わき道ーその⑦
どうも、もんたです。
記念すべき日です。
それではどうぞ。
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マルクがソラリアに的にされている頃…
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コツコツと規則正しい音を立てて、一組の男女が校舎の廊下を歩いている。
女性の長く白い髪は時折窓から入る陽光を浴びて輝いている。
二人がたどり着いた部屋にはメイドが控えており、扉を開けて深々と頭を垂れた。
2人はそれを気に留めることもなく部屋の中へ入り、また音を立てずに扉が閉じられた。
窓の締め切られた部屋の中は存外明るく、天井から魔道ランプがまるで昼間のように照らしている。
ここは通称【特別室】
学園の長が、賓客をもてなす際に使われる部屋である。
「学園長。本日は――」
「ダメです。」
「はい?」
「坊ちゃん、ここには私と二人きりですから。昔のように。」
「はぁ…。相変わらずですね、先生。それと坊ちゃん、はやめてください。もう僕も一児の父です。」
「いいえやめません。人間の一生など我々から見れば葉に留まる朝露のようなもの。どれだけ時間が経とうと変わりませんもの。」
「そういうところも相変わらず、ということですね。わかりましたよ。」
「昔から理解が早くてよろしいことです。さて、今日は何を?」
「ん?別に何かあるわけではないですよ。お疲れ様でした、というところでしょうか。結果は今から集計でしょうし。」
「えぇ、坊ちゃんも挨拶ありがとうございました。流石、領地を治める一貴族といったところでしょうか。」
――コンコン。
「来客中ですよ。」
「私です。速報でございます。」
「ふむ…。良いでしょう、入りなさい。」
「失礼します。」
重々しい音を立てる扉をあけて、副学園長が入ってくる。
短く切りそろえた金色の髪が魔道ランプの光を浴びて跳ね返す。
野暮ったい眼鏡が逆に印象的な若い男だ。
「やぁ、ロベルト。」
「おっと、これはこれは。シャンドラ侯爵様。お邪魔し申し訳ございません。」
「よしてくれ。ここには先生しかいないんだ。」
「そうですよ。」
「…さいですか。一応立場ってものがあるんですけどねぇ。まぁいいや。学長、こちらです。」
「はい、ありがとう。ロベルトも座りなさい。」
「あー…ありがたいお誘いですがね。流石に今日明日は色々と片付けなきゃいけないことがあるんで失礼しますよ。今年は良くも悪くも手間がかかりそうなんで。」
「そうですか、残念です。」
「またお誘いいただけますと至極恐悦に。」
「くっくっく。」
「なんだよジャン。」
「いや、あのロブが丁寧な言葉を使っていると思うとおかしくてね。」
「うるせぇ。俺も成長してんだよ。また今度な、ジャン。」
「あぁ、また屋敷に来てくれ。ゆっくり話をしよう。」
「おう。」
ロベルトはひらひらと手を振り、部屋を出ていく。
領主の息子であり次期侯爵であったシャンドラと中規模な商会の次男であったロベルトはここトーカ分校で共に学んだ仲だった。
貴族コースで一緒になった二人は意気投合。
学園に通っている間、多くの時間を相棒として過ごしていた。
卒業後、当然のようにシャンドラは父とともに公務につき、ロベルトは親の経営する商会に戻った。
ただ、商会に戻ったとはいえ、長男が後継ぎと決まっていたこともあり居心地が悪くなったロベルトは他の商会を転々としてた時に学園の教員募集に応募したことが始まりだった。
領主として度々学園に顔出しをしていたシャンドラと再会し、奮起したロベルトは自身の努力とちょっとしたコネ(シャンドラ主催のパーティーに参加するなど)で副学長の座まで上り詰めたのであった。
「ふふふ。」
「どうかしましたか先生。」
「いえいえ。久しぶりに二人の掛け合いを聞いたなと思いまして。とても懐かしい気持ちになりました。」
「あぁ…。この領地にいる数少ない僕の同級生ですから。ロブと会うときはいつもこんな感じですよ。」
「相変わらず、ですか?」
リリアンテーヌはそういってにっこりと笑った。
「えぇ、相変わらず、ですよ。先生。」
「良いことです。さて、速報でもみましょうか。」
「僕がいてもいいので?」
「どうせ知る結果でそれが遅いか早いかだけですからよいでしょう。これを知って坊ちゃんが何かするわけではないでしょうし?」
「それはもちろん。」
「では。」
リリアンテーヌはおもむろに封をあけると入っていた数枚の紙を適当に分けてシャンドラに手渡した。
しばし二人は一言も発さずに文字を追った。
紙の擦れる音が静かな空間にわずかに響く。
ほぼ同じタイミングで読み終わった二人は資料を交換し、隅まで目を通した。
「…ふぅ。」
