさんに連れられて、僕とソラリアさんは退室した。
僕が従者になると決まってから、いざという時のためと体面を考えて隣の部屋になるように部屋を移動した。
元々荷物になるようなものはほとんどなかったから用意してもらった家具くらいしかない。
武器とか薬草を保存する籠や瓶が並んでいるくらい。
部屋の前について、メイドさん(たしかロレーヌさんて名前だったっけ)が離れていく。
「ソラリアさん。明日は何をするんですか?」
「…。」
「あの…。」
「やっぱりだめです。」
「え?」
「ダメ、です。ダメだし、イヤです。」
「えっと。」
ソラリアさんが俯き、立ち止まる。
「マルクさん。」
「は、はい。」
「さん、を取ってください。」
「いや、でもですね…。」
「私のこと…嫌いですか?」
「そ、そんなことは!」
「じゃあ!」
「ソラリアさん!!」
「っ!!」
ソラリアさんの身体がビクッと震える。
遠慮がちに上がった目は少し震えているように見えた。
「ソラリアさんのことは嫌いじゃないです。でも、ソラリアさんはシャンドラさんの娘で、領主様の娘です。僕は…」
「?」
「僕は、両親がなくなってしまった、言ってしまえば孤児です。かあさんに拾われていなかったらきっと僕も死んでたと思います。かあさんに拾われて育ててもらいましたけど、平民の僕じゃ、ソラリアさんに釣り合わないですから。」
「そ、そんなことは!」
「シャンドラさんが僕をソラリアさんの従者にした理由は…なんとなくしかわかりませんが、これだけは約束します。」
「約束?」
「はい。僕がソラリアさんを守ります。」
「えっ。」
「これでも男ですから。学園にいる間は頑張ってソラリアさんを守ります。学園内で危険なことがあるとはおもいませんけどね。ははは。」
「…」
ソラリアさんはゆっくりと顔を下げる。
「あ、あの…。」
「…むぅ。怒るに怒れません。」
「え?」
「な、なんでもありません!おやすみなさい!」
「え、あ、えっと、おやすみなさい。」
部屋に入る直前、窓から差し込む月明かりに照らされたソラリアさんの顔はほんの少し赤くなっていたような気がする。
お読みいただきありがとうございました。
キュンキュンできましたでしょうか。
本作はゆっくりと展開していきます。
時折来るほっこり展開が皆さんの心の潤いとなりますように。
今後もよろしくお願いします。