「どう思いますか?坊ちゃん。」
「よいのではないでしょうか?通年通り、といったところでしょうか。特に問題もないでしょう。」
「そのようですね。一安心、といったところですか?」
「はい?」
「お嬢様のことですよ。」
リリアンテーヌは手元の資料を指さして笑う。
「あぁ、まぁ確かに一安心ではありますが、特に心配していたわけではありませんから。妻も喜ぶでしょう。」
「マリアンヌなら大喜びでしょう。それから、彼も。」
そっとソラリアの下に書かれた名前に指をずらす。
「もちろんですよ。こんなこと言うと怒られるかもしれませんが、ソラリア以上に心配していませんでしたよ。」
「成績、最優秀ですもの。一体どこから?」
「言えません、といいたいところなのですが、先生ならお伝えしても良いでしょう。」
「おや?言いにくいことならば構いませんよ?」
「いえ、知っておいてもらって、いざというときに便宜を図っていただいた方がよいかと。」
「そういうことであれば。ただそこまでですか?」
「はい。なんといっても、あのオルガさんのお子さんですから。」
リリアンテーヌは目を見開き、つかんでいた紙の束を落とした。
「――はい?」
「ですので、オルガさんの子ども兼弟子と。」
「…いつから?」
「へ?」
「いったいいつからオルガに男が…。どこの馬の骨かも分からないような男に……。いえ、そもそも私よりも先に…!!」
どす黒いオーラをまき散らしながら、リリアンテーヌが立ちあがる。
後半はイマイチ聞き取れなかったものの、毒を吐いていたことは違いなさそうだ。
この後の展開を察したシャンドラは必至で慰めるのであった。
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締め切った部屋になぜか篭った熱気を逃がすようにシャンドラは窓を軽く開けた。
肌を撫でる風が心地いい。
「なるほど…。ドラコニア様と…。」
「ふぅ…。そういうことです。そこでこのタイミングでソラリアの従者という形で街に出てみては、と提案して今に至るわけですね。」
「よい判断だったと思いますよ。それにしてもドラコニア様にオルガが師ですか。」
「よい師匠に良い弟子。そのおかげでしょうね。とんでもなく優秀です。」
「試験の結果からも読み取れます。筆記試験はまぁ貴族コース受験できる程度には優秀かな、くらいですが遠当てが前代未聞クラスです。」
サイロウの爺やがほめてましたからね。当然でしょう。」
「まさか?」
「ご想像の通りで。」
「はぁ…。また厄介なくらいに優秀な子ですね。生まれは?」
「不明です。」
リリアンテーヌの目がすっと細くなる。
「…そんな存在を大事な娘の従者に?」
「今の保護者がいて、悪い方向に進むと思います?」
「そうでしたね。――ちょっと待って。」
「何か?」
「弟子、と言いましたね。」
「そうです。魔法はドラコニア様から学び、薬師としてオルガさんより学んでいます。既にその辺の薬師より優れた力を持ってます。」
「オルガの教えを受けているのですから当然と言えば当然ですが…。大物すぎますね。どうするつもりですか。」
リリアンテーヌが首を傾げる。
「特に何も。」
「何も?」
「えぇ。本人たちに任せます。僕もそうしましたし、ソラリアにもそうさせようかと。」
「しかしそれでは…。」
「心配無用です。まだ内緒にしていますが、マリーが妊娠しています。」
「あぁ…。」
リリアンテーヌはシャンドラの言葉に思わず頭を抱えた。
反対にシャンドラは満面の笑みを浮かべる。
「医師の見立てでは男の子のようですよ。跡はそちらに任せますから、青春してもらいましょう。」
「まったく…。親子そろって適当が過ぎますね。」
「ははは。誉め言葉として受け取っておきます。そろそろ屋敷に戻らなくてはいけませんので、お暇します。」
「もうそんな時間ですか。何かあれば連絡を。あの件もよろしくお願いしますね。」
「そうでしたね。万事お任せを。」
誰もいなくなった書斎は柔らかに吹き込む風に包まれていた。
お読みいただきありがとうございました。
「リリアンテーヌ=独身」です。えぇ。
女の嫉妬は怖い(伝聞)
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実は本日で投稿初めて一年が経過しました。
更新頻度が低くて申し訳ありません。
あくまでリアル優先としつつ、ちょこちょこ仕事終わり平日の夜や土日に書いているような感じです。
そんな中ブックマークしていただいたり、Twitterで感想をいただいたりと本当に感謝、感謝です。
これからも皆さんに楽しんでもらえるような作品になるように頑張っていきますので、
手持無沙汰な時にページをめくっていただけると嬉しいです。
今後もよろしくお願いします。




